珠玉のプライベートコレクション満載のドーリア・パンフィーリ美術館(GALLERIA DORIA PAMPHILI)

ローマ

ローマの中心コルソ通りに面した重厚な宮殿内にある美術館は、ローマの名門貴族ドーリア・パンフィーリ家所有のプライベートコレクションです。広い宮殿内の一部を美術館として一般に開放していますが、17世紀中ごろにローマ法王インノケンティウス10世(INNOCENZO X、インノチェンツォ・デーチモ)を排出したドーリア・パンフィーリ家の人々はいまだにこの宮殿に住んでいるので、あたかも、貴族のお屋敷を訪問しているような感覚にとらわれます。カラヴァッジョの名作をはじめとする粒よりの名作が揃うドーリア・パンフィーリ美術館をご紹介します。

 

インノケンティウス10世とドーリア・パンフィーリ家

 

ドーリア・パンフィーリ宮殿を所有している一族は、1644年にウルバヌス8世の後ローマ法王の座についたインノケンティウス10世こと、ジョヴァンニ・バッティスタ・パンフィーリの末裔です。インノケンティウス10世は、もともと父方の祖父が法王アッレサンドロ6世の庶子ルクレッツィア・ボルジアと政略結婚をしたというほどの中世から続く有力貴族であったパンフィーリ家を、法王という立場を利用してさらに発展させることに尽くしました。

インノケンティウス10世は法王の地位につくと、まず前法王のバルベリーニ一族を弾圧しライヴァルの勢力を消し去る対策を取ったというのですから、当時のキリスト教会の法王の立場というものが、聖職者というよりも王様のようであったことがわかります。

またインノケンティウス10世も、芸術活動の良きパトロンとしてベルニーニやッボッロミーニをはじめとするバロック時代の芸術家の保護に努め、ナヴォーナ広場の四大陸の噴水をはじめとする見事な芸術作品の数々を現在に残してくれました。

18世紀中ごろにローマ直系の子孫が絶え、現在はジェノヴァ貴族ドーリア家と結婚した一族の傍系であるドーリア・パンフィーリ家が相続しています。

 

ローマの目抜き通りを飾る壮大なドーリア・パンフィーリ宮殿

 

コルソ通りに面したドーリア・パンフィーリ宮殿は、一等地にありながら飛びぬけて大きく、ローマのプライベートな宮殿の中で最も大きい宮殿です。実際いくつかのヨーロッパの本物の王宮よりも大きいというドーリア・パンフィーリ宮殿は、現在でもまさしく王宮レベルの威風を誇っています。今でも有力貴族ドーリア・パンフィーリ家の館としての役割を果たしつつ、十分な規模の美術館を併設できているのがうなずけます。

もともとの建物は、ミケランジェロのパトロンだった法王ユリウス2世を排出したデッラ・ローヴェレ家によって1400年代に建てられ、その後は法王クレメンテ8世のアルドブランディーニ家が所有していましたが、オリンピア・アルドブランディーニがインノケンティウス10世の甥カミッロ・パンフィーリと再婚した際の持参金のひとつがパンフィーリ宮殿で、パンフィーリ家の手にわたり現在に至ります。

パンフィーリ家は一族にふさわしい代表的な建物とするために、周りの建物を買い取って拡張工事をおこないました。

 

静寂な回廊にある優雅な本屋とティールーム

 

コルソ通りに面した入口から中へ入ると、まず右手に、いかにもという重厚な雰囲気の小さな本屋があります。チケットがなくても本屋のみの利用ができるので覗いてみてください。左手には美しい回廊が広がっていて、中央にはオレンジがたわわに実る木で囲まれた中庭の中央に小さな噴水があります。

回廊には写真を撮る観光客の姿も多いのですが、コルソ通りの車の喧騒がウソのような静寂な空間です。そのまま回廊に沿って奥に進むとティールームがあります。コーヒーやケーキ、サンドイッチのほかパスタなどもそろっているので、美術館へ入らなくてもランチやお茶に利用できます。

素晴らしい貴族のお宅拝見

 

ドーリア・パンフィーリ美術館はオーディオガイドが料金に含まれていて、現在の直系の子孫であるジョナサン・ドーリア・パンフィーリが自身の思い出とともに宮殿の説明をしてくれます。そのため美術館というよりお屋敷を訪問しているような錯覚をしてしまいます。(残念ながら日本語版はありません。)

美術館の入り口は、回廊のある中庭を抜けて、奥の大きな階段をのぼったところにあります。まず宮殿の大広間、そして音楽隊のスペースのある舞踏会の間やカルロ・フォンターナがてがけた本格的な礼拝堂などをまわります。どの部屋も絹や織物でできた壁紙や当時のれんがの床など、興味深いしつらえが見られます。天井まで美しい絵が飾り立てられていて、当時の繁栄ぶりが手に取るようにわかります。

絵画ギャラリーの中にある鏡の間も、ベルサイユ宮殿を模したと言われる美しいスペースです。たくさんの鏡、窓、絵画、大理石の彫刻に並んで、真ん中に飾られているのがベラスケスが描いた名作「インノケンティウス10世の肖像」です。画面の奥からこちらを見据える法王の厳しいまなざしに、思わず身がすくんでしまいます。人間の内面を冷徹に描き上げることで定評があったベラスケスは、ローマ滞在中に法王からどんなインスピレーションを受けたのでしょうか。

16、17世紀の傑作を中心とした絵画ギャラリーの見所

 

有名なボルゲーゼ美術館にも負けるとも劣らずの名作をそろえているプライベートコレクション。余談ですが、前述したオリンピア・アルドブランディーニは15歳の時にパオロ・ボルゲーゼと結婚しています。カミッロ・パンフィーリの結婚の際に持参したのは宮殿だけでなく美術品も含まれていたそうですから、ローマのお宝は法王一族間の結婚によって、あちこちの貴族の手を渡り歩いていたのでしょう。

絵画ギャラリーに入ると、まずベルニーニによる「インノケンティウス10世の彫像」が迎えてくれます。こちらは肖像画より若く、毅然としたスマートな印象です。続いて夥しい数の名画がギャラリーの壁一面に所狭しと並んでいるので、1枚1枚見ていくのが大変なほどです。

この美術館で最も有名なのはカラヴァッジョの3作品です。「エジプトの逃避途上の休息」、「マグダラのマリア」、「洗礼者ヨハネ」が揃って並んでいます。カラバッジョとの対比をなすアンニーバレ・カラッチの「エジプトの逃避途上の休息」も必見です。また、ラファエッロの「二人の紳士の肖像画」、フィリッポ・リッピの「受胎告知」、ティッツィアーノの「洗礼者ヨハネの首を持つサロメ」も見逃せません。

グエルチーノ、ドミニキーノ、パルミジャーノ、グイドレーニ、ロレンツォ・ロットなどのイタリア絵画から、メムリンクなどのフランドル絵画まで多数揃っている充実のコレクションなので、見学には十分な時間をかけることをお勧めします。

 

ドーリア・パンフィーリ美術館(GALLERIA DORIA PAMPHILI

住所:VIA DEL CORSO 305

開館時間:9時~19時(チケット売り場は18時まで)、元旦、復活祭、12月25日休み

料金:大人12EURO、小人(6~18歳)8EURO

http://www.doriapamphilj.it/roma/en/

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