旅行中その土地をよく知るためには観光地巡りだけではなく、その土地の食事をすることが大切です。食事にはその国々特有の歴史や地理、文化、そして国民性までが反映されているからです。特に食に対してこだわりの強いイタリアに来たのなら、絶対おいしい食事を堪能してほしいものです。特にレストランで地元の人が食べる様子を観察するのも、その土地を知る助けになり興味深いものです。ここではイタリア人のレストランの楽しみ方、マナーについてご案内します。
イタリアのレストラン(リストランテ、トラットリア、オステリア)
食事をする場所は、いろんな種類があるけれど、ゆっくり座って美味しい食事を楽しみたいのなら、やっぱりレストランへ行きたいものです。ガイドブックには、高級なレストランはリストランテ(RISTRANTE)、家庭料理がメインの大衆的な食堂がトラットリア(TRATTORIA)、そして居酒屋に値するのがオステリア(OSTERIA)の3種類があると書いてありますが厳格な区分はありません。トラットリアと書いてあっても行ってみると意外に高級だったり、レストランとあってもくだけたところもあるので、あまり名称にはこだわらないほうがいいでしょう。
イタリアのいわゆるレストランは、お店の前に必ずメニューを提示していますので、あまり恥ずかしがらずに、料金、メニューを確認してから入りましょう。イタリアの有名な観光地はどこもかなり料金が高めです。東京とあまり変わらない値段か、レートの状態によって東京より高い場合も多いです。一方、量は日本より多い場合が多いのでご注意ください。
海辺の街でもない観光地にあるレストランで魚料理が食べたい場合は、新鮮な魚を店の前のショーケースに入れているようなところをお勧めします。値段は通常高めですが、新鮮さを確認したほうがいいですね。
予約は必要?
ガイドブックにも載っているような有名店、特に観光地であれば予約をお勧めします。有名なお店なら予約の英語は通じるので、電話をして人数と時間を英語でいうほうが安心です。予約が可能な場合、聞かれるのは名まえのみで電話番号などを聞かれることもまずありません。ただイタリアのレストランは電話に出るのがとても遅いです。お昼の時間の後、夕食までの時間、中休みを取るレストランも多いので、電話をするタイミングが少し難しいかもしれません。
もし予約をするのが気に進まないなら、開店と同時くらいの早めの時間に行きましょう。イタリア人の食事の時間は日本より遅めなので、昼食なら13時前、夕食なら20時前であれば予約なしでも割と簡単に入れると思います。
お店に入ったら
レストランもショッピングの時と同じで、お店のドアを開けて入ったところで立ち止まって、挨拶をしましょう。昼なら「「ボン・ジョルノ(BUON GIORNO)」夜なら「ブオナ・セーラ(BUONA SERA)」です。予約をしているかどうか(PRENOTATO、プレノタート)と聞かれるので、SI かNOで答えます。予約している場合は名前を告げます。
そのあと、必ず人数を聞かれるので、指で人数を示します。レストランによっては、レストランの中か(DENTRO、デントロ)中庭やお店の前にある外のテーブル(FUORI、フオリ)がよいか聞かれます。イタリアも店内は禁煙ですが、外のテーブルは喫煙可能になっています。
給仕係(CAMERIERE、カメリエレ)が付いてくるように合図をするので、後をついて行き指示された席に座ります。勝手に奥の方へどんどん入っていくのはマナー違反です。
テーブルについたら
レストランによっては英語のメニューがあるところも多いので、日本人には英語メニューを渡してくれるところもあります。メニューはイタリア語では「メヌー」と発音し、語尾にアクセントが付きます。日本語メニューがあるかどうか、「メヌー・ジャッポネーゼ?」と聞いてみてもいいでしょう。
メニューを渡されるとすぐに「飲み物は?(DA BERE、ダ・ベーレ)」と聞かれるので、まずは水を軟水か硬水かで注文してしまいましょう。水は通常1ℓサイズのみのことが多いので、メニューを見る必要はあまりありません。硬水(ACQUA FRIZZANTE、アクア・フリッザンテ)か軟水(ACQUA NATURALE、アクア・ナトゥラーレ)かを言いましょう。特に混んでいる店だと給仕係りがなかなか注文に来てくれないので、分かっていることはすぐにお願いしたほうが早いです。
テーブルにつくと、メニューと一緒に頼んでいないのにパンの入ったかごをすぐに持ってきてくれることが多いです。このパンは食べても食べなくても席料(COPERTO、コペルトとして料金に計上されます。
イタリア料理のメニュー構成
メニューを開くと、まずは前菜(ANTIPASTO,アンティパスト)そして、パスタやリゾットである第1の皿(PRIMO PIATTO、プリモ・ピアット)、お肉やお魚などのメインディッシュである第2の皿(SECONDO PIATTO、セコンド・ピアット)、メインディッシュの付け合わせになる野菜料理(CONTORNO、コントルノ)、そのあとにデザート(DOLCE、ドルチェ)と続きます。最後にはコーヒーや水、アルコールなどの飲み物がありますが、高級なレストランであれば、ワインリストが別になっているでしょう。
前菜、第一の皿、第二の皿、付け合わせ、デザートとフルコースで頼む必要はありません。ただ、イタリア人にとってレストランではゆっくり食事をたっぷり楽しみたいときに行くものなので、パスタだけという食べ方はあまりしません。パスタのみ人数分で1つだけ前菜やメインを頼んでもいいでしょう。イタリア人はレストランで分け合って食べる習慣がないので、頼まないと小皿を持ってきてくれないことがほとんどです。
また、観光地のレストランでは観光客用メニュー(MENU TURISTICO、メニュー・トゥーリスティコ)というセットメニューを用意しているところもあります。セットメニューは出てくるのも早く料金もかなり安いのですが、味はそれなりのところがほとんどです。
きちんとしたレストランの場合、それぞれのテーブルを担当する給仕係が決まっています。何か頼みたいことがあるときも、担当の給仕係に頼むシステムになっているので、手が空いていそうな人に頼んでも待つように言われてしまいます。混んでいるレストランでは、何か一つ聞くだけでもかなり時間がかかります。
イタリア人は、最初に食事だけ注文し、食事が終わってからデザートを注文する場合が多いので、食事が終わると「DOLCE?」または「CAFFE?」と聞かれることが多いです。いらない場合は、「NO GRAZIE」と断りましょう。また、イタリアでは食後に強いリキュールである食後酒(DIGESTIVO、ディジェスティーヴォ)を飲んで、消化を助け口の中をさっぱりさせる習慣があります。お酒に強い人は挑戦してみるといいでしょう。小さなグラスでクイット一息に飲み干します。
会計の仕方
基本的には、テーブルでの会計になります。食べ終わったら、担当の給仕係に会計を頼んでレシートを持ってきてもらいます。手でサインをするジェスチャーをすると、すぐにわかってもらえます。最近はレシートも印刷されていて読みやすいので注文内容をきちんと確認しましょう。税金は内税なので、もし追加してあるとすれば席料のみです。本来は席料も法律では禁止されているのですが、いまだにほとんどのレストランで計上されています。
現金の場合は、レシートの上に載せてテーブルに置き給仕係を呼びます。お釣りがある場合は、給仕係が後で持ってきてくれます。クレジットカードの場合、イタリアはデビットカードの利用が多いので、クレジットカードであるかどうか確認されます。通常カードをそのまま渡すことはなく席までクレジットカードの機械を持ってきてもらうか、レジまで暗証番号を押しに行くことがあります。
チップは、担当の給仕係のサービスの度合いに対して10~20%の範囲でテーブルに残します。サービス料が計上されていた場合は特にチップを残す必要はありません。
帰るときは、給仕係にチップを置いていることを示し、お店の人たちに挨拶をして出ていきましょう。
イタリア人はレストランでは、食べるだけではなく、同席している人との会話をも楽しみに来ているので、かなり食事に時間がかかります。給仕係もそのつもりでゆっくりサービスをするので、日本人にとってはイライラすることも残念ながら多いはずです。しかし、せっかくイタリアのレストランにいるのだから、出来るだけ時間を気にせずに大らかな気持ちで楽しんでくださいね。
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