お寺が多いことで知られる谷町九丁目界隈。
ここから歩いてすぐの生國魂神社(いくくにたまじんじゃ)。別名難波神社(なにわのおおやしろ)とも言いますが、地元では「いくたまさん」と呼ばれ親しまれています。
生國魂神社の歴史
歴史深い由緒ある神社で、発祥はなんと約2700年前、紀元前にまでさかのぼります。
神武天皇が九州から東征した際、今の大阪城付近に「国家安泰」を祈願して建てられたといわれています。「生まれる」を意味する生島(いくしま)神社、「育つ」を意味する足島(たるしま)神社を主祭神として祀っています。
石山合戦のおり、信長の本願寺攻めにあい焼失。その後秀吉により現在の地に移されます。そして間もなくの大坂夏の陣、明治の「ミナミの大火」、大阪大空襲、ジェーン台風と幾度も焼失・崩壊の憂き目にあうものの、昭和31年に、鉄筋コンクリート造りの現在の姿となりました。
文学作品にも多く登場します
数々の文学作品の舞台となっていることでも知られています。
「曽根崎心中」は、近松門左衛門の人形浄瑠璃。この中で醤油屋の手代徳兵衛と、天満屋で女郎が運命的な再開を果たす場所として、かつて境内にあったとされる蓮池が描かれています。
同じく近松作品「生玉心中」ではタイトルにもなり、主人公である茶碗屋の嘉平次と、柏屋の遊女さが、2人の心中の場所として登場します。
谷崎潤一郎の「春琴抄」の冒頭や、織田作之助の小説にもたびたび登場していますね。
ところで、谷町九丁目の駅を降りると、真っ先に気付く人も多いと思いますが、この界隈はかなり大規模なラブホテル街となっているんですね。以前は、生玉新地と呼ばれる有数の歓楽街で、遊郭などが多くあったようです。その名残なのでしょうが、多くの文学作品でラブストーリーの舞台となったことも関係しているのでしょうか。そう考えると、歴史を感じさせてくれますね。
大鳥居をくぐり、境内に進みます
さて、谷町筋を南に進み2本目を西に入ると、正面の大鳥居と参道が見えてきます。
毎月8日には、参道で蚤の市が開かれています。
出店は少なく小規模ではありますが、陶器をはじめとする骨董品の数々が、お手頃価格で販売されていました。中には昭和初期の漫画本など、珍しい品々を見つけることができるかも。14時からはオークションが開催されるようです。アンティークファンには嬉しい催しですね。
大鳥居をくぐると、大きな本殿があります。
この本殿は、生國魂造という独自の建築様式で建てられました。本殿と幣殿が1つの屋根で続き、千鳥破風(はふ=屋根の三角部分)と、唐破風を組み合わせて装飾されています。建造物としても一見の価値ありですね。
本殿でお参りをして順路をたどると、住吉神社、天満宮をはじめとする11のお社があります。一度にたくさんの神様にお参りできるので、何か良いご利益があるかも知れませんね。
鴫野神社には淀殿が祀られており、「女性守護の神」として祀られています。
また、近松門左衛門らを祀る浄瑠璃神社は、浄瑠璃だけでなく、広く芸能上達の神として信仰を得ています。
境内には、井原西鶴(上)と織田作之助(下)の像もあります。
この井原西鶴の坐像は、1日の間に詠む句数を競う「矢数俳諧」の様子を再現しているのだとか。
盛大な夏祭りや各種イベントも
毎年、7月11日、12日には生玉夏祭りが開催されます。このお祭りは天満、住吉と並んで大阪3大祭りの1つに数えられ、毎年20万人もの人が集まるほど大規模のお祭りなんです。
枕太鼓、獅子舞、金銀神輿が2日間に渡って練り歩き、本宮の12日にはもとのご鎮座である大阪城に入場します。
また彦八祭りは、毎年9月に開催される落語のお祭り。上方落語の祖、米澤彦八を偲んで、上方落語協会が主催する年に一度のファン感謝イベントです。落語家以外のゲストが出場することもあり、毎年、多くのお笑いファンで賑わいます。
天王寺七坂
さて、天王寺七坂という坂をご存知でしょうか。
この界隈には七つの坂があり、それを総称したものです。最近は観光スポットとして、ここを訪れる人が多いのですよ。寺町であるこの界隈には、江戸時代に大阪城下から移転して来たお寺や、著名人の墓所もたくさん。緑が多く静かです。
真言坂、源聖寺坂、愛染坂、清水坂、天神坂、逢坂、口縄坂と順番に巡ってみるのも楽しいですね。いくたまさんのまわりに点在していますよ。
写真↓は源聖寺坂のもの。源聖寺というお寺が上り口にあります。坂を上り切った齢延寺には、幕末に漢学塾「泊園書院」を設立した藤沢東畡、南岳父子の墓があり、向かいの銀山寺には、近松作品「心中宵庚申」のお千代、半兵衛の比翼塚が建てられています。
いくたまさんからは、日本橋、黒門市場、でんでんタウン、空堀商店街、上本町などの観光地も徒歩圏内です。ぜひルートを決めて、散策してみて下さいね。
生國魂神社
大阪市天王寺区生玉町13-9
06-6771-0002
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