日本でも有数の大都市の北海道・札幌。約190万人と北海道人口の約3割を占める街ですが、国内のほかの大都市と違うところは、その広さと、自然が豊富なところ。都会のど真ん中でも、「オアシス」と呼ばれる場所が数多くあり、今回ご紹介する「中島公園」もその一つです。観光にもお散歩にも便利な同公園を歩いてみました!
①:北の歓楽街・ススキノとホテル街のそばにある癒しの場
中島公園はJR札幌駅から、地下鉄南北線で中島公園駅下車すると、1、3番出口が公園に直結しています。お隣は大歓楽街のススキノで、周辺は高級シティホテルが林立している。都会のど真ん中にあります。なので、ススキノや中島公園周辺に宿泊している方には最高のアクセスとなっています。
緑と池や河川に囲まれた公園は総面積21万416㎡で東京ドーム4.5個分の広さを誇り、日本の都市公園100選にも選ばれています。3番出口を出ると、秋には紅葉のビューポイントとなるイチョウ並木道。この道を進むと菖蒲池があります。同池は明治時代に開拓で伐採した木材の貯木池で、周囲を整備し、明治43年に現在の形となった、中島公園の原点です。これを中心に代表的なもので43種の樹木に囲まれています。春はエゾヤマザクラなどの桜、10月下旬ごろの紅葉はひと際美しいです。
現在は夏なので爽やかな深緑の時期。菖蒲池はボートの貸し出しもしていて、この日も平日でしたが、アジア人観光客のご家族が歓声を上げてボートを漕いでいました。撮影しているこちらにも手を振ってくれて、微笑ましい光景です。
ボートは一隻40分で600円。営業は4月下旬から10月下旬頃までです。中島公園も変化を繰り返してきましたが、このボート乗り場だけは筆者が子供の頃と変わらぬレトロな空気を醸し出していて、公園内でも何故か落ち着く場所です。
公園内を歩くとそこかしこに東屋や緑地があり、犬の散歩をしたり、お弁当を食べたり、芝生やベンチに寝っころがっている市民の姿を見かけます。
もちろん、中島公園はこのような緑や自然だけではありません。一大文化センター的な役割を果たしています。3番出口から南に進むと、北海道立文学館があります。
北海道の文学史を学べ、道産子作家の書籍や自筆原稿など、所蔵品は26万点にもなるそうです。常設展のほか時期ごとに特別展も行われています。「オアシス1」というカフェもあり、落ち着ける空間となっています。さらに歩くとかつてはプロレス興行の聖地だった中島体育センターや、テニスコートもありスポーツを楽しめる施設も隣接されています。
②:コンサートホールも天文台も楽しめる!
公園内にはクラシックなどコンサートが行われる「札幌コンサートホール Kitara」があり、夜はライトアップされ非常に見栄えする空間となります。コンサート開催日でなくともエントランスホールや中庭が開放されています。
また「テラスレストランKitara」があり、食事もできます。公園に隣接する札幌パークホテルが運営しているので、北の幸を使った料理は高級ホテルそのもの。ランチでもお値段はそれなりにしますが、贅沢なひと時を味わいたい時はぜひ。
Kitaraの北へ歩くとすぐの高台に小さな天文台があります。
この「札幌市天文台」は昭和33年築という歴史ある施設です。中にはボランティアの職員さんがいて、子供たちも興味深そうに説明を受けていました。小さな天文台とはいえ、口径20㎝の巨大望遠鏡はやはり圧巻です。カメラなど光学系のガジェットが好きな方は興奮物でしょう。
昼間は反射板に太陽を写していて、黒点など観察できます。夜間も年間70日ほど公開しているそうです。この天文台の存在は市民の筆者でも知りませんでした。何気ないお散歩でも隅々まで歩いていると新しい発見に出会えますね。
③:重要文化財「豊平館」が4年ぶりリニューアル
そして、現在、中島公園で一番観ていただきたいのが豊平館でしょう。豊平館は開拓使が建てた洋式建築のホテルであり開拓使シンボルの赤い星が印象的です。明治政府が建てた唯一のホテルでもあり、開拓使の名残を残す重要な遺構となっています。明治12年(1879年)に着工し、同14年に竣工した豊平館は明治天皇の行幸の行在所となり、その後大正、昭和天皇の行幸啓となっています。昭和39年(1964年)に国の重要文化財に指定されました。
実は平成24年(2012年)から老朽化などによる耐震工事を行っていて長らく全姿を観ることは市民でもかないませんでした。しかし、今夏に工事が終了し、6月21日からリニューアルオープンしています!今オープンから観覧、貸室施設としても活用することになり、入場料大人300円で内部を観覧することができ、イベントや会議などでも部屋を借りることができます。明治の北海道開拓使ロマンをぜひ感じて下さい。
④:日本庭園の中に重要文化財の茶室も
この豊平館の隣にも、北海道では珍しい日本庭園があり、木造の門をくぐると日本古来の伝統の様式美を観覧できます。
広大な北海道の中に、このような箱庭があるのは逆にギャップが大きく、札幌にいることを忘れてしまいます。庭園内にはこちらも国指定の重要文化財となる茶室「八窓庵」があります。江戸初期に建造という歴史的建築物で、そのようなものが何故、札幌にあるのか。
建物のそばにある案内版の説明では、江戸初期の大名で茶人でもあった小堀遠州が建てたと伝えられ、在所は滋賀県長浜市内でしたが、大正8年(1919年)に八窓庵に惚れた札幌の実業家が買い取り、札幌に移築したとのこと。その後、昭和26年(1951年)に札幌市に寄付され、中島公園に移されたといいます。これほど古い建築物が現存するのは北海道では中島公園だけでしょう。通常は内部には入れませんので外観だけの見学になります。
これで、中島公園の紹介は終わりますが、うれしいサプライズもありました!菖蒲池を初め大小様々な沼地や、公園沿いを流れる鴨々川にはマガモやカルガモ、オシドリなどが羽を休めていますが、今回はカルガモの親子を発見!非常に愛らしい姿を見せてくれました。
子供は全部で10羽以上もいて、これほどの集団は珍しいと思います。近づいても撮影しても親子ともども警戒心がなく逃げません。何より餌をついばんだり、泳ぐ姿がものすごく可愛く癒されます。カラスなどに襲われぬよう無事に巣立ってほしいと感じずにいられませんでした。こんなサプライズもある中島公園。実に奥深い公園でした。
まとめ
観光としては地味な中島公園ですが、紹介したように見どころは多く、ススキノやホテル街に近いので、宿泊された方は朝の散歩や森林浴にいかがでしょうか?季節ごとにイベントの主役にもなり、6月は「札幌まつり」の縁日会場、7月末は豊平川の花火大会で公園もにぎわいます。冬場は歩くスキーのコースが造られクロスカントリースキーも楽しめます。2月には「さっぽろ雪まつり」と連動した「ゆきあかりin中島公園」で公園中がアイスキャンドルで幻想的な光景となります。イベント時期に合わせて訪れても楽しいはずです。
スポット情報
中島公園
住所:北海道札幌市中央区中島公園1
TEL:011-511-3924(中島公園管理事務所)
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