不祥事や天災の連続で深刻な赤字経営となっているJR北海道。近年、不採算路線のローカル線を段階的に廃線としています。そして筆者も移動などにほぼ毎日使用している、札沼線(学園都市線・札幌‐新十津川間)の一部区間の廃線、バス転換が現実的になってきました。趣溢れるローカル線周辺のスポットを実際に乗って、訪れてみました。
学園都市線
今は学園都市線としてすっかり定着していますが、正式名は札沼線(さっしょうせん)。札幌駅のひとつ隣の桑園駅から北海道樺戸郡の新十津川駅の76.5㎞のローカル線です。札幌市北区、石狩地方、空知地方を石狩川を渡り北上します。赤い線が学園都市線です(引用:Wikipedia)。
2012年に桑園‐北海道医療大学駅間までが電化されましたが、それ以降は非電化のワンマ1両ディーゼル車でワンマン運航となっています。北海道教育大学、北海道医療大学などキャンパスが多いため、学園都市線との相性になっていますが、北海道医療大駅以降の1日の乗車人数は約80人を切っており、JR北海道の管轄内では最低となっています。2012年以降、月形・浦臼・新十津川方面の運航はすべて石狩当別駅発着となり、石狩当別‐浦臼間は1日6往復。浦臼‐新十津川間に至っては1日1往復のみとなっています。廃線が検討されているのは、石狩当別の次の駅となる北海道医療大学から新十津川間とのこと。近い将来、廃線の可能性があるこの学園都市線周辺のスポットなどを実際に学園都市線に乗って訪ねてみました。
全国屈指の秘境駅・豊ヶ岡駅に行ってみた
筆者はこの学園都市線の新琴似駅近くに住んでいますので、親しんでいる路線です。札幌市内は住宅街なのですが、北上するにつれて広大な田園や農地が広がってきます。石狩川を渡ると、当別町に。浦臼方面に向かうには、石狩当別駅で乗り換えます。
石狩当別から浦臼方面に向かう場合、運行本数が少ないので、乗り換え時間がかなりかかることがあります。そのような時は、駅を出ることもできます。さっと買い物したい時は駅前に昭和16年(1941年)に建築した赤れんが倉庫を改築した「ふれ合い倉庫」がおすすめ。当別町の新鮮な農作物を中心とした特産品が豊富に販売されています。
当別町のスポットは後ほど紹介します。さて、駅に戻り、ワンマン列車に乗車。昔ながらの1両列車は、趣があります。特に鉄道オタクではないので、詳細はご勘弁下さい。
筆者以外に乗車していたのは4人ぐらいだったと記憶しています。石狩当別以降の車窓は広い農地と山地も加わり、北海道の田舎らしい雰囲気。学園都市線沿いの地方はお米中心に北海道でも有数の穀倉地帯です。
今回の大きな目的は、秘境駅として鉄道ファンには名高い、豊ヶ岡駅でした。日本の秘境駅ランキングで11位となっている駅は、石狩月形駅の次の駅で石狩当別からは約40分で到着。田園地帯を走る学園都市線ですが、この区間だけは、森林に囲まれています。
丘陵地の谷あいにあり、コンクリート製でやや傾きかけた駅ですが、現在は板張りに改修され、手すりも鉄柵で補修されています。駅に降りると確かに、こんな場所に誰がとまるのだろうという、何もない場所です。
線路の向こうになるのが駅舎です。渋い木造の建物で、歴史を感じさせますね。
もちろん、筆者以外に人はいません。聞こえるのは鳥の鳴き声と風の音と木々のゆらめきの音ぐらいです。
駅舎の中は待合室となっています。木造の板壁が趣いっぱい。そして、駅ノートがあるのですが、やはり鉄道ファンにはあこがれの駅なのか、ほぼ毎日、愛好家が訪れているようで、ビッシリと思いが書き込まれていました。
豊ヶ岡駅は昭和27年(1952年)、豊ヶ丘石炭積込所から月形小学校紅葉谷分校のあった落葉の沢まで索道ロープを引き、搬出された石炭を鉄路を使い運搬したのが始まりとされています。一般客が乗降する役ではなく、石炭の集積所としての役割を果たしていたらしいです。一般の乗降利用されるようになったのは昭和35年9月からでした。この地域の地名は「豊ヶ丘」ですが、駅名は「豊ヶ岡」。なぜ漢字が違うのかは謎のようです。
折り返しの列車が来るまで約2時間、何をしようかと思い、線路沿いを少し歩いてみました。するとビックリ!線路上にヒグマと思われる大きな糞が!
エゾシカや狸とは大きさがまるで違うので確信しました。ドングリの実などが消化されないまま残っていますから、そんなに時間はたっていません。ちょっと、恐怖を感じてしまいました。ホントに周囲に何もない感じなのですが、砂利道はあるので、歩いてみることに、すると数分歩くと、道路と農地に出ました。さすがにホッとしました。
道路にでて少し歩くと、豊ヶ岡駅の撮影スポットとなっている跨線橋があります。ここからの眺めは鉄道ファンではなくとも素晴らしいと思えるものでした。
今回は広角レンズしか持っていかなかったので、分かりにくいかも知れませんが、中央奥に駅のホームがあるのが分かると思います。上から見ると分かりますが、ホントに何もない森林の中にあることが実感できます。廃線になったりした場合、どのような処遇になるのかは分かりませんが、このような駅舎は何とか残して欲しいと思います。決して鉄道ファンではないのですが、ここは、またゆっくり訪れたい駅となりました。
上品な月形ジンギスカンもオススメ
豊ヶ岡駅のある月形町の中心駅は石狩月形駅。筆者は、ほかの記事で紹介したマガンの聖地「宮島沼」へ向かうときに利用します。そして、あるグルメもお勧めなのです。それは「肉のさかい」で打っているジンギスカンなのです。
味付きの生ラムや生マトンが安価で購入できます。ジンギスカンにも食べ方が色々あって、空知地方は羊独特の臭みを消すためか味付けをして、どちらかというと蒸し焼きで食べる感じになります。この月形ジンギスカンは、ほかの地域と比較してアッサリとした上品な味わいが気に入っています。
ドライブがてら会に来る北海道の別の地域の方も多いですし、駅からも歩いて10分ほどなので、オススメです。
北海道最古クラスの秘湯?中小屋温泉
お次は知る人ぞ知る秘湯を紹介します。石狩当別駅からは2つ目の本中小屋駅。ここも無人駅で、昔のコンテナか列車の車両を改造した駅で、この鄙びた感じは哀愁を誘いますね。学園都市線の駅はこのような形のものも多いです。外の看板も錆びてひしゃげています。
駅を降りてすぐ横の山につながる道を真っ直ぐに歩くと、15分ほどで山あいにひっそりとたたずむ「中小屋温泉」に到着します。
10月後半に訪れましたが、紅葉が綺麗です。現在は改築され、それなりに新しくなっていますが、中は昔ながらの温泉旅館。知る人ぞ知る存在で、筆者が訪れた平日も地元の方を中心にそれなりに混んでいました。
明治26年に源泉が発見され、後に湯小屋を建て、営業が始まったとされていますから、相当の歴史を誇りますね。日帰り入浴は500円(税別)。源泉の温度は10.5℃とぬるいので、加温し41、42℃ぐらいに加温し、若干の循環ろ過、塩素使用を行っているとのこと。温泉に実際に入ってみると、サラサラの無色透明なのですが、ほのかに硫黄の匂いが漂います。泉質は硫化水素泉硫黄のほかに、ホウ酸成分が60%入っているとのこと。ホウ酸は眼科などで目を洗う時の薬剤としても使用されています。ホウ酸が豊富に入っている温泉は北海道内では珍しいそうです。
温泉内は昔ながらの銭湯チックですが、メインの大浴槽とジェット風呂、サウナと水風呂と充実しています。景色の良い外風呂は寒い時期は使用できないのか、青いシートがかけられていました。フロントの女性に聞くと、「じっくり温まるし、肌荒れとかはすぐに治るよ!」と話されていました。お湯はぬるめですが、湯船に何度もゆっくり疲れますし、ぬるいのに保温効果は抜群!無色透明で温泉らしくないのですが、しっかりと効果を感じる、不思議なお湯でした。ちなみに食堂もあり食事を楽しめます。ですが、スーパー銭湯のような広間の休憩所は宿泊者以外の方は別料金(税抜700 円)が必要なのでご注意を。
当別の北海道土産の代表商品「ROYCE’」の工場が!
廃線検討区間ではありませんが、石狩当別のひとつ前の駅「石狩太美駅」から20分ほど歩くと、田園地帯に、巨大な工場が目に入ります。
あの新千歳空港などのお土産菓子「ロイズの生チョコレート」で有名な「ROYCE’」(ロイズ)の本社工場となる、ふと美工場なのです。
特に工場見学などは行っていませんが、工場内には直売店があり、いち早く新商品が発売されています。
工場がある当別町産で今秋収穫の新じゃがいもを使ったポテトチップチョコレートです。生チョコとポテトチップのコラボが実は絶妙で、新千歳空港のお土産の定番となっていますよね。また、ソフトクリームもミルキーでやっぱり美味しかったですよ。店内にイートインコーナーがあり、コーヒーも無料で呑めるのでゆっくり味わえます。
石狩太美駅から歩くことも可能ですが、ドライブがてら寄っても良いかと思います。工場直売店らしく、製造過程でちょっと傷が着いたりした規格外商品を安価で反場もしているので、コスパも悪くないと思います。
ちなみに、工場に隣接して、当別町出身で北海道の昭和初期を代表する作家、本庄陸男の生誕の地碑が建てられています。
最後は、石狩当別駅周辺のオススメグルメを紹介します。駅から徒歩で約25分の国道275号線に、本場さながらの讃岐うどんと天ぷら「かばと製麺所」が人気です。
店主は、本場讃岐で修業した後2011年に当別町で開業したとのこと。店内で麺を打っていながら値段も1玉390円(2玉、3玉と100円ずつアップ)と、本場並みの安価。地元の野菜やキノコなどを使った季節の天ぷらも人気です。今回は、期間限定の、肉みそ坦々うどんを注文しました。
麺はぶっとくて、モッチリしていながら、しっかりしたコシがあり、某全国チェーン店とは一線を画す味。久々に本物のうどんを食べた気がしました。地元客はもちろん、国道沿いなので観光客にも人気です。石狩当別駅からはやや距離があるので、ドライブの際に寄ってみては。北海道ゆかりのグルメではないですが、すべて地元の食材で作っているので、ある意味“北海道うどん”だと思います。12月からの冬期間は休業しますので、2017年4月以降の開店までお待ちくださいね。
まとめ
札幌市、当別町、月形町、浦臼町、新十津川村にまたがる学園都市線。今回は駅から比較的アクセスしやすいスポットを紹介しました。過疎地のローカル線ですが、地味ながら、知られざる好スポットがあります。日常の喧騒から離れて落ち着いたドライブや鉄道の旅をしたい方に最適だと思います。
<スポット情報>
豊ヶ岡駅
住所:北海道樺戸郡月形町字豊ヶ丘
肉のさかい
住所:北海道樺戸郡月形町字本町通3番地
TEL:0126-53-2459
営業時間:9:00~18:00
中小屋温泉
住所:北海道石狩郡当別町中小屋489-1
TEL:0133-27-2011
http://portal.town.tobetsu.hokkaido.jp/town/fika/mg586t00000003kk.html(当別町観光協会)
ロイズふと美工場直売店
住所:北海道石狩郡当別町ビトエ640-15
TEL:0120-612-417
営業時間:10:00~18:00
当別うどん かばと製麺所
住所:北海道石狩郡当別町樺戸町335
TEL:0133-22-3377
営業時間:11:00~15:00
URL:https://www.facebook.com/kabatoseimen/
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