札幌に根付いた現代の三大グルメと言えば?あくまで自称ですが、味噌ラーメン、スープカレー、そして回転寿司だと個人的に考えています。どのグルメも札幌は激戦区でどれを選べばよいか迷うと思います。筆者も同様です。そこで今回は、原点に返って“元祖”にこだわり、各グルメの歴史や元祖のお店を紹介します。
今も営業している味噌ラーメン元祖『味の三平』
この三大グルメのうち、最も歴史が古いのが味噌ラーメンだと思います。今も昔も札幌と言えば味噌ラーメンというイメージは一般化されています。この味噌ラーメンが登場したのはいったいいつ頃なのか、どのような経緯で誕生したのか?その答えのひとつが味噌ラーメン発祥と言われる「味の三平」にあります。
1955年、満州帰りの初代・大宮守人氏が「味噌は体にいい」が持論で、味噌汁にヒントをえて、工夫を重ねて「味噌味メン」を生み出しました。戦後は国民全体が栄養不足だった時代で、丼一杯で満足できるものを造りたいと、栄養のバランスを研究。その結果、モヤシと玉ねぎ、ひき肉を強火で炒め、ニンニクもしっかりきかせた「元気が出る一杯」が誕生しました。現在につながる札幌味噌ラーメンの原型がここにできます。今や一般的となったモチモチした縮れ麺も初代が考え出したといいます。札幌ラーメンの麺といえば西山製麺が超有名ですが、同製麺と共に濃厚なスープによく絡む麺を開発しました。
さて筆者もウン十年ぶりに三平さんの味噌を頂きます。一杯850円と老舗系のラーメンはどこも少々お値段が張ります。元祖だけあり味はいたってシンプル。ラードタップリのスープは、白味噌の味噌汁に野菜やニンニクの旨みをタップリ利かせた味わい。具は炒めた玉ねぎ、モヤシに挽肉、そしてメンマという王道を行きます。
食べ続けるうちに野菜や挽肉の旨みが乗って味わいが濃くなってくるのも特徴です。味自体は意外とあっさりしているのですが、油がタップリなので、コッテリ感も十分。縮れ麺に油コッテリのスープがよく絡みます。辛味噌も用意してあり、味を自分で調節することもできます。麺などは創業より細くなっているものの、昔ながらの味をそのまま守っている印象です。ちなみに、全国的になった「ラーメンライス」も初代が生み出したとか。こちらのライスはご飯茶碗ではなく、お皿に盛った形で出てきます。だからラーメンライスなのです。
筆者が訪れたころ、三代目の大宮一人さんが6月末に急逝、四代目社長に三代目の妻・恵子さんが就任し、店長兼相談役に二代目の秀夫さんが復帰し、7月9日から営業を再開したばかりの頃でした。悲しい出来事にも負けず、老舗の味を守っていって欲しいと思います。
濃厚熱々スープでラーメンブームの火付け役「純連」系
時代は進み、1980年代、アッサリ系の味噌ラーメンが主流だった頃に出てきたのが、いわゆる「すみれ」「さっぽろ純連」系です。こちらは濃厚な味わいで、タップリのラードがスープの表面を多いアツアツのコッテリスープで一大ムーブメントを起こしました。ルーツは昭和39年、札幌市豊平区中の島で村中明子さんが創業した「純連(すみれ)」でした。冬の厳寒の時期にも温まってもらえるようなラーメンをとタップリのラードで味曽の旨みと熱さを閉じ込めたラーメンはその時代でも人気になりました。
しかし、店主の病により昭和57年に突然の閉店。ですが翌年に別の場所で店を再開。店名はよく読み間違えられていた「純連(じゅんれん)」としてスタートしました。経営が軌道に乗った頃、店を長男に譲り、現在は豊平区平岸に移転し現在に至っています。それとは別に三男の伸宜氏も明子氏の下で修業後、ルーツである中の島に「すみれ」を開店します。
筆者が久々に訪れたのは「純連(じゅんれん)」の北31条店。食べたのは味玉味噌(920円)。スープの表面にはラードが浮き火傷しそうなぐらいの熱さとインパクトは健在でした。おそらく、複数の味噌と様々なスパイスを利かせたスープはシンプルな味の「味の三平」とは別路線に感じます。さすがに年齢を重ねるとこのコッテリスープは飲み干せませんが、懐かしい味わいです。
純連系で特に「すみれ」は新横浜のラーメン博物館に出店し注目を浴び、札幌味噌ラーメンが全国的なブランド化となったパイオニアと言っていいでしょう。ここから修業し独立して様々な名店が生まれています。北海道でNo.1の人気を誇る『彩未(さいみ)』も「すみれ」から独立しています。
全国屈指のラーメン激戦区となり、若手やニューウェーブ系の素晴らしくうまいラーメン店も数えきれないほどの札幌。あくまで個人的感想ですが、ルーツは「味の三平」、そして札幌味噌ラーメンをブランド化したのは「純連」系、この2つがなければ今の時代もなかったと言えるでしょう。古い味わいですが、根強い人気があるのは根源的な旨みがあるからだと思います。
実は歴史が深い札幌のスープカレー
札幌のスープカレーはそれこそ2000年代になってから全国的にも知られたグルメだと思います。いまだ口にしたことがない方も多いはずです。スープカレーとはそもそも南インドや南アジアの料理から影響を受けたスープ状のスパイス料理です。スリランカカリーに似ていると言われますが、それに独自の工夫を凝らし、ひとつのジャンルに昇華されています。「スープカレー」として売り出したのが名店「マジックスパイス」ですが、正真正銘の始祖は「インドカリ店 アジャンタ」だと言われています。
1971年、喫茶店を経営していた辰尻宗男さん・南美智子さん夫妻が当時の北海道教育大学付近に移転し、学生相手に雑誌に出ていたインド料理を真似て7,8種類のスパイスを使ったサラサラのチキンカレーを提供し、人気を博します。宗男さんはインドに魅了されスパイスカレーの研究に没頭するようになります。宗男さんの父が入院したときに、体に良い料理をと、数十種類のスパイスと漢方を研究しそれを取り入れたスープを薬膳カリーと称すようになり、現在のカレーの原型ができたのが1980年前後だとか。この影響で、80年代からスパイスカリー店が増え始め90年代からは「スープカレー」と称され専門店が激増していきます。
アジャンタの元祖のお店は、札幌中心部から市電で約20分「屯田東通」電停で下車。現在は妻の美智子さんが切り盛りしています。外観は民家、店内はアジアンカフェのようで、お年寄りも多くアットホームな雰囲気。ここでは「とりカリー」(1100円)を注文。元祖らしく、素揚げの野菜などはなく大きなチキンレッグとピーマン、ニンジンのみとシンプル。
スープカレーはルーカレーとは違いライスとスープが別々で、ライスをすくってスープに浸して食べるのが王道です
スープは澄み切った味わいで、辛いのですが刺激的な辛さではなくまろやか。薬膳カレーを謳うだけあり、漢方の匂いもただよってきます。現代のトレンドである凝縮された濃厚なうまみではなく、上品な中にも奥深さがあり、食べ進めるうちに病みつきになるタイプです。見た目通りにスパイスと鶏の旨みだけで魅了する逸品です。辛さは備え付けのマサラパウダーで調節できます。ここは一度も「スープカレー」とは名乗っていませんが、今も「スープカレー」の名店として敬愛されている理由が分かりました。また、「アジャンタ」を名乗る店はほかにもあるのですが複雑な事情があるようで、ここでは言及しません。
生き馬の目を抜く?札幌の回転寿司サバイバル
回転寿司に関しては“元祖しばり”ははずします。今年1月、札幌市民にとっては衝撃的な出来事が起こりました。札幌の美味しい回転寿司のパイオニアだった「廻転ずし とっぴ~」が倒産したというニュースが駆け巡り、筆者も驚きを隠せませんでした。ネットには「ベッキーよりもとっぴーの方がショック」という書き込みもあったとか。
回転寿司は、今後も成長が見込める分野だけに、大手企業の買収も多く寡占化も進み、競争が激化している業界です。それにいかなる老舗といえどついていけなかったということでしょうか。回転寿司は結局ネタの新鮮さや大きさにあるので、老舗も新興も関係なく、気を抜けば「とっぴー」のようになってしまうということでしょう。そこで今回は倒産したあとの店舗がどうなっているのかを少し探りました。
JR札幌駅に直結する総合商業ビル「ESTA」10階には「とっぴ~ エスタ店」がありましたが1月に閉店。その店舗をそのまま利用して、現在は「回転寿司 北海道 四季彩亭」となっていました。4月にオープンしたようで、店は混み合っています。
北海道の回転寿司は、その時の旬のネタが看板に書いてあるので、用紙に記入するか店員さんに直接注文するのが新鮮なネタを食べられるコツです。写真は生しらすです。
この生ズワイガニは口の中で濃厚な旨みを残し、とろけるような味わいでした。そして皆さんも大好きなはずの定番、北の幸ボタンエビ。
凄い迫力ですね。濃厚な味わいも文句なし。初めてのお店でしたが総じてネタは新鮮です。テーブル席からは夜なら札幌駅周辺の夜景を楽しみながら寿司を満喫できます。シャリの握り具合や酢飯の味わいはどこの回転寿司もイマイチです(あくまでも個人の感想です)。アルバイトが握るので、多くは求めてはいませんが。とにかくネタの新鮮さや大きさ、家族連れも多いのでサイドメニューの充実ぶりが、札幌では重要かと思われます。
札幌には北海道各地の海鮮の仲卸業者が経営するチェーン店が新鮮なネタを武器に進出しています。とはいえ今の回転寿司はほぼはずれはありません。あえて選ぶなら、釧路からの「なごやか亭」、根室の「花まる」、北見の「トリトン」。この三つのどれかを選べば満足できるはずです。
まとめ
ネットに美味しいラーメン、スープカレーなど情報は満ち溢れています。なので、今回はあえて元祖で攻めてみました。若い人には受けが悪いかもしれませんが、元祖がなければ業界の誕生も発展もありませんでした。そんな思いや歴史を感じながら老舗の味を感じてみるのも一興だと思います。
<スポット情報>
味の三平
住所:北海道札幌市中央区南1西3-2大丸藤井セントラル4階
TEL:011-231-0377
純連 北31条店
住所:北海道札幌市東区北31条東1丁目1-8
TEL:011-750-5678
アジャンタ インドカリ店
住所:北海道札幌市中央区南22条西7丁目1-10
TEL:011-521-7040
URL:http://tabelog.com/hokkaido/A0101/A010104/1000614/(食べログ)
回転寿司 北海道四季彩亭
住所:北海道札幌市中央区北5条2丁目エスタ10階
TEL:011-271-6720
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