大勢の観光客で賑わっているローマの歴史的地区に疲れた時に、おすすめなのが「水道橋公園」と「カッファレッラ公園」です。公園と言う規模を超えた巨大公園には、美しい緑の木々の中に古代ローマ時代の遺跡があります。観光地ではなく、地元の人の憩いの場である公園なので、市内の喧騒を忘れゆっくりできます。しかも、テルミニ駅から地下鉄のアクセスがよいので、気軽に古代ローマ時代の田園風景にタイムスリップできます。
ローマ時代の水道橋が目印の公園
ローマ時代の水道橋があることで有名な水道橋公園(PARCO DEI ACQUADOTTI、パルコ・ディ・アクアドッティ)。240ヘクタールもの広大な敷地の中に、古代の水道橋が威風堂々とそびえ立つ様は圧巻です。2000年も前の遺跡であるにも関わらず、柵で囲まれていないので触ってみることもできます。現代の人々と過去の遺跡が普通に共存しているので、少し不思議な感覚に襲われます。
最高約27mの高さがある水道橋は、ローマの西側にあるアニエネ川の水源からそれぞれ別々に運ばれてきたクラウディオ水道橋とアニオ・ノブス水道橋が、この公園の辺りで上下に合わせられたものです。両方ともカリグラ帝によって38年に建設が始められ、52年クラウディウス帝の時代に完成しました。それぞれの水道管は幅1.14m、高さ1.75mもある大きなもので、ローマ市民の生活を支える大量の水を運んでいました。この公園には、ローマ時代に造られた6つの水道橋と、ルネッサンスの時代に造られた水道橋も地下に残っています。
歴史を感じながらゆっくりくつろぐ
水道橋公園は、古代ローマ時代の田舎の風景のシンボルとして有名ですが、近所の人が犬を散歩させたり、ジョギングをしたり、ベンチに座って日向ぼっこをしたりする市民の憩いの場所です。週末には大勢の家族連れなどでにぎわいますが、日中は比較的人も少なく静かなので、観光地の喧騒に疲れた時にゆっくりできるおすすめの公園です。
地面の下には本格的なテルマエ・ロマエのある帝政ローマ時代の大きな邸宅ヴィナッチェ荘(VILLA DELLE VIGNACCE)や、100段もの地下への階段の付いた古代ローマ時代のカタコンベ、13世紀の小さな塔が付いた井戸や中世の大きな家の遺跡など、様々なものが地中に眠っています。水道橋を見ながら、地下に埋もれた遺跡のことを考えると、悠久な歴史を実感できます。
テルミニ駅から地下鉄A線で約20分、「GIULIO AGLICOLA(ジュリオ・アグリ―コラ)」駅で降りて、サン・ポリカルポ教会を目指して行くと、徒歩10分弱で緑が広がる公園に到着します。教会の両脇が公園への入り口になっています。教会の左側にはピッツェリアや小さなメリーゴーランドのある子どもの遊園地、そしてブランコや滑り台のある小さな公園もあります。公園の前にはスーパーマーケットやバールなどもあるので、時間を気にせずにリラックした時間を過ごせます。
水道橋公園(PARCO DEGLI ACQUADOTTI、パルコ・デリ・アクアドッティ)
住所:VIA LEMONIA 6
ローマの田舎を体験!カッファレッラ公園
同じ地下鉄A線沿いに、もう1つ遺跡のある大きな公園があります。テルミニ駅から約10分で到着する「COLLI ALBANI(コッリ・アルバーニ)」駅から徒歩5分という便利な場所にあるカッファレッラ公園(PARCO DELLA CAFFARELLA、パルコ・デッラ・カッファレッラ)です。
テヴェレ川の支流であるアルモーネ川が流れる大きな谷を中心に、アッピア旧街道まで広がる132ヘクタールもの巨大な公園です。ローマで最も大きい自然が広がる地域です。公園の中へ降りて行くと、車の騒音の代わりに鳥のさえずりが聞こえ、立ち並ぶ住宅群も視界から消え、一面の緑に包まれます。ローマ市内にいることをすっかり忘れてしまうほどです。
公園の入口近くにある公園の家(PARCO DELLA CASA,パルコ・デッラ・カーザ)で、自転車のレンタルができます。自然そのままでかなり勾配もある広い公園の中をアッピア旧街道までサイクリングすることもできます。ただし体力のある人におすすめします。
農場で出来立てのリコッタチーズを食べる!
カッファレッラ公園の入り口から10分ほど歩くと、中世の塔のある大きな建物(CASALE DELLA VACCARECCIA、カザーレ・デッラ・ヴァッカレッチャ)が見えてきます。牛、羊、鶏、ウサギなどを飼育している農場です。朝や夕方はこの農場内にいるたくさんの羊たちは、昼間は公園内で放牧されています。本物の羊飼いが、羊に草を食べさせながら移動していく羊の群れや、牛の群れに偶然出くわすこともあります。白い大きな犬が番犬の役目をしています。
この農場は、羊のチーズやパンなどを日によって販売しています。運がよければ、出来立ての自家製の作り立てのリコッタチーズを食べることができます。
また、少し奥へ進むと、市民の貸し農園があります。そばを流れるアルモーネ川に、昔ながらの水車を使い水を汲む設備を整えたのどかな風景が広がっています。
ロマンチックな妖精の伝説が残る遺跡
アッピア旧街道に近いカッファレッラ公園は、古代ローマ時代に遡る遺跡がたくさん発掘されています。特に見どころは、ニンフェオ・ディ・エジェリア(NINFEO DI EGERIO)。伝説によると、2代目のローマ王ヌーマ・ポンピリオの恋人であり相談役であった妖精エジェリアは、ヌーマ王の死後、悲しみのあまり泣き続けたため、その場所に泉ができたと言われています。古代ローマ時代、エジェリアの水は火の神様に使える巫女のみが使える神聖な水とされ、エジェリアの泉を大切にしていました。
2世紀頃、近くに別荘を所有していた貴族がエジェリアの泉を整え、建物内部には大理石やモザイクの装飾まで施した遺跡が残っています。この公園のすぐ近くに湧き出る天然水は、「エジェリアの水」と言う商品名で販売されています。また、エジェリアの遺跡近くには、古代ローマ時代に重要とされていた聖なる森もあります。
ローマ時代の遺跡の隣でリラックス
このほかにも、2世紀頃の神殿を6世紀頃に教会へ転用したサン・ウルバーノ・アッラ・カッファレッラ教会があります。ローマ時代の構造がきちんと残っていて、内部にも11世紀の内装がほぼ完璧に保存されています。
また、アルモーネ川の豊富な水を利用した古代ローマ時代の貯水槽や2世紀ごろの納骨堂など、さまざまな古代ローマの遺跡が自然の中に残っています。ここでは遺跡の周りで、普通に古代と共存しながら暮らしているローマの人々の素顔を垣間見ることができます。悠久なローマ帝国の歴史の流れを感じつつ、羊の群れや、草花の香りを楽しむのに最適なリラックスできるおすすめの公園です。
カファレッラ公園(PARCO DELLA CAFFARELLA、パルコ・デッラ・カッファレッラ)住所:LARGO TACCHI VENTURI
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