北海道の酒どころ!旭川の男山&高砂酒造を見学してみた

北海道

筆者はお酒好きです。中でも食事に合う日本酒が最も好きです。北海道は日本酒どころではないですが、11の酒蔵が銘酒を醸しています。その中で、道北の旭川市は3つの蔵がある代表的な酒どころ。その中でも歴史あり、見学もできる高砂酒造株式会社男山株式会社を訪れてみました。

 

①:北海道最大の銘醸地となった「北海の灘」

 

北海道のほぼ中央部に位置する旭川市は、人口約34万人の北海道第2の都市です。札幌からはJR特急80分、高速バスで2時間20分の距離にある街です。大雪山系の山々に囲まれ、4つの川が街を流れる川の街。また、大雪山系の万年雪が大地に吸われ地下水となり、100年の時を経て日本酒に最適な伏流水となります。

そのような酒造りの環境に恵まれた旭川の酒造の歴史は、明治24年(1891年)、旭川の屯田兵入植に追随した札幌の酒造業者・笠原喜助氏が永山番外地に出張所を開設し、笠原酒造店としてもろ味造りを始めたのが最初と言われています。明治31年には旭川~滝川間の鉄道開通に伴い旭川は発展し、同時に酒造業者も増えていきます。

明治32年、今回紹介する小檜山酒造場(現・高砂酒造株式会社)、33年に山崎酒造場(現・男山株式会社)が誕生します。明治末期には蔵数14、生産石高1万5300石(2754kl)もの生産量を誇っていました。昭和初期までに酒蔵は延べ24蔵あったとか。大正時代は北海道の清酒醸造量の3割を旭川が閉め、道内最大の醸造地となり、「北海の灘」と呼ばれました。

しかし、昭和になり戦時体制の中、企業整備令により昭和19年、旭川の酒造場は1つにまとめられました。戦後、昭和23年に山崎酒造場が、いち早く酒造りを復活、そして現在、残っているのが、男山(株)、高砂酒造、「大雪の蔵」を醸す合同酒精(株)の3蔵です。

 

②:事前予約で1人でも酒造り見学が可能

 

旭川に訪れたのは12月中旬で、雪景色に包まれ、終日にわたり激しく雪が降っていました。旭川駅前に到着し、まずは高砂酒造へ。徒歩15分ほどで、木造の「高砂酒造明治酒蔵」が目に入り、向かいはコンクリート製の本社工場が目に入ってきます。

明治酒蔵は明治42年に竣工。本社が建立されるまではこちらで酒造りをおこなってきました。風格ある木造の建物は平成16年「第5回旭川景観賞」を受賞しています。蔵内は直売店があり、明治蔵限定のお酒や、酒粕などをつかったスイーツや菓子、グッズなどが販売され、休憩所もあります。

同酒造は、3日前までに申し込めば本社工場見学ができますので申し込みました。多くの酒蔵は実際に酒造りを行っている蔵見学は10人以上の団体しか認めないので、個人でも対応してくれる蔵の姿勢はありがたかったです。案内の方に導かれ、向かいの本社工場へ。

本社工場は昭和4年建築。鉄筋コンクリート製の蔵としては日本で3番目に古い蔵だとか。非常に趣があり歴史を感じる建物です。

酒造りは10月から始めているので、12月は新酒が続々と搾られる時期。蔵に入ると、ベルトコンベアのような機械が目に入ります。お米を蒸して、冷やして麹米と掛米に分け、清酒の元となる酒母(しゅぼ)タンクに投入する作業が自動化され行われていました。

こちらは、「ヤブタ」と呼ばれる醪(もろみ)から酒を搾る酒槽(圧搾機)で、ちょうどお酒を搾り終わった時間。酒槽に付着した酒粕を取っているところです。これが板粕として市販されます。ボロボロになった酒粕は食品業者などが使用するのだとか。

こちらが麹室の入口です。麹造りは酒蔵が最も神経を使う作業です。蒸したお米に麹菌をふりかけ、米麹を作る作業です。「一麹、二もと、三造り」と言われるほど。仕込み蔵のなかで、この部屋だけが高温多湿の環境で作業が行われます。麹菌はカビの一種で、普通は人間に害を与える菌ですが、麹菌は例外で体に良く、日本の「国菌」として認定されています。麹菌の天敵は納豆菌です。納豆菌は強い菌で麹室に混ざると、雑菌として増殖し3日間は消えないそうです。かつては見学者ももっと近づけたのですが、当日、納豆を食べた見学者がいたらしく、大変なことになったとか。それ以来、麹室は遠目で眺めるだけとなりました。

麹室の隣は、仕込みタンクが連なっています。

高砂酒造の現在の生産石高は約3000石(一升瓶換算30万本)。地酒蔵としてはかなりの生産量を誇りますので、蔵屋、仕込みタンクの大きさなどが目を引きます。

こちらが本社工場の奥にある貯蔵蔵です。こちらは木造蔵となっています。冬場は外気温で冷やされ10度から氷点下となり天然の貯蔵庫となり、それ以外は地下水を還流させ夏場でも15~17℃の気温を保っているとか。お酒をここで熟成させ、味が乗ってきたころを見計らって瓶詰めし、全国に出荷します。1つのタンクで一升瓶換算4000本分を貯蔵しています。

 

③:直売するすべての銘柄が試飲が可能

 

これで本社工場の見学は終わり、明治酒蔵の直売店に戻って、試飲タイムです。

今年の新酒を初め、直売店で販売している銘柄はすべて試飲させてくれます。高砂酒造の主力銘柄は「国士無双」です。昭和50年に誕生し、淡麗辛口のお酒として北海道では瞬く間に人気銘柄になりました。中国の史記に由来し、天下に二つとない酒、後世に語り継がれる酒との願いを込め、蔵元三代目・小檜山亨氏が命名しています。

気に入ったのは明治蔵限定の搾ったばかりの純米生酒。北海道産の酒米「北雫」を使用した同酒は新酒らしいフレッシュ感と辛みを感じながらも、お米の味も後からしっかり感じる芳醇な辛口酒です。お酒のお摘みにもあうはずです。

また、残念なことに同蔵のフラッグシップと言える、「一夜雫」が今季から醸造されないことになりました。同酒は大きな雪のドームを造って、その中で、醪を入れた袋を吊り下げ、ゆっくり落ちてくる雫を商品化した、大吟醸の贅沢な一品。しかし、近年の温暖化でドームの製造時期がずれ込み、さらに搾っているうちに、ドームが崩壊する可能性があるため、断念せざるを得ませんでした。蔵元にも昨年度のものがわずかに残るのみです。

同酒造は男山と比較すると全国的知名度はやや劣りますが、蔵の見学も含めるとかなり楽しめると思いますよ。

 

④:「男山」を名乗れるのは旭川の「男山」のみ!

 

高砂酒造を後にし、旭川駅前に戻り、今度は路線バスで約15分の永山地区にある「男山株式会社」に向かいます。こちらには、本社と、「男山酒造り資料館」と一体になった仕込み蔵の大きなビルがそびえ、蔵の規模の大きさが伺えます。

しかし、男山のルーツをたどると、江戸期の寛文年間、灘と並ぶ兵庫の酒どころ、伊丹で醸造を開始したと言われています。赤穂浪士や、徳川吉宗ほか、徳川将軍家の御用酒となったとの記録も残っています。なぜ北海道・旭川の地に「男山」がよみがえったか。伊丹の男山は、明治の初めには廃業の憂き目に遭い、全国各地に「○○男山」を銘柄名にする蔵がでてきました。しかし、1968年、「男山」本家である山本家末裔の良子氏から印鑑商標ほか一切の権限を譲渡され、正式に「男山」の正統となりました。そのため、「○○男山」は良いですが、「男山」の2文字を名乗れるのは、同酒造のみとなっています。

 

⑤:資料館から窓越しに酒造りを見学

 

こちらは高砂酒造とは違い、観光スポットとしても有名なので、日本人以外にもアジア人の観光客でにぎわっていました。

入り口をくぐると、試飲カウンターとショップ。実際にすべての酒を試飲でき(一部の大吟醸などは有料)、気に入ったお酒を伝え、試飲カウンターの店員さんに注文用紙を書いてもらい、向かいの販売カウンターで購買するシステムになっています。

2階と3階は酒造り資料館となっていて、酒蔵に昔から伝わる、酒造りの道具を造りの工程純に展示しています。

資料館の窓の向こうが、仕込みを行う工場になっていて、今は酒造りの最盛期なので実際に蔵人さんが作業を行うシーンを鑑賞できます。しかし、さすが全国的に有名な男山、蔵の規模の大きさに驚きます。

2階には大きなモニターがあり、日本語以外にも中国、韓国、英語で酒造りの工程がわかる映像が流れています。

3階は、江戸期の男山の文献や浮世絵などを鑑賞できる江戸時代資料室になっていました。

また、調合タンク群も迫力ある景色です。

調合タンクとは、お酒はタンクごとに微妙に味わいが違います。そのため、各タンクを調合タンクでブレンドし、味を均質化することに使います。さて、また1階に戻り、試飲カウンターへ。

こちらも、たくさんのお酒を試飲できます。ですが、この時期オススメなのは、来館当日に搾ったお酒でしょう。

蔵は「今朝酒」として販売しています。搾ったお酒を、加水もせず、火入れ(酵母の働きを止めるため加熱殺菌すること)もしない、生の酒です。ピチピチしたガス感を感じ、フレッシュな状態のお酒です。まさに蔵でしか飲めない味なので、お好きな方にはたまらないでしょう。

外には蔵の仕込み水を汲める蛇口があり、1人20リットルまで汲むことができますよ。大雪山の万年雪の仕込み水は軟らかくて非常に爽やかな軟水で、旭川の清酒がスッキリ辛口に仕上がる要因も理解できた気がしました。

 

まとめ

 

いずれも明治の開拓期から旭川に根差し、今も全国的な人気を誇る蔵。観光スポットとしても、日本酒好きならきっと楽しめると思いますし、結構な時間をつぶせます。試飲も存分に楽しめますが、ドライバーの方は涙をのんで我慢してくださいね。

 

▽スポット情報

高砂酒造株式会社

住所:北海道旭川市宮下通り17丁目

TEL:0166‐23‐2251

URL:http://www.takasagoshuzo.com/

 

男山株式会社

住所:北海道旭川市永山2条7丁目

TEL:0166‐48-1931

URL:http://www.otokoyama.com/index2.html

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