ローマの旧市街地のちょうど真ん中にあるヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂。特に頂上にある勝利の女神が率いるブロンズの騎馬像は、ローマ中心地のどこからでもよく見え、まさしくローマのランドマークです。
真っ白な大理石が美しく、近くで見ると迫力満点の威厳を誇る巨大な記念堂は、入場料無料でローマ市内全体のパノラマも楽しめるお得なモニュメントです。実はパノラマを楽しむだけではなく、イタリアの祖国の祭壇としても歴史的な意義を持つ記念堂です。ここではあまり知られていないイタリアの近代の歴史を含めてご紹介いたします。
イタリア国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世
中世以降、中部のローマ教皇領と多くの都市国家、外国の王に支配されていたナポリ、シチリア王国に分かれていたイタリア半島。18世紀にナポレオンの支配を受けイタリアにも統一、独立の運動が起こります。
紆余曲折を経てイタリア半島を統一し、イタリア王国を成立させたのが、ヴィットリオ・エマヌエーレ2世(VITTORIO EMANUELE II)です。もともと現在フランス領のニースやサヴォイア、ピエモンテ地方やサルデーニャ島を領有したサヴォイア王国の王さまでした。
彼の偉業を称え「祖国の父」という尊称まであたえられたヴィットリオ・エマヌエーレ2世ですが、その孫ヴィットリオ・エマヌエーレ3世は、第2次世界大戦後半、国内でもクーデターが起きると、イタリア国民を残して逃亡するという恐るべき背信行為を行います。
第2次世界大戦後行われた国民投票で王党派は敗れ、イタリア王国はわずか4代85年で幕を閉じ、サヴォイア家は国外追放となりました。現在、イタリアへの入国が許されたサヴォイア家の直系の子孫は、タレントとしてテレビなどに出演しています。
ヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂
2代目イタリア王ウンベルト1世が、1885年から26年もかけて建設したヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂。通常イタリア人の間では、略してヴィットリアーノ(VITTORIANO)と呼ばれます。
コンクールで選ばれたジュゼッペ・サッコーニのプランは、古代ギリシアの神殿を意識したスタイルで、寓意のあるたくさんの彫刻を用いています。この建物は大理石でできているので、石灰華を使ったローマのほかの建物に比べてかなり白さが強調されています。完成当時から、入れ歯やウエディングケーキなどと呼ばれ、あまり地元では評判がよくありませんでした。
人気がなかったのは、ローマの中心カンピドリオのあるこの地区に巨大なモニュメントを作るために、歴史のある数多くの建物が壊され、隣にある由緒あるアラチェリ教会の一部も破壊されたという理由もあるのでしょう。また、ローマ法王を頂点としてきたローマの人にとって、北イタリア出身の王様のイタリア統一はローマの敗北を意味するのです。
中央のブロンズの騎馬像はヴィットリオ・エマヌエーレ2世像ですが。世界有数の大きさを誇っています。全体が大きいのであまり目立ちませんが、10m×12mもあり、馬のお腹には20人の人が座って食事ができるほど大きいと言われます。
騎馬像の台座には、イタリアの主要都市を表す寓意像が彫られ、その下のローマの女神の両脇には「労働の勝利」、「祖国愛」を表す浮彫のパネルが左右に飾られています。
ローマのパノラマを一望できる展望台
巨大モニュメント、ヴィットリアーノは高さが80mもあります。ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世像の辺りまで昇ると、真ん前にコルソ通りがまっすぐ通っている様子が見えます。さらに騎馬像の両脇の階段を昇っていくと、16本の柱がある巨大な柱廊の前の広いスペースに出ます。この柱廊には、イタリアの各州のシンボル像が並んでいます。
西側の建物のドアから中を通り抜けると、遠くにはサン・ピエトロ大聖堂のクーポラをはじめとするローマのパノラマが見えます。アラチェリ教会を見ながら建物の後ろ側をまわると、ちょうど中ほどに展望台のエレベーターがあります。この展望台は有料ですが、ここから眺めるローマの景色は格別です。
エレベーターの前をさらに進むと、フォーリ・インペリアーレ、コロッセオなどが見渡せる東側に出ます。この高さまで来ると、ローマならではの独特の美しいパノラマが一望に広がります。
展望エレベーター、ASCENSORI PANORAMICI(アッシェンソーリ・パノラミチ)
営業時間:9時30分~19時30分、チケット売り場は閉館の45分まえまで
休み:12月25日、1月1日
料金:7EURO、割引3.5EURO(10歳から18歳)、9歳以下無料
常に聖なる火で祀られている無名戦士の墓
正面中央のヴィットリオ・エマヌエーレ2世の騎馬像の下にあるローマの女神像。さらにその下、正面階段をのぼり切ったところに無名戦士の墓があります。
第1次世界大戦中に激しい戦いで戦死し、身元がわからない1人の兵士の墓です。この墓は、犠牲になったすべての兵士を代表するものとして祀られています。365日24時間、常に、祖国の聖なる火が灯され、両脇を見張りの兵士が2名警備しています。時折、衛兵交代の儀式を行う様子を見ることができます。
サヴォイア家の偉業を記念するのモニュメントが、第1次世界大戦後にこの無名戦士の墓が置かれたことによって、イタリア統一や自由と言う意味合いが強調されました。このモニュメントは、通称、祖国の祭壇(ALTARE DI PATRIA、アルターレ・ディ・パートリア)とも呼ばれますが、まさに統一のシンボルとなりました。
毎年、国民投票が行われた6月2日は祝日「イタリア共和国記念日」で、イタリア大統領が、この無名戦士の墓に月桂樹の冠を奉げて祝典が始まります。
イタリア統一の歴史!リソルジメント博物館
巨大なモニュメントの左側に位置するリソルジメント博物館。イタリアが統一された後、一時期首都がトリノに置かれていましたが、1871年ローマがイタリア王国の首都になった100周年を記念して、1970年10月2日にオープンした博物館です。
ここはナポレオンに支配された700年代の後半から始まるイタリア国家統一運動、そして第一次世界大戦までのイタリアがわかる博物館です。日本ではあまりなじみのないヨーロッパの近代史ですが、この博物館では当時のイタリア人の生活も含め比較的わかりやすく展示しています。
イタリア統一戦争や第一次世界大戦で使われた国旗や制服、さまざまな武器をはじめ、イタリア統一の立役者となったマッツィーニやガリバルディが奥さんに送った手紙や、戦争中に着ていたジーンズなど、多様な展示物があり興味深く見てまわれます。ガリバルディが足を撃たれたときに時に履いていた銃弾の穴のあるブーツまで置いています。
MUSEO CENTRALE DEL RISORGIMENTO DI ROMA(ムセオ・チェントラーレ・デル・リソルジメント・ディ・ローマ)
住所:VIA DI SAN PIETRO IN CARCERE
開館時間:9時30分~18時30分、入場は閉館の45分前まで
休み:毎月第1火曜日、12月25日、1月1日
入場料:5EURO
ローマのランドマークであるヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂。ローマについたらまずこのモニュメントに上って、ローマの全体像を把握してから観光を始めることをおすすめします。
IL MONUMENTO NAZIONALE A VITTORIO EMANUELE II(イル・モニュメント・ナツィオナーレ・ア・ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世)
住所:PIAZZA VENEZIA
開館時間:9時~19時30分、入場は45分前まで
休み:1月1日、12月25日、毎月第1火曜日
入場料:無料
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