北浜のエッサンシエルさんをご紹介します。
地下鉄堺筋線 北浜駅の1B出口からすぐ。土佐堀通り沿い、大阪証券取引所の向い側にあるビルマビルの7階です。
シェフの大東さんは、フレンチ界の重鎮アラン・デュカス氏の愛弟子であり、梅田のル・コントワール・ド・ブノワでエグゼクティブシェフもされておられた、という経歴をお持ち。ご自身の感性で創られたこちらのお店で、どのようなサービスを受けることができるのか、心浮き立ちます。
ちなみに店名のEssentielは、師匠であるデュカス氏に命名されたそう。
エレベーターを上がると、廊下を隔てることなく、お店が広がります。カウンターだけと聞いていたのでもう少し狭いものを想像していましたが、意外に広く、大川を望む大きな窓が、明るく開放感を感じさせてくれます。
シェフ、じきじきのお出迎えです。エレベーター前で待っていて下さいました。
セッティングされている、カトラリー類、メニュー表、おもてなしの心を感じます。
なるほど、調理の様子が客席からすべて見えるようになっています。美しくお手入れされたステンレスの調理台が、お店の姿勢を現しています。
大きなカウンターがメインですが、隣席との距離を適度に広く保ってあり、窮屈感はありません。
南側にテーブル席が2つあります。
さて、ランチのコースは4500円(税抜き)のみ。
ソムリエさんによると、初盤は白ワインかシャンパーニュに合うお料理が多いとのこと。なので食前酒にはシャンパーニュをいただきます。
付きだしのグージェールコンテ。シュークリームのような形。中に何か入っているわけではありませんが、皮全体からパルミジャーノのようなチーズの香りが漂い、食前酒ととってもよく合います。
こちらは、弓削牧場フロマージュフレに、林檎とレモンのジュレがかかっています。
フロマージュフレとは、原乳が熟成する前の、生まれたての生チーズのこと。六甲の弓削牧場で生まれた、オリジナルのチーズなんです。中の細かくカットされた林檎やレモンと混ぜ合わせていただくと、とてもさっぱりした味わいです。少しの酸味と、原乳のクリーミーな風味がフルーツと合います。ジュレはしっかりとしていてシート状になっています。
うつわの幾何学的な透かしも素敵です。穴があいているわけではありません。
そして、まだまだ前菜が続きます。色々茸と栗のソテー。9種類ものきのこと大ぶりの栗が、バランスよくミックスされ、シブレットがあしらわれています。よく観察して食べてみました。名前はわかりませんが、それぞれ肉厚で、食べ応えのあるカット。濃厚なソースとよく絡み、軸まで美味しくいただきました。
さて、お次はお魚料理です。マナガツオのグルノーブル風。グルノーブルというのはフランスの南東部の都市。レモン・ケッパー、クルトンを使うのがグルノーブル風だとか。ですが、一ひねりあるようです。クルトンに見えるもの、食べてみますとカリカリ感はなく、ジャガイモのようなほくほく感があります。根セロリという食材を使っているそうです。巨大なカブのようなものが、調理台にあったのですが、それだそうです。セロリの仲間ではありますが、根菜で、別名セロリアックともいいます。
マナガツオは、白身がとても柔らかく、皮をパリっと焼き上げていただきました。たいへん上品な味わいです。
お次のお肉料理に合わせて、ワインのおススメがあり、赤ワイン(GrandCres Corbieres 2009)をいただきます。
渋めではありますが、たいへんフルーティで、そしてスパイシーです。
お肉料理は、愛農ナチュラルポークのステーキ。
何の気なしに口に運びましたが、この厚さでこの柔らかさは驚きです。脂身もたいへん甘く感じます。一部食べやすくカットされていますが、手前には塊が。まるで「自分で切ってみ、柔らかいから」と言われているよう。素材だけではなく、焼き加減も吟味されているのでしょう。
この愛農ナチュラルポークというブランド豚肉は、日本で唯一の私立全寮制農業高校である、三重の愛農学園高校で育てられた豚肉なんです。有機農業を実践するこの高校の養豚部では、飼料はすべて有機の飼料を使い、清潔な豚舎で、投薬も最低限に抑えられ、生徒さんたちに大切に育てられているのだとか。
シェフのお話によりますと、週に2頭のみの出荷で、特に学園祭などの生徒さんの繁忙期には出荷されない、という貴重なもの。
とにかく、食べ物や育つ環境が違うと、こうも味に変化があるのでしょうか。
久しぶりに美味しいお肉をいただきました。
お食事が終わり、ここからはデザートとなります。
洋ナシのベリーヌは、シナモンのたっぷり効いた洋ナシのコンポートの上に、バニラアイスが乗ります。アーモンドやチョコレートソースがあしらわれています。甘さを抑えたコンポートは、素材の風味を損ねず、洋ナシ独特の歯ごたえも楽しめました。
コーヒーには、お茶菓子が添えられます。リュバーブクロッカン。リュバーブというお野菜のジャムがクロッカンの中に入っています。ホワイトチョコレートのシートでフタがされています。ジャムは緩めのテクスチャーで甘さ控えめ。コーヒーとよく合います。
素材の良さやお料理の美味しさはもちろんのこと、ところどころ和のテイストが感じられました。
うつわは和食器が多く、和を思わせる盛り付けもありました。
どのお料理も、比較的薄味でしたが、素材への自信があるからこそでしょう。素材自身の味がしっかりしているので、ちょうどよい加減でした。
一見怖そうなシェフが、ほとんどのお料理を紹介して下さいます。ホテルの鉄板焼き屋さんのように、火入れ前の食材や、調理・盛り付けを見せてくれるところは、エンターテイメントとしても楽しませていただきました。
今回はランチ訪問でしたが、夜は夜景も楽しめ、お料理もグレードアップしているのでしょう。
大事な人との記念日に、とってもおすすめできるレストランです。
エッサンシエル Essentiel
大阪市中央区1-1-28 ビルマビル7F
06-4963-3767
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