フィレンツェの観光名所ピッティ宮殿は、最初の所有者ピッティ家の名まえが残っていますが、16世紀後半よりトスカーナ大公国の王宮として、メディチ家をはじめイタリア王サヴォイア家などが暮らした由緒ある建物です。
ここにはラファエロを始め、ティッツィアーノ、カラヴァッジョなど、世界一流の名画が揃うパラティーナ美術館、トスカーナ大公が妻エレノオーラのために造った美しいボボリ公園など、見どころが盛りだくさん。フィレンツェで必見の宮殿です。
トスカーナ大公国メディチ家の居城、ピッティ宮殿
フィレンツェで最も大きく荘厳な宮殿であるピッティ宮殿。フィレンツェの有力者ルカ・ピッティが、メディチ家に対抗して15世紀中ごろに建てました。メディチ・リッカルディ宮殿の正面玄関よりも窓を大きくして、中庭はストロッツィ宮殿が入る大きさという注文をだしたというのですから、当時のフィレンツェの景気の良さがうかがえます。
16世紀中ごろ、メディチ家出身のクレメンテ7世がローマ法王になると、共和制フィレンツェはフィレンツェ公国となりメディチ家が権力の座に返りつきます。そしてトスカーナ大公国の初代大公はメディチ家のコジモ1世。
妻であるナポリ副王の娘エレノーラ・ディ・ドレドがピッティ宮殿を購入し、これまでのメディチ家の住居だったヴェッキオ宮殿から、ピッティ宮殿へ住まいを移します。これを機会に宮殿はさらに豪華に改装され、子供を亡くした妻エレノオーラのために美しいイタリア式庭園を造りました。
また、政庁舎であるヴェッキオ宮から直接ピッティ宮殿へ来れるような連絡通路、ヴァザーリの回廊をヴェッキオ橋の上に造りました。この回廊は小さな車が通ることもできたそうです。
フィレンツェに寄贈されたメディチ家のコレクション
栄華を誇ったメディチ家ですが、フランスやスペインのような大国が台頭してくると、徐々に影響力を失っていきます。第3代大公フェルディナンド1世の治世が、フィレンツェ最後の繁栄の時代でした。7代目最後のメディチ家大公ジャン・ガストーネには子供がなく、ついにメディチ家の家系は後継者がなく断絶してしまうのです。
ジャン・ガストーネの姉アンナ・マリア・ルイザ・ディ・メディチは、子供に恵まれないまま夫と死別した後ピッティ宮殿に戻り、晩年をここで暮らしました。最後のメディチ家の後継者となった彼女は、メディチ家の芸術品はフィレンツェで一般公開されることを条件に、トスカーナ政府にすべて寄贈することを遺言で残しました。こうしてコレクションが散逸することなく、フィレンツェに残ることができたのです。
その後、ピッティ宮殿の住人は、一時期フランスのブルボン家とナポレオンのボナパルト家の期間を除いて、トスカーナ大公国を継承したハプスブルグ・ロレーナ家となります。
そして1860年トスカーナ大公国は、国民投票によりイタリアを統一したサヴォイア家に併合されます。1871年にローマがイタリア王国の首都となるまでの7年間、フィレンツェがイタリアの首都となり、ピッティ宮殿はサヴォイア家の王宮としての役割を果たします。
ラファエロの充実したコレクション必見パラティーナ美術館
ピッティ宮殿の中でも、ピエトロ・ダ・コルトーナによる美しいフレスコ画が施された28室に、ほぼ当時のままに名作が展示されたパラティーナ美術館(GALLERIA PALATINA、ガッレリーア・パラティーナ)。フィレンツェの芸術のパトロンだったメディチ家のコレクションが主流なだけに、ルネッサンス後期、バロック時代の世界有数のコレクション500点以上が展示されています。
特に見どころは、ウルビーノ公国最後の後継者だった第5代トスカーナ大公妃がもたらしたラファエッロ、ティッツィアーノの作品です。特にラファエロの「小椅子の聖母」、ティツィアーノの「懺悔するマグダラのマリア」は必見です。
どの部屋も壁一面に名作が所狭しと並んでいるので、事前に見たい絵はチェックすることをおすすめします。また家具などの室内の調度品も一級品が並んでいます。お見逃しなく。
フィレンツェの美しいパノラマが楽しめるボーボリ公園
総面積45,000㎡もある巨大な庭園、ボーボリ公園。美しいイタリア式庭園には、円形劇場、洞窟、噴水、湖、ヴァザーリの回廊の出入り口、そしてベルベデーレの要塞、銀器博物館、馬車博物館などの博物館など、さまざまな建物が立ち並び、見どころが盛りだくさんです。
自然の丘を利用して造られたボーボリ公園は、かなり傾斜がありますが、その分美しいフィレンツェのパノラマを楽しむことができます。特におすすめは、ミント色をしたロココスタイルの建物コーヒーハウスです。1700年代にヨーロッパの宮廷で流行ったコーヒーとチョコレートを楽しむための建物として建てられました。現在は残念ながら中には入れないのですが、ここからのフィレンツェの眺めは格別です。
また園内に置かれた彫刻は、古代ローマ時代のものから現代アートまで揃っていて、まさに屋根のない自然の中の美術館と言った様相で、普通の庭園とは全く規模の大きさが違います。とにかく広いので、歩きやすい靴を履いていくことをお勧めします。
近代のモードの変遷が楽しめる衣装美術館
ピッティ宮殿の南側、ボーボリ公園に面して衣装美術館(MUSEO DELLA MODA E CSTUME)があります。1776年大公ピエトロ・レオポルド・ディ・ロレーナが建てた建物の14室に、18世紀から20世紀初頭までの貴族の衣装や下着、アクセサリーなどを展示しています。家具などの調度品は、イタリア国王ヴィットリオ・エマヌエーレ2世時代の家具などの調度品も必見です。
展示は2年ごとに入れ替えられ、さまざまなモードに関する特別展も開かれ、現在の流行にも応じています。毎年1月と6月に世界中からバイヤーが集まる有名な男性ファッションの展示会ピッティ・イマジネ・ウオモは、バッソ要塞がメイン会場ですが、ピッティ宮殿のボーボリ公園でも別会場として繰り広げられるように、モードと関連が深いのです。
パラティーナ美術館やボボリ公園の大きさに比べると、こじんまりしていて、ホッとできる博物館です。
ピッティ宮殿の入場券は、宮殿を中心としたチケットと、庭園を中心としたチケットの2種類があります。両方を一日で見学する場合には、夏期を除いて庭園のほうが閉館時間が早いので、先に庭園を見学することをお勧めします。
ゆっくり見て回ると一日はかかる大きい宮殿ですが、パラティーナ美術館だけでも十分みる価値ありです。ウフィッツィのように予約しなくても入れるので絶対におすすめです。
PALAZZO PITTI(パラッツィオ・ピッティ)
住所:PIAZZA DEI PITTI,1
宮殿共通券
・パラティーナ美術館(GALLERIA PALATINA、ガッレリーア・パラティーナ)、
・王宮(APARTAMENTI REALI、アッパルタメント・レアーレ)、
・近代美術館(GALLERIA D’ARTE MDERNA、ガッレリーア・ダルテ・モデルナ)
開館時間:8時15分~18時50分、入館は45分前まで
定休日:月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
料金:8.5EURO
ボーボリ庭園共通券
・ボーボリ庭園(GIARDINO DI BOBOLI、ジャルディーノ・ディ・ボーボリ)
・バルディーニ庭園(GIARDINO BARDINI、ジャルディーノ・バルディーニ)
・銀美術館(MUSEO DEGLI ARGENTI、ムゼオ・デリ・アルジェント)
・陶磁器美術館(MUSEO DELLE PORCELLANA、ムゼオ・デッレ・ポルチェーラナ)
・衣装美術館(MUSEO DEL MODA E COSTUME、ムゼオ・デル・モーダ・エ・コストゥーメ)
開館時間:1月、2月、11月、12月8時30分~16時30分
3月(最終土曜まで)、10月(最終日曜以降)8時30分~17時30分
3月(最終日曜以降)4月、5月、9月、10月(最終土曜まで)8時30分~18時30分
6月、7月、8月8時30分~18時30分
定休日:毎月第1と最終の月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
料金:7EURO
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