ランビックというビールをご存知でしょうか?大気中にある野生の酵母を使用し自然発酵させた、ブリュッセルの一部でのみ作られているビールです。そのランビックビールで有名なカンティヨン醸造所で年に1度の公開醸造日があると知り、早速訪問してきましたのでレポートします。
・カンティヨン醸造所とは
カンティヨン醸造所は1900年から家族経営でランビックビールを作り続けている老舗の醸造所です。公開醸造日以外は、博物館を訪問できます。
Cantillon Brewery/Brussels Museum of the Gueuze
住所:rue Gheude 56, 1070 Brussels (Anderlecht)
ブリュッセル南駅から徒歩5分ほどとアクセスが非常にいいですが、南駅周辺は治安があまりよくない場所として有名ですので、お気をつけ下さい。
博物館の開館時間:月、火、木、金、土、10時から17時
最終入館は16時、ガイドツアー(予約のみ)の場合は15時半
料金:7ユーロ、12-18歳と65歳以上は6ユーロ
料金にはテイスティングが含まれます。
公開醸造日:2016年11月12日(土) 7時から17時頃まで実際の醸造スケジュールに沿って行程を見学できます。
醸造スケジュール:
7時から9時、Brewing(仕込み)
9時から13時、Filtration and Hopping(フィルターで漉し、ホップを加える)
13時から15時、Cooking(煮沸)
15時半から、Pumping(ポンピング、冷却)
ガイドツアーはフランス語、オランダ語、英語、イタリア語であります。英語は7時開始で40分に一度ありました。所要時間は約1時間です。
料金:8ユーロ、1杯のテイスティング付き(博物館の入場料より1ユーロ高いです)再入場をしたい場合は、入り口で手にスタンプを押してもらってください。
・醸造方法
ガイドツアーでは1階から3階まで実際に醸造している場所を通りながらどのように作っているのかを丁寧に説明してくれます。ツアーはボトリングとラベル貼りをしている通路からはじまります。通路には所狭しとボトリングされたビールが横積みされており、ここで瓶内発酵をしているとのことです。次に1階の仕込み部屋に行きます。ここではお湯と細かくした麦を混ぜ、温度が一定になるようにかき混ぜながら煮ます。味を確認してOKであれば濾過し、2階にある別のタンクに移し、そこでホップを加えます。加えるホップは3年間寝かせたものです。ホップを入れてから数時間煮沸し麦汁を作ります。
麦汁が出来上がったら3階の屋根裏部屋にある大きなトレイに麦汁を移し替えるためにポンピングを行います。このポンピングが一番圧巻で、公開醸造日の見せ場だとガイドさんは言っておりました。トレイに麦汁を広げて冷却させますが、この過程がランビックビールの秘密です。3階の屋根裏部屋は密閉されておらず、外気が入ってくるような作りになっています。ここで大気中にいる野生の酵母を取り入れ、冷却します。野生の酵母ゆえ、同じものを2度と作ることはできません。またある程度気温が下がってからではないと、大気中にいる菌が多すぎてうまく発酵することができません。そのため毎年醸造を開始する時期が異なります。2016年は10月の半ばに醸造を開始しました。気温が上がる春までのシーズン中に50回ほど醸造します。冷却を終えたビールは樽詰めし、最初はふたをせずに発酵させます。ふたをしないことで樽内で発生する二酸化炭素を外に逃がします。その後ふたをし、最大3年間熟成させます。このため、3年もののランビックは炭酸が抜け、泡がありません。
・ビールの種類
試飲できるビールは5種類から選ぶことができます。
Gueuze(グーズ) 熟成年数の異なるランビックをブレンドしたビールです。ブレンド後に瓶詰めし、瓶内で二次発酵をさせます。
Lambic(ランビック) 3年間熟成させたビール。炭酸が抜けているので一切泡がありません。
Faro(ファロ) グーズビールに砂糖を加えて飲みやすくしたもの。ランビック独特の酸味を消すとは!とガイドさんは好きではないようです。
Kriek(クリーク) ランビックにサクランボを加えたもの。1リットル当たり200グラムのサクランボを使用しています。
Rose(ロゼ) ランビックにラズベリーを加えたもの。1リットル当たり200グラムのラズベリーを使用しています。
クリークとロゼはフルーツ感を出すためにも、熟成しすぎていない若いランビックにフルーツをつけ込みます。サクランボ、ラズベリーは天然のものを使用しています。濃縮やシロップなどは使っておらず、さらに甘味料を加えていません。他のメーカーのフルーツビールは飲みやすくするために砂糖で甘み付けをしているため、カンティヨンのクリーク、ロゼを飲むと酸味が強く感じると思います。
・お土産
試飲だけで足りない人のために、館内にはバーが設けられています。朝の9時半過ぎに行ったのですが、すでに何本もビールを空けている人が多数おり、その人気が伺えます。またビールだけではなく、Tシャツや専用のグラスなどの販売も行っています。天候にも左右され、すべて人間の手で醸造しているため1シーズンでできるビールは限られています。スーパーなどでは買うことができないためか、販売ブースは朝から長蛇の列でした。そしてすごい量を買っている人がいました!公開醸造日はとにかく人がたくさん来るため在庫はいっぱいありましたが、人気のものは売り切れになることもあるそうです。
・まとめ
醸造所の扉を開けると麦とホップの香りに包まれます。1度入場料を払えばその日は出入り自由なので、気になる人はすべての醸造プロセスを見学することができます。しかし、店内がそんなに広くないためか、午後になると入場制限を行っていました。公開醸造日に行く場合は、比較的空いている午前中が狙い目です。普通のビールを飲み慣れている人からすると、ランビックは「同じビールなのか?!」と思ってしまう味わいです。熟成期間が長いため味はまろやかで深みがあり、ビールというよりはワインのようなテイストです。ブリュッセルでしか醸造できない貴重なランビックビールを味わってみませんか。
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