大都市ながら広大な大地に緑も広がる札幌市はスケールの大きい様々な公園が市内各地にあります。観光客にも知られている、大通公園、中島公園、円山公園、モエレ沼公園、国営滝野すずらん公園。これ以外にも市民に愛される公園が多士済々です。その中で、夏場は一面花に包まれる、百合が原公園を訪ねてきました。
札幌市の北にある市民の憩いの場
百合が原公園は札幌市北区にある総合公園。昭和天皇御在位50年記念事業で、昭和58年(1983年)に開園しています。元々は北海道大学農学部の東北公園基本構想により策定され、昭和56年に管理事務所が完成。同58年に東北公園から「百合が原公園」に改称されました。広さは約26haで、札幌ドーム4.6個分という広大な公園です。
札幌都心から北東8㎞先にある同公園はJR札幌駅からは学園都市線(札沼線)にのり15分で百合が原駅で下車。徒歩5分で公園に着きます。雰囲気としては観光客が立ち寄るというより、広大な緑と花にかこまれた敷地は市民の憩いの場という雰囲気です。一部、アジアからの観光客もいましたが、多くは家族連れ、老夫婦、カップルなどが中心でした。
百合が原駅は小さな無人駅で、周囲は普通の住宅街です。しかし、少し歩けば、緑と花に囲まれた別世界が広がっています。
約6400種類の花や植物が育てられている公園です。そして、名前の由来となっている、ユリは「世界の百合広場」に約100種が植えられています。筆者が訪れたのは6月初旬。残念ながらチューリップの時期は終わり、ライラックやツツジも終わりかけという、ちょうど春から晩春の花から初夏の花への変わりかけの時期だったようで、一面花の楽園という光景ではありませんでした。写真のようにライラックも枯れ始めていました。
日本原産の希少なユリが開花第一号
ユリも夏の花で6月初旬から咲き始めます。筆者もユリを見たくて同公園のメインともいえる「世界の百合広場」へ足を進めました。
ですが残念ながら、ほとんどのユリはまだ開花前でした。ただ、約100種という種類のユリがあれば早咲きのものもあります。
今季のユリ第一号として「オトメユリ開花中」との看板があったので、足を運びます。すると、わずか2,3輪でしたが、オトメユリが可憐な花を咲かせていました。
オトメユリは春~夏に咲かせる日本の固有種です。花の匂いを嗅ぐと若い桃のような甘い芳香が心地良いです。色も薄桃色で一般には「ヒメサユリ」といいう名前で知られていると思います。
上品で儚げな色と姿が奥ゆかしく、日本原産らしさを感じます。宮城県南部、福島県、新潟県、山形県をまたぐ飯豊連峰、吾妻山、朝日連峰周辺のみ生息する希少種で絶滅危惧種となっているとか。いや貴重な花を見ることができました。ユリはこちらしか咲いていませんでした。7月初旬からは広場全域がカラフルなユリが人々の目を楽しませてくれます。
ハンカチの木が異例の大量開花!
オトメユリの近くには珍しい「ハンカチの木」の花が大量に花を咲かせていました。ミズキ科ハンカチノキ属で中国湖北西部、四川、貴州、雲南省北部原産です。
原産国では標高2000m以上の森林に生息するとか。白い花が垂れ下がり、洗い立てのハンカチが吊るされているように見えることから名づけられたようです。
実は、白い花に見える部分は苞(ほう)と呼ばれ、葉が変化したもの。実は本物花は丸い部分にあって花びらがありません。苞は初め緑がかっていて目立ちませんが、徐々に白くなり花を包みます。北海道では地植えでの栽培は困難で、栽培が成功しても花を咲かせない時もあります。同公園では今季、近年まれにみる多くの花を咲かせたそうです。ハンカチの木も時期の終わりを迎えているようで、苞が地面にたくさん落ちていました。
日本では別名「幽霊の木」とも言われています。昔の怪談で出てくる白装束を来て出てくる足のない幽霊に似ているようにも見えますね。まだ花開いていない「世界の百合広場」をグルッと回ります。ユリは咲いていないものの、フジは満開でフジ棚が目を楽しませてくれました。
ほかに目立つのはレンゲツツジや同じツツジ科のシャクナゲなどでした。これらも花びらが地面に落ち、終わりの時期を迎えているようでした。下の写真はシャクナゲです。
百合広場を回ると、中央部分に噴水広場があり、爽やかな青空も相まって、非常に北海道らしい光景が広がっています。
噴水やベンチの向こうに見えるのはサイロ展望台です。元々、公園になる前の同地は牧場だったとのことで、サイロをそのまま利用し、改修して展望台化させています。サイロの螺旋階段を登ると、園内の花々や公園の周囲を一望できます。
子供やお年寄りに人気!リリートレイン
サイロの目の前は緑に囲まれた広い芝生広場になっていて、家族の憩いの場になり、子供たちの絶好の遊び場になっています。
この芝生広場やサイロ、公園の周囲には、「リリートレイン」という列車が走っています。公園内に列車が走っているのは北海道らしいスケールだと思います。公園内にもいくつも小さな踏切があります。
ある意味、同公園の目玉の一つがこのリリートレインです。公園の中央部に、トレイン乗り場があり、子供やお年寄りに大人気です。
こちらが乗り場兼レストランの建物です。リリートレインは大人360円で、30分間隔で運行しています。筆者も試しに乗ってみました。1周1.2㎞ほどを約12分でゆっくり回ります。運転手の方がナビゲーションしながら公園の説明をしてくれます。子供にとっては緑や花の中を通る至福の時間でしょうね。
写真のリリートレインが走る脇は宿根草(しゅくこうんそう)園で、6月下旬からは一面シャクヤクの花が咲き、綺麗だそうです。時期的に本当に惜しい時に来てしまったと思いました。トレインを降り、乗り場の隣は「レストラン百合が原」があります。
店内は市民の方が撮影した花々の写真も飾られています。筆者は本日おすすめの「タマネギたっぷりのビーフカレーライス」(750円)を注文しました。
量は筆者にとっては少なかったですが、玉ねぎや野菜がじっくり煮込まれた味わい深いカレーでした。昔懐かしい味がします。
有料施設も見どころあり
その他の有料施設は「世界の庭園」(130円)。札幌市と姉妹都市の中国・瀋陽市、ドイツ・ミュンヘン、アメリカ・ポートランドと、日本の4つの庭園で構成されています。すべて、各国の造園家に依頼し設計されています。
こちらは瀋陽園です。中国の伝統的な自然山水の庭園。木組と屋根の瑠璃瓦は中国で制作され公園に輸送された本格的な庭園です。
こちらはポートランドガーデンで、一般家庭の庭を再現しました。「バラの都市」と言われるだけにバラを主題にした庭園です。
しかし現在はまだバラの時期ではなかったですが、綺麗なチューリップが列を連ねて咲いていました。
そのほか、「百合が原緑のセンター」(入場料130円)があり、メインは温室でアカシアやツバキ、シクラメン、ダリアなどが咲き乱れているようです。
筆者が訪れたのは月曜日で、残念ながら休館日でした。様々な展示会や時にはコンサートなども行われているようです。目の前のコテージガーデンでは花や鉢植えの販売も行われていますよ。
まとめ
5時間ほど、グルッと公園を回ったのですが、広すぎてすべてを回り切れませんでした。それぐらいスケールの大きい公園です。今回紹介した以外にも高山植物などのロックガーデンやローズガデンなどがありますが、まだ旬ではありませんでした。5月から6月初旬でチューリップやツツジ、ライラックの時期が終わり、ユリが本格的に咲く6月下旬からが百合が原公園の夏の旬だと思います。観光というより、息抜きやウォーキングや犬の散歩、花や緑に癒されたい方にオススメです。
スポット情報
▽百合が原公園
住所:北海道札幌市北区百合が原公園210番地
TEL:011-772-4722(管理事務所)
011-772-3511(緑のセンター)
URL:http://yuri-park.jp/
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