なんといっても、世界で一番有名な礼拝堂。ミケランジェロをはじめとするフレスコ画が有名なので、ここでしか見ることができない唯一無比の傑作です。広くて迷いやすい美術館も、システィーナ礼拝堂への順路は必ずあちこちに出ているので、時間がない場合は、ここを目指して進みましょう。ここだけでも、見どころが満載の貴重な芸術作品の宝庫です。
システィーナ礼拝堂
1481年からシクトゥス4世によって建立され、その法王の名にちなんでシスティーナと名付けられた礼拝堂は、コンクラーヴェ(CONCLAVE)というローマ法王選出の際に使われる神聖な場所で、法王のための特別な典礼や儀式が行われる特別なものです。縦40.5m、横13.2m、高さ20.7mという貴重なフレスコ画でおおわれた礼拝堂は、長い歳月のうちに損傷が激しかったのですが、1980年から1994年にかけて、日本テレビが420万ドルという資金提供を行い、歴史に残る大修復を行い、現在は当時の鮮やかな色合いが楽しむことができます。ただ、日本テレビが独占撮影権を所有しているため、内部の写真撮影は禁止されています。
1.南北の壁画
ミケランジェロにばかり目がいきがちですが、礼拝堂の両側には、15世紀後半の一流のルネッサンス画家であるギルランダイオ、ペルジーノ、ボッティチェッリなどが聖書の世界を描いています。祭壇に向かって右が旧約聖書の「モーゼ伝」、左側が新約聖書の「キリスト伝」がそれぞれ6枚ずつ描かれています。左右のエピソードは、それぞれが対になっていて、選ばれた民を導くモーゼと新たな教えの導き手のキリストが対比されています。ゆっくり比べてみると、とても興味深いです。
このキリストの権力が、聖ペトロとそれに続く法王へと渡されていくというのがメッセージで、壁画の上部には、キリスト、聖ペトロをはじめとした初代キリスト教の法王たちの像が描かれています。法王たちに与えられた権力の完全さを主張しているのです。
2.ミケランジェロの天井画(AFFRESCHI DI MICHERANGELO)
当初は星の散りばめられた夜空を描いていた天井に、完成後まもなく亀裂が走り安全性の問題が出てきたため、ユリウス2世が、お気に入りの芸術家であるミケランジェロにフレスコ画を依頼します。ところが、ミケランジェロはそれまで絵画は全く手掛けたことがなく、しかも、当のユリウス2世の墓碑を製作中だったため、法王の依頼を拒否したというのです。
度重なる法王の説得についに折れて1508年から4年かけて完成させたといういわくつきだというのに、世界で一番有名な天井画として、500年近くたった現在でも世界中の人を虜にしています。しかも、当時この礼拝堂は日常的に典礼や儀式が行われていたので、それを邪魔しないような足場を組みながら作業したというのですからミケランジェロの天才ぶりに目を見張ること間違いなしです。
中央には聖書の物語が「光と闇の分離」から9枚ならび、その両脇には聖書の預言者や巫女が、そして、天井と壁の窓のある部分を繋ぐ場所には「キリストの祖先」たちなどの人物像が、鮮やかな色彩と彫刻を思わせる立体感あふれる様子で生き生きと描かれています。800㎡もある天井画を見学するにはオペラグラスを持参すると便利です。
3.最後の審判「GIUDIZIO UNIVERSALE、ジュディッツィオ・ウニヴェルサーレ」
天井画から20年以上、ミケランジェロも60歳を過ぎた1536年~1541年に描かれたのが世にも有名な最後の審判です。13m×14.5mものフレスコ画、構図の研究など準備も含め完成まで5年以上費やしています。
当時は、キリスト教会の腐敗や堕落に対し宗教改革の嵐が吹き荒れており、ミケランジェロも、地上最後の日を怒れるキリストの裁きという、現実に対する批判と苦悩を表したと言われています。画面ほぼ中央に見られるキリストの足元にいる聖バルトロメオがかかげる人間の皮のような顔はミケランジェロ自身の自画像だというのも、彼の怒りを表しているのでしょう。
このフレスコ画は、ルネッサンス時代の先駆者であり、イタリア文学最大の詩人であるダンテ・アリギエーリの「神曲」を題材にしているといわれています。「地獄」、『煉獄』、「天国」の三部構成となっているこの超一流の文学作品は、「最後の審判」をより深く楽しむために、この機会に読んでみるとより楽しめること間違いなしです。
ヴァチカン美術館で緑を楽しみながら庭園で一休み
偉大な芸術の鑑賞に疲れたら、天気の良い日は庭園で一休みしませんか?歴代法王の住居であったヴァチカン美術館は、巨大な複合建築のあちこちに緑豊かな中庭が設計されています。
入り口すぐ右側の絵画館の入り口前の中庭(CORTILE DELLA PINACOTECA、コルティーレ・デッラ・ピナコテーカ)からは、サン・ピエトロ大聖堂のクーポラが美しくそびえていて、記念写真のベストスポットになっています。そのまま右側の階段を下りていくと、大きなレストランやピザ屋があります。さらに、法王が実際に使用した豪華な馬車が展示されている馬車博物館(PADIGLIONE CARROZZA、パディリオーネ・カロッツァ)のほうへ足を進めると、広い庭園にでます。ここでは、隣のカフェで注文をして、外のテーブルで食事ができるようになっていて、たくさんの観光客が日光浴をしながらくつろいでいます。
また、入り口から左側へ行くとピーニャの中庭(CORTILE DELLA PIGNA、コルティーレ・デッラ・ピーニャ)があります。この名前の由来となる大きな松かさ(PIGNA、ピーニャ)は紀元1世紀頃の噴水の一部で、かつては無数の穴からふんだんに水が噴き出していたといわれます。一方、中庭の中心には、現代の彫刻家アルナルド・ポモドーロ(ARNALDO POMODRO)作の「球体の中の球体(LA SFERA DENTRO LA SFERA、ラ・スフェーラ・デントロ・ラ・スフェーラ)」という彫刻が圧倒的な存在感で鎮座しています。また中庭の片隅にはカフェがあり、そこでお茶を飲みながら一休みするのにうってつけです。
ピーニャの中庭から入る「ピオ・クレメンティーノ美術館(MUSEO PIO-CLEMENTINO)」にある「八角形の中庭(CORTILE OTTAGONE、コルティーレ・オッターゴネ)」も必見です。ヴァチカン美術館の発祥の地であり、美しい噴水と8角形の回廊に囲まれた古代の彫刻群は、まるで異次元に迷い込んだような錯覚にとらわれます。
ヴァチカン市国は、大部分を美しい庭園で占められています。この広大な庭園は、ヴァチカン美術館のチケットとセットでガイド付き見学コースもあります。
・オープンバスによる周遊
所要時間40分(VATICAN GARDENS BY OPENBUS)
チケット代:36EURO、23EURO(6歳~18歳、26歳未満の学生)
・庭園をガイドと歩いての観光
所要時間2時間(VATICAN GARDENS)
チケット代:32EURO、24EURO(6歳~18歳、26歳未満の学生)
ヴァチカン美術館
住所:VIA VATICANO, 100
電話:06.6988.3145
開館時間:9時~18時(最終入場16時まで、また閉館30分前には各展示室から退室)
日曜休み、ただし毎月最終日曜のみ9時~14時(最終入場12時30分)
2016年の休館予定:1月1日、6日、2月11日、22日、3月19日、27日、28日、
5月1日、6月29日、8月15日、11月1日、12月8日、25日、26日
入場料金:16EURO、8EURO(6歳~18歳、または26歳までの学生証持参者)
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