北海道の十勝地方は北海道屈指の雄大な大地があり、全国の畑作の作地面積の1割を十勝地方が占めると言われ、日本有数の大食糧生産地です。今回は、そんな十勝の主要都市・帯広の人気屋台「北の屋台」の数々の十勝グルメと、地元に根付いたご当地グルメ「豚丼」と「インディアンカレー」を紹介します。
2001年にオープンした北海道屋台村の草分け
十勝地方は広い大地と海岸線に恵まれ、豊富な農畜産物と海産物に恵まれています。食の宝庫・北海道でもトップクラスの恵まれた土地と言ってもよいでしょう。夏場を中心に北海道らしい雄大な景色で人気の十勝。主要都市・帯広のJR帯広駅付近は繁華街としてにぎわっています。その中で、2001年7月末に産声を上げた屋台村「北の屋台」が今も人気を集め、すっかり新名所となっています。帯広駅からは徒歩5分ぐらいです。
「北の屋台」は帯広の町を元気にしたいという思いを持った有志40人が集まり、1999年2月から「屋台」をキーワードに調査を開始します。2000年に「北の起業広場協同組合」を設立当時、全国的に減り続ける屋台という業種に新たな息吹を与えるため、新規参入できる「十勝型オリジナル屋台」を開発。1年間の広告戦略的な広報活動を行い、2001年に「北の屋台」がオープンしました。
現在は20店舗が営業されています。同屋台の特徴としては屋台経営にとどまらず、屋台から卒業して、第2の人生を支援する「起業支援」が充実していること。3年に1回、リニューアルを行い、店舗移動や入れ替えを行い、活性化を図っています。今年は3月末に一時閉店し、4月20日に第6期としてリニューアルオープンしています。筆者が訪れたのは3月下旬なのでご了承ください。今回訪れた店はリニューアル後も残っています。
新鮮なラム肉や熊串焼きを出す店も
基本的に多くのお店が、十勝や北海道産を使った「地産池消」が特徴ですが、数多くの店舗があるだけに、2,3回通ってもすべてを回るのは当然無理です。筆者が行った、3軒のお店で、美味しく、珍しいメニューを紹介します。筆者が一番気に入ったお店は「琥羊(こひつじ)」です。五分狩りの一見、強面そうなマスターですが、優しい笑顔で迎えてくれます。
生産者がこだわって育てた十勝産の羊肉がオススメの店で、特に生ラムのタタキが自慢のメニューです。
シャキッとしていてまさに新鮮さが伝わってきます。もちろん羊肉独特の臭みも皆無。ラム肉などは新鮮でないと生では食べられません。そして、さらに運よく、超のつくレアメニューをいただくこともできました。
生ラムのレバー刺身です。滅多に出ない裏メニューで、屠殺場に直接仕入れに行っても、厳しい検査に通らないと売り物にならないものです。さらにレバーは新鮮なうちに処理しなければいけませんので、その日のうちに出さなければならないメニューなのです。
適切な表現はできませんが、本当にプリプリした食感でかつ口の中ではとろけるような味わいです。これほど新鮮な生ラムレバーなど食べた記憶がありません。記憶に強く残るメニューでした。このお店は、羊肉以外のお摘みメニューもかなり充実しています。
こちらは道南の松前産のホッケ刺身です。ホッケは鮮度が良くないとお腹をこわすので、北海道でも春先など旬の時期でなければ刺身にはできません。本州の方にはこちらもレアメニューになりますね。また、筆者が訪れた時は「十勝産つぶ貝祭り」を行っていました。
つぶ貝も、北海道ではお摘みの定番で小さな巻貝です。コリコリした食感で刺身や煮物などで人気です。ここで食べたのは「つぶ貝と菜の花の三升漬け」です。唐辛子、麹の床に寝かせたネットリとして辛み苦み、つぶ貝の旨みの出た逸品でした!
次に、訪れたのは、北海道らしい野趣あふれるメニューを出している串焼きのお店「串のやっさん」です。
特に珍しいのは熊肉串焼きです。店内は薄暗く独特のムード。マスターはスキンヘッドに髭をはやし無口で非常にオーラのある方。それもそのはず、ご本人が熊撃ちや鹿撃ちのハンターでもあるからです。
こちらが、熊肉串焼きです。もちろん、マスターが仕留めたヒグマの肉です。かつてヒグマ肉は罐詰などで売られていましたが、臭みが強すぎて食べられたものではありませんでした。しかし、この串焼きは、熊らしい野趣があふれ、弾力はあるものの、臭みも感じず今までの熊肉の概念を吹き飛ばすものでした。
そしてこちらは鹿肉のタタキ。絶妙のレアな焼き加減で本当に美味しいです。もちろんこちらもマスターが撃ったエゾシカです。今、鹿肉も北海道では積極的に使用し、ジビエなど専門店も増えてきています。かつて鹿肉や熊肉に独特の臭みがあったのは血抜き処理が下手だったからです。今はハンター自身が撃った鹿や熊を鮮度が良いうちに素早く血抜きすることが求められています。ここのマスターはほかの店の方に伺ったら撃つ方も血抜きも、まさに名人の域だそうです。
マスターに伺ったところ、現在、北海道にエゾシカは約60万頭、ヒグマは約1万頭が生息しているのだとか。鹿はかつて北海道の東部にしか生息していませんでしたが、現在は北海道全域に生息しています。その原因は狼の絶滅です。開拓で明治時代の入植により家畜を狙う害獣として、駆逐されました。天敵が消えたエゾシカは急速に数を増やし、今は増えすぎて農作物を荒らす害獣とされ、現在は人間が駆除するしかなくなりました。逆に熊は、人間が熊の住むテリトリーを犯すようになったため、人里に現れる熊も多くなりました、そのほとんどが森に返されることなく駆除されます。熊の行動範囲はかなり広いため、殺されると雄と雌が出会う確率は下がり、増えることはなく減る一方です。「本当のところ野生動物は人間より賢い。人の怖さを知らない若い熊が街に出て撃たれている」とマスターは話します。熊に関してはなるべくなら撃ちたくないという口ぶりです。人間と野生動物の共存共栄、これは生態系の維持を含めた永遠のテーマでしょう。鹿と熊を食べながら、色々と考えさせられました。
幻の日本酒が呑める店も!
北の屋台は4番街まで別れていて、その中央部にはトイレがあり、彫刻が飾られています。
同屋台のシンボル像で「ikinukin(いきぬきん)」と命名されています。屋台でお客がほっと一息「息抜き」をする意味と、店主が第二の人生を「生き抜く」力強さを併せ持った像として帯広ゆかりの彫刻家、相原正美氏が製作したものです。
さて、最後の締めの店です。最後は「こころ」という新鮮な魚介類とおでんが売りのお店です。そしてここには、北海道では「幻の酒」と呼ばれる、「北の勝 搾りたて」が呑めると教えてもらったので、伺いました。
愛嬌の良い大将と女将さんが切り盛りする店。早速、幻のお酒を頼みました。「北の勝」は北海道最東端である根室市の酒蔵「碓氷勝三郎商店」の主力銘柄で、「搾りたて」は季節限定の主力銘柄です。1月中旬に発売され、蔵元では数分で完売するというレア酒。それで北海道でも滅多に呑めない幻の酒と呼ばれています。しかし、こちらの店では蔵元との付き合いで数十本ほど仕入れているそうです。
しぼりたてだけに、うすにごりで、スッキリしていて、適度にフルーティーで飲みやすい味わい。北海道のお刺身や野菜系のお摘みにピッタリだと思います。
筆者は最後に「サーモンのルイベ(凍らせたもの)」と合わせて幸せな一夜を過ごせました。ちなみに3月下旬の寒い時期でしたが、各店舗独自に囲いをつけ、調理熱が客席にも回るので、店内は十分に暖かいですよ。
帯広のご当地グルメ「豚丼」と「インディアンカレー」
ここからは帯広のソウルフードを紹介します。帯広名物と言えば、真っ先に名前が挙がるのが「豚丼」です。北海道は全国一の豚肉消費地です。筆者も高校を卒業し本州に出るまでは基本は豚肉とジンギスカンで、牛肉を食べた記憶があまりありません。特に道東の十勝地方が豚肉の最大の消費地です。十勝では明治の開拓時代後期に養豚が始まります。牛や馬は農耕や開拓に利用し、豚は食用として、豚皮は防寒着として利用された歴史があるようです。甘口の砂糖醤油のタレにつけた焼肉をご飯の上に大量に盛り付ける、現在の形は、昭和初期に考案されたようです。
こちらは、現在、帯広一という人気を誇る「とん田」の豚バラ肉の豚丼です。十勝で飼育された新鮮な豚肉を使用。独特の甘いタレと厚みのあるジューシーなばら肉のコラボレーションが絶妙の逸品です。「とん田」ではヒレ肉、バラ肉の2種類が選べます。
こちらは観光客以上に、地元民に大人気のお店で、昼間はサラリーマンが行列を作る名店となっています。筆者は閉店寸前に入れたのでラッキーでした。帯広駅からはやや「離れているので、観光の方はタクシーなどの利用をオススメしますが、並ぶのは覚悟してください。
お次は、帯広定番のB級グルメ「インディアンカレー」です。創業は1899年と古いですが、インディアンカレーの1号店を開店したのは昭和43年(1968年)です。帯広で2番目に美味しいカレーライス(1番目は妻や母の作ったカレーだから)というキャッチフレーズで人気を博しています。函館の「ラッキーピエロ」のように地域に密着したB級グルメで、帯広市内や周辺で10点、釧路市に2店舗とまさに帯広や道東地方限定のご当地グルメとなっています。筆者は今回、帯広駅に近い「まちなか店」を訪れました。
筆者が頼んだのは、基本のインディアンカレー。インディアンカレーは、メニューによって、インディアンルー、ベーシックルー、野菜ルーの3種類のルーを使い分けています。通の方はメニューにより、色々なルーを試しているようです。
大盛りなので、ご飯が見えません。普通盛りで421円ととてもリーズナブル。牛肉をふんだんに使い、数十種類のスパイスで熟成しています。まろやかな甘口ですが、スパイスの奥深い味わいが印象的。くせになる味わいです。観光客や地元の方で昼間はお客さんが途切れません。ルーだけを持ち帰ることもでき、同店では自分で鍋や容器を持ってくることをオススメしています。時間があれば訪れてみて下さい。損はしないと思います。
まとめ
雄大な大地の十勝には北海道でも屈指の食材の宝庫といえるでしょう。今回紹介しただけでも、農畜産物や海産物、そしてご当地グルメなど豊富な地元フードがあることがお分かりになると思います。素晴らしい自然を楽しむとともに、十勝の名産グルメを味わえばより幸せな気分を味わえますよ。
▽スポット情報
北の屋台
住所:北海道帯広市西1条南10-7
TEL:0155-23-8194(北の起業広場協同組合)
ぶた丼「とん田」
住所:北海道帯広市東6条南16-3
TEL:0155-24-4358
インディアンカレー「まちなか店」
住所:北海道帯広市西2条南10-1-1
TEL:0155-20-1818
URL:http://www.fujimori-kk.co.jp/indian/
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