映画ロケの聖地・函館のロケ地を訪ねるシネマ散策が楽しい

北海道

函館は国内有数の観光地であるとともに、数多くの映画やドラマのロケ地として使われている“聖地”とも言えます。昭和後期や平成に入り各映画ロケで使われた、観光の方にはややマニアックなスポットを訪ね思いにふける、映画ファンにオススメしたい函館シネマ散策を敢行しました!

 

約80本の映画ロケ地に使用

「映画の街」函館はこれまで、扇形の唯一無二の地形、異国情緒あふれる街並みという魅力的なロケーションが映画関係者に愛され、戦前も含めて80本近い映画のロケ地として使われています。観光客だけではなく、映画好きにも聖地のひとつと言える町でしょう。函館の夜景はホントに数々の映画に使われていますよね。

今回は、観光地とリンクする函館山やベイエリア周辺を中心としたスポットを巡ってみました。ただし、これまで函館は色々な形で紹介していますので、映画でも当たり前のように出てくる定番や人気スポットではなく、少々マニアックな場所を紹介していきます。

 

ロケーション抜群の「大森浜海岸」

 

まずは、旅行客の皆さんがあまり訪れない場所からですが、函館港などベイエリアとは反対側の海岸沿いは「漁火通り」が通るエリアで北は湯の川温泉あたりまでのエリアとなりますが、そこは、大森浜海岸と呼ばれています。

「つむじ風食堂の夜」(2009年)アントニオ猪木主演の「ACACIA」(2010年)などのロケに使われています。函館駅からは車などで漁火通りを目指していくと、10分ほどで砂浜の湾曲した海岸が広がっています。函館山を臨む素晴らしいロケーションですね!

晴れていれば遠く青森県の下北半島が望めます。浜沿いには大森海岸を詠んだ「一握の砂」で有名な詩人・石川啄木の彫像がある啄木小公園があり、隣には土方歳三記念館もありますが、ここはぜひとも砂浜に降りて欲しいです。いくつか降りられる場所もあります。観光客の方は中々訪れない海岸ですが、夏場の夜は漁火も綺麗です。また8月下旬には湯の川方面で同海岸から打ち上げる花火大会も行われます。

夏を彩る最後のイベントで、今年は約4万人もの人出でにぎわいました。漁火通り沿いは有名な回転ずし店もありますし、大森海岸は訪れてみて欲しいです。その大森海岸の函館山に近い場所にあるのが「住吉漁港」です。

函館山や立待岬を望む小さな漁港で、地元の漁業関係者のみが使用する一番小さな種別である第一種漁港となっています。エビやウニ、タコ漁などの漁港です。ロケーションの良さで函館で高校時代を過ごした作家・辻仁成監督の「ほとけ」(2001年)「海炭市叙景」(2010年、加瀬亮など出演)「ACACIA」などでも使われています。岸壁には釣り人が釣り糸を垂らしていて、都市の中の漁港ですがのんびりとしたムードが心地良い場所です。

 

市電や公民館、各坂道も人気

住吉漁港から10分ほど函館山に向かって歩くと市電の線路があります。市電もロケに良く使用されますが、特に好まれているのが、「青柳町」電停付近です。

函館山を背景に坂を登って来る市電の姿が、やっぱり絵になる情景です。

雰囲気も独特でどことなくノスタルジックな感じがありますね。大森一樹監督作品「テイク・イット・イージー」(1986年故・森田芳光監督「キッチン」(2001年)に使用されています。今年3月から全国各地で公開された亀梨和也と土屋太鳳主演の「PとJK」のロケ地ともなっています。

函館山山麓の電車通り沿いを歩き、高田屋嘉兵衛像のある幅広い護国神社坂の中ほどにある、昭和8年建築の函館市公民館。今も現役で、よく使用されています。

今も市民に親しまれる建造物で漆喰壁の講堂は350席の音楽ホールとして使われています。会議やイベントも多く高齢者や市民の憩いの場ともなっています。「Little DJ」(2007年)などで使われています。

函館山麓を歩くと、多くの坂道があるのはご存知かと思います。主要な坂には名前がつけられ、雰囲気が良いスポットともなっています。当然、映画にも数多く使用されています。多くのドラマ、CM、映画に使われている八幡坂やハリストス正教会などの教会群は何度も紹介してきているので省きます。

こちらも森田芳光監督、伊藤美咲主演の「海猫」(2004)で舞台となった大三坂(元町)も函館の坂道を代表するひとつです。故・森田監督は函館の景観を非常に愛し、幾本もの映画ロケ地として使用しています。

大三坂は日本の道100選にも選ばれています。整備された石畳の両側には木々と教会が立ち並び、非常に旅情溢れる雰囲気です。夜もガス灯をモチーフにした電灯に照らされ、非常に綺麗です。大三坂から伸びる、細い「チャチャ登り」と言われる坂も人気があります。

 

地味ながらロケ地が多い幸坂

函館ドックやなどが近い「幸坂」(船見町)です。こちらも何度か紹介していますが、人気の八幡坂、基(もとい)坂などと比較すると生活感にあふれています。約500mほどの坂ですが、登れば登るほど急坂になり、登り切ると息が切れています。しかし、筆者はこの坂の雰囲気が好きです。

桐谷美令主演の「スノーフレーク」(2012年)などに登場します。同映画では桐谷美令が自転車で幸坂を一気に駆け下りるシーンを後ろからとらえているシーンが印象に残っています。ここから見下ろす函館の景色も中々なものです。坂を登り切った場所には山上大神宮があり、綾野剛主演「そこのみにて光り輝く」でロケが行われ、300人近い地元のエキストラも参加しているとか。

 

大人気ロケ地の「外国人墓地」

幸坂を下りると、地元の釣り人に人気の西埠頭があります。

造船所の函館ドックや函館山を望む広い埠頭です。埠頭に前に並ぶ、弁天町の古い赤レンガ倉庫宮崎あおい主演の「パコダテ人」などのロケ地です。明治期の建築ですが、今も現役です。

観光地としては地味ながら、映画ロケ地としてはかなりの人気があるのは、函館山山麓の端にある「外国人墓地」(船見町23)です。幸坂からは歩いて10分ほどでしょうか。「スノーフレーク」「Little DJ」「海猫」「星に願いを。」(2002年)など数多くの映画の舞台となっています。

1870年に正式な外国人墓地として定められています。ペリー艦隊の水平2人のほか、プロテスタント、ロシア人、中国人など故国に帰国することが叶わず亡くなった方々が眠っています。さまざまな国の方が埋葬されているため、多様な形式の墓石が立ち並んでいます。また、蝦夷地に駐留していた南部藩士の墓地もあり、独特の雰囲気があります。函館湾に面した丘陵地に佇み、海岸線に沈む夕日が屈指の夕陽スポットと言われています。

ここにオススメのカフェ「モ―リエ」があります。世にも珍しい、墓地の中を通っていくカフェです。南部藩墓地を通り抜けるのですが、暗くなると少々怖いかも知れませんね。

市民には函館で最も夕陽が綺麗なカフェとして有名です。昼間は年配の常連さんも多いですが、晴れた日の夕陽の時間はぜひともカップルにもオススメですよ。空いている時は店員さんが窓際の席に案内してくれます。日没前の函館湾の眺めは見栄えがします。こちらも「星に願いを。」の舞台となっています。

店員さんも毎日、まったく表情の違う夕陽や日没が楽しめるので、飽きないと話してくれます。シックなムードで落ち着けますし、時間がゆったりと過ぎる感じで癒されること間違いなしです。ここの人気メニューは昔ながらのピロシキです。油で揚げないので軽快でサクサクした食感を楽しめます。

 

函館の違った一面に触れられる穴間海岸

大体、普通の観光客が訪れるのは外人墓地のあたりまで。最後は、観光の方はほとんど訪れないロケ地を紹介します。外人墓地からさらに函館山の山麓海岸沿いを奥に進みます。すると、舗装道路から砂利道になり、切り立った断崖絶壁などが壮観な岩礁があります。

穴間と呼ばれる海岸です。もちろんいくつかの民家もあります。ここまで来ると函館山のほぼ裏側になります。岩肌がむき出しになっている部分は、江戸幕府が、ロシアなどの外国船の出没に備えて築いた弁天台場や、五稜郭の石垣を製造するために切り出された跡です。さらに岩場や洞窟を抜けて奥に進むとこのような光景が。

海に半分隠れた洞窟の手前で一般の方は行き止まりになります。しかし、橋を架けた後が残っていて、道のような跡も残っています。これはかつて、断崖絶壁の函館山の裏側に寒川村という「幻の村」が存在しました。明治期に富山県からの入植で函館山の裏側に流れ着き、そのまま定住したとか。電気や水道も通らず、函館の街に出るのも荒波の中絶壁沿いの道を抜け、命がけだったそうです。多い時期には100人ほどの村だったそうですが、昭和29年の洞爺丸台風で壊滅的な被害を受け、村を手放したとか。今はその面影はほとんど残っていません。

釣りなどで来る意外は相当な物好きな方しか来られないと思いますが、この岩場から見る夕陽もまた絶景です。「そこのみにて光り輝く」のロケ地となりました。まさに漁村というイメージですが、異国情緒だけではない、函館の野趣あふれる一端を見られると思います。

 

まとめ

金森倉庫などメジャーすぎるところは紹介しませんでしたが、ロケ地はほかにもたくさんあります。今回は隠れた名所などを紹介しましたが、皆さんが訪れる有名スポットにも近いので、訪れやすいとは思います。映画好きの方や、出演した俳優のファンの方は色々な思いにふけることができ、想像の世界に入り込めるはずです。函館旅行の前に好きな映画を鑑賞して予習をしてくると、さらに楽しめるかもしれませんね。

 

▽スポット情報

函館市公民館

住所:北海道函館市青柳町12-17

TEL:0138-22-3320

URL:http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014040500015/

 

カフェ「モーリエ」

住所:北海道函館市船見町23-1

TEL:0138-22-4190

URL:http://www.hakobura.jp/db/db-food/2012/06/post-244.html

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