イタリアでは、しょっちゅう連れ立ってコーヒーを飲みに行く機会があります。ところが、エスプレッソコーヒーの割り勘をしないのがイタリア人。毎回顔ぶれが違うので、不公平だとは思わないのがイタリア人。どうやら、日本人に比べてかなり大雑把な金銭感覚を持っているようです。現在では、日本の約1円に相当する硬貨を、廃止する方向で進んでいます。スーパーだって日常的に勝手に四捨五入をする習慣があるので、正式に一斉に四捨五入してしまう方が、効率が良いと考える不思議な国民性をご紹介します。
コーヒーやジェラートでは割り勘はしないイタリア人
イタリア人が大好きなBAR。誰かに会うと、必ずと言っていいほどエスプレッソを飲みに立ち寄る習慣なのに、割り勘をする習慣がほとんどないのがイタリアです。4,5人でBARで何かを飲んだりする場合でも、イタリアでは誰かがまとめて払う習慣です。毎回顔ぶれが違う仲間でも、「いいから、いいから、今日は私」というふうに、必ず誰かが言い出すのです。
日本なら、気を使って同じものを注文しそうなところですが、それぞれ自分の好みのものを注文するのもイタリア人ならではです。
ジェラートくらいでも、大抵誰かがまとめて払います。割り勘のほうがすっきりしていいのに、と日本人としては思うのですが、まず、割り勘はしないのがイタリア人です。
BARでチップはいくら払う?
イタリアで困ることのひとつに、チップがあります。ガイドブックでチップの払い方が書いてありますが、日本で払う習慣がないので、今一つなじめないのが本音ですね。
そもそもチップとは、日本にもあった心づけ。サービスを受けることのできる環境にいる人が、サービスする側への心づけ。特に若くて頑張っている人に、エールを送る意味もあるのがチップです。また、チップを渡してくれる人に、頑張ってサービスするのが人情です。特別なサービスをしてもらったお礼に、特別なサービスをしてもらうために、チップは役立つのです。
チップの金額だって、決まりはありません。余裕のある人はたくさん、ない人はそれなりに。同じ1杯1ユーロのエスプレッソコーヒーを飲んでも、1ユーロきっちり払う人もいれば、1.1ユーロ払う人、1.5ユーロ払う人だっていることになります。そう思うと、定価だってあってないようなもの。どんぶり勘定そのものです。
高いものを食べたもの勝ち!イタリアの割り勘
日本の居酒屋にあたるピザ屋、ピッツェリーア。大勢で食事の時は、必ずピッツェリーアに集まります。居酒屋なら、みんなで注文して少しづつ取り分けて食べますが、ピザ屋では、基本的にそれぞれが注文して、自分の注文したピザを食べます。
大ジョッキのビールを飲む人、コカ・コーラを飲む人、お水でいい人。前菜をいろいろ頼む人、前菜はいらない人。シンプルなピザだけ食べた人、具だくさんのピザを食べた人。デザートを頼む人、頼まない人。個人の好みがはっきりしているので、それぞれ別々です。ところが、大勢だと支払いは、均等に割り勘になります。
日本なら、1人1人食べたものを申告して、それぞれレジで支払うところです。恐らく、大勢の食べた分を、それぞれ計算して精算するという作業が、イタリア人には恐ろしく面倒くさいのでしょう。
大勢でピッツェリーアで食事した時に、「小麦アレルギーだからピザの代わりにステーキ」を注文した人と出くわしたことがあります。ピザの3倍はする注文にもかかわらず、やっぱり均等に割り勘でした。こういうところ、イタリア人はきわめて寛大です。
スーパーのおつりは四捨五入!
イタリア人のどんぶり勘定は、スーパーで顕著です。日本のように、レジが進化していないので、ほとんどのスーパーで、今でも毎回、レジの係りの人が数えてお釣りをくれます。ところが、イタリアでは、お店の人が開店前に銀行で小銭を用意する習慣がないので、レジの中にお釣りの小銭が不足するのは日常茶飯事です。
スーパーで支払うときに、お札を出すと小銭はないかと聞かれることは、いつものことですが、いいよ足りないと1桁の小銭は四捨五入することがあります。たとえば、8チェンテージミのお釣りを渡す代わりに、10チェンテージミを渡されることがあるかと思えば、1チェンテージミのお釣りをもらえるはずなのに、あっさり「小銭がないからごめんね」と何も渡してくれないこともあります。
よく行くお店だと、持ち合わせの小銭を全部足しても1ユーロ近く足りない場合でも、「お札だとお釣りがないから、今度でいいわ。あるだけ小銭ちょうだい」、という場合もよくあります。特に金額や名前を書き留めるわけでもありません。きちんと払った場合と同じ対応です。足りなかった分を、翌日返しに行くと、「持ってきてくれてありがとう」と、レジにそのまま投入します。
レジの係りが、勝手に四捨五入するから、夕方レジの収支は合わないと思うのだけど、問題はないのか、こちらが心配してしまいます。
1円玉や2円玉はお金じゃない!めんどうくさい小銭たち
現在はEU共通通貨ユーロを使っているイタリアですが、発足前はイタリアリラという通貨がありました。イタリアリラはユーロに比べて金額が大きく、発足当時、日本の約100円に相当する1ユーロコインが、2000リーレというお札に相当し、流通していた最小コインが500リーレ、現在の25チェンテージミでした。
ユーロになった当初から、小銭を使う習慣がなかったイタリア人に極めて評判が悪かったのが、チェンテージモ硬貨。特に、日本円の約1円に当たる1チェンテージモ硬貨、2チェンテージモ硬貨はお金じゃない、という態度でした。
これらの硬貨は、日本の10円玉のような地味な色合いで、どちらも小さくて見分けがつきにくい、という決定的な欠点があります。特に、お年寄りには敵視される存在でした。
巷で盛んだった1チェンテージモ硬貨、2チェンテージモ硬貨の廃止論は、年々ヒートアップを続け、2018年より本当に廃止してしまう方向です。最終的に、最少コインは5チェンテージモになる予定です。
ラッキージンクス!道端でコインを拾える?
イタリアを歩いている時に、よく足元を見て歩いてみましょう。小さなコインが落ちていることがよくあります。特に子供は、よくコインを拾って大喜びしています。実は聞いた話では、暇な老人たちが、誰かを喜ばせようと、余った小銭を道に捨てているのだそうです。真偽のほどは不明ですが、小銭を邪魔にするイタリアならではのエピソードです。
旅行の最後に、余ったコインを道にとしていくのも、一興かもしれません。
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