鉄の町・室蘭の工場夜景&測量山の夜景を堪能してみた

北海道

札幌から南西部へJRで90分ほどの距離にある室蘭市。道南の噴火湾沿いに位置する人口約9万人の都市です。かつては鉄の町として栄え、今もその名残は、数多くの工場群に反映されています。観光都市とは言えない室蘭ですが近年売出し中なのが、工場夜景と測量山からの夜景鑑賞なのです。さて、どれだけ綺麗なのか、室蘭まで足を運んでみました。

日本7大工場夜景に認定される

室蘭市は3方を海で囲まれ、海岸に突き出た鉤型というか、馬蹄形の地形の町です。新日鉄住金や日本製鋼所の巨大な工場が街中にあり、その鉄工所の企業城下町として、昭和年代までは栄えていました。同市はその工場群と東日本最大の吊り橋「白鳥大橋」を生かして、昨今、特にアマチュアカメラマンを中心にブームとなっている工場夜景を新しい観光の目玉として積極的にPRしています。日本七大工場夜景(川崎市、四日市市、尼崎市、周南市、北九州市、富士市)のひとつで筆者も工場夜景に興味があり、また測量山の展望台からの夜景も見てみたいと思い、今回は6月4日から10月29日の毎週土曜日に運航している「室蘭夜景観光バス」ツアーに参加しました。

JR室蘭駅周辺の光景です。

真正面に見える山が測量山です。標高200m足らずの山ですが、室蘭のシンボルでもあり、夜景のメッカとなっています。測量山については後程、ご紹介します。室蘭駅からは徒歩約10分でバス乗り場の旧室蘭駅舎へ。ここは観光案内所でもあり、チケットの発券所となっています。

夜景バスの料金は1000円で予約制。当日購入も可能ですが、結構な人気ですので事前予約がオススメ。夜景バスの乗車はこの旧室蘭駅舎と東室蘭駅東口となります。

バスに乗ると、観光協会のガイドさんが夜景や室蘭の街について説明してくれます。まずは最初のスポットとなる白鳥大橋下の「道の駅みたら室蘭」へ。

ここからは白鳥大橋と室蘭の海岸線を眺めることができます。室蘭はL字型に海に突き出た半島の街のため、常日頃から強風が吹きます。夏の時期でも厚着の用意した方が良いでしょう。

ここは夜景ではなく、海岸線へのサンセットと海にポッカリ浮かぶ大黒島のコントラストが美しかったです。

日本夜景遺産に認定の祝津公園展望台

この後は、約5分で標高約60mの丘陵にある祝津公園展望台に向かいます。室蘭岳を背景にした白鳥大橋の全景と「JXエネルギー株式会社室蘭製造所」(以下、JX製造所)のライトアップを眺めることができます。

9月の時点では、まだ薄暮の状態でライトアップはそれほど目立ちませんが、立体的なライトアップは十分に綺麗だと思います。同展望台からの眺望は平成25年(2013年)に「日本夜景遺産・自然夜景遺産」に認定されています。

白鳥大橋からJX製鋼所の夜景を眺める

さて、ここからがこの夜景バスの一番の見どころかも知れません。白鳥大橋を渡り、対岸に降りる手前の陣屋除雪ステーションでバスを降りると、JX製造所を間近に見下ろすことができます。この場所で見た眺めは、これまでの夜景とは一線を画す光景でした。

ランドマークとなる白い煙突がアクセントとなり、工場のライトアップがカラフルで、まるでSF映画の未来都市のような光景に目を見張りました。ツアーに参加した皆さんからも感嘆の声が上がります。これは誰が観ても素直に綺麗と思える夜景です。実際に観れば工場夜景マニアが増えるのも理解できます。

同所からの眺めは、実はツアーでしか立ち入ることができない、レアな場所で、陸運局が特別にツアーのみ認めている、スペシャルなスポットです。これだけでも夜景好きの方は予約する価値はあるはずです。

見上げる工場夜景が綺麗「崎守ビュースポット」

白鳥大橋を進み、対岸まで渡り「崎守ビュースポット」へ。ここはJX製造所の間近の岸壁で、陣屋ステーションとは逆の角度から、白鳥大橋と製造所のライトアップを見上げる形になります。

角度が違い、今度は見上げる形となり、まったく雰囲気が変わります。また、海への光の反射が美しさを際立たせています。いや、綺麗です。白鳥大橋のライトアップも美しいです。白鳥大橋は200個以上のライトアップを風力で発電させているのです。

波のない時は海に逆さになった白鳥大橋が映り、より綺麗だそうです。この日は風がつよかったのは残念でした。

 

これで室蘭夜景鑑賞バスツアーは終了。約2時間半の工程でした。室蘭の知られざる魅力を知ることができました。

室蘭のシンボル「測量山」の夜景もはずせない!

冒頭に紹介した測量山。標高は199.6mと小さな山です。

しかし、面積119.5haの緑地には約500種の植物に昆虫、野鳥、動物などが豊富で、特に渡り鳥の中継地にもなっています。市街地に隣接する山で自然散策や野鳥観察などで市民に愛されている山です。明治5年(1872年)、「札幌本道」を作るとき、当所の陸地測量道路築造長の米国人ワーフィールドが同山に登って見当をつけたことにちなみ、当初は「見当山」と呼ばれていました。現在は室蘭と札幌を結ぶ道路建設の「測量の基点」となったことにちなみ「測量山」と呼ばれるようになりました。ここの夜景は夜間は6つの電波塔がライトアップされるのが特徴です。

街から見上げた夜の測量山です。ここの夜景はぜひともオススメなのですが、アクセスがイマイチ。ロープウェーもなければ、公共交通も走っていません。ですので、レンタカーの方は良いですが、それ以外の方は、徒歩かタクシーしかありません。筆者は無謀にも徒歩で登ってみました。

室蘭駅からは約4キロで、ずっと登り続け、約1時間は覚悟してください。夏場などは汗びっしょりになります。また、ちょっとでも足を止めるとやぶ蚊が襲ってきますので、春~秋の時期は虫よけが必須です。まあ、タクシーでも1000円かからないので、お金がある方は素直にタクシーが良いと思います。

複雑な地形でヨーロッパの港町のような夜景

それでも、苦労して登った甲斐はありました。展望台からは、グルッと360℃のパノラマで室蘭の街を一望でき、天気が良ければ、有珠山、渡島半島の駒ケ岳の雄姿も眺められます。

写真のように山頂には各テレビ局など7本の電波塔があり、夜間はライトアップされます。変わっているのは市民の寄付と電力会社の協力により昭和63年から続いていること。1回4000円の申し込みで誕生日や結婚等の慶事、会社創立などの記念日などに点灯するのだそうです。

正直、撮影にはこの灯りは少々厳しい面もありますが、ライトアップ自体は展望台からも綺麗です。さて日も沈み、夜になると、こじんまりとしながらも、複雑な地形による雰囲気のある夜景が眼前に広がります。

室蘭港側の夜景です。この日は大型客船の「飛鳥Ⅱ号」が港に停船しており、美しいアクセントになってくれました。何となく、ヨーロッパの港町を彷彿とさせる夜景と感じました。

こちらは白鳥大橋方面の夜景です。対岸に夜景バスツアーで見学したJX製造所も分かると思います。夜景を撮りはじめてから、間もなくして、山にガス(霧)がかかってきたので、あまり良いコンディションではありませんが、美しさは伝わると思います。平日の撮影でしたので、展望台は筆者1人きり。ガスで前も見えなくなったため心細くなり、タクシーを呼んで、早めの退散となりました。しかし、雰囲気は良いので観光の方はもちろん、カップルにも最適だと思います。

夜景の後は名物「室蘭やきとり」を楽しもう

さて夜景に満足した後はお腹も満たしたいと思います。室蘭の三大グルメは「室蘭やきとり」「カレーラーメン」「クロソイ」なのですが、夜のグルメとしては「室蘭やきとり」を試してみて欲しいです。室蘭やきとりは、豚精肉に玉ねぎの串焼きでタレと洋辛子で食す室蘭名物。筆者は昔から通っている「とり金」です。JR室蘭駅から3つ目の輪西駅で下車し徒歩3分の場所。典型的な北海道のシャッター街です。

ここは、室蘭やきとりの元祖のひとつで昭和14年創業です。現在の昭和の匂い満点の店舗は昭和45年からそのまま使っているとか。なぜ、豚串となったか。室蘭には戦争当時、軍靴を製造する工場もあったそうで、軍靴には豚皮が使われていたとのこと。捨てていた肉や内臓部分を利用できないかということで、焼き鳥の原型がうまれたようです。タレ味になったのは、鉄鋼所の城下町であり、汗水たらし働く工場労働者に合う濃い味付けになったとのこと。まさに室蘭の食文化と言えるでしょう。

左2本が豚精(せい)のタレ、右が鳥です。外はやや焦げ目をつけカリカリなのですが、中はジューシーで絶妙な焼き加減です。タレは甘じょっぱい「醤油せんべい」。鉄鋼労働者の味が今に残る感銘を受ける味わいです。ちなみに北海道では豚串も「やきとり」と呼ぶ地域が多いです。1本140円からでリーズナブルです。ビールにも日本酒にも合うと思います。

まとめ

室蘭の工場夜景は、今までの夜景とは違い、映画の近未来都市をみるようでした。北海道でも唯一無二の夜景で、これは夜景好きにはたまらないでしょう。測量山の夜景も、人口が多くはないだけに、札幌の圧倒的スケール感、函館の唯一無二の地形の美しさとは無縁ですが、複雑に入り組んだ地形が、ヨーロッパの趣を感じさせる見飽きない夜景だと思います。女子同士やカメラ女子、カップルにもおすすめできます。また、近隣の登別温泉や洞爺湖温泉などに宿泊する方などは、ぜひ室蘭夜景も楽しんでみてください。

 

<スポット情報>

とり金

住所:北海道室蘭市輪西町1-22-3

TEL:0143-45-5802

 

道の駅みたら室蘭

住所:北海道室蘭市祝津町4丁目16-15

TEL:0143-26-2030

 

祝津公園展望台

住所:北海道室蘭市祝津町3丁目

TEL:0143-25-3320(室蘭市観光課)

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