ジャーマンポテトは本当にドイツにあるの?

ドイツ

ドイツというとビール、ソーセージ以外に連想しやすいのがじゃがいもではないでしょうか?

日本のレストランにはジャーマンポテトなるメニューがありますし、「ドイツ人は毎日じゃがいもを食べている」と思っている人もいるかもしれません。
でも実際はちょっと違うようです。そしてドイツのレストランにはジャーマンポテトというメニューはありません

ドイツ人は主食に何を食べている?

ドイツ人の主食はパンあるいはじゃがいもですので、毎日じゃがいもを食べている人も多くいるとは思います。

 

統計では2017・18年年にドイツ人がじゃがいもを食べた量は年間一人当たり、平均して60.4キログラムだったそうです。そのうち約半数がフレンチフライやポテトチップスなどじゃがいもの加工食品となっています。つまり主食として食べているのは年間30キログラムくらいになります。

一方で、同じ年のパンの消費量は一人当たり74.5キログラムでした。じゃがいもとは違い加工食品はパンにはありませんので、この数値がそのままパンの消費量となります。
数値だけで見ると主食としてパンを食べている量の方がずっと多いことがわかります。

最もこの数値は時代によって大きく変化しています。1950年代から60年代の一人当たりの年間消費量は何と186キログラムという数値が出ています。戦後70年代の間にドイツの人たちの食生活が大きく変化してきたといえるでしょう。

下のグラフは1950年・51年から2017・18年までの推移を表しています。© Statista 2019

じゃがいもの歴史

ところでじゃがいもはいつ頃からドイツで食べられているのでしょうか?

じゃがいもの発祥の地はドイツではなくて南アメリカ

じゃがいもの歴史は大航海時代まで遡ります。
意外なことにじゃがいもの発祥地は南米だそうです。
スペインが南米を征服した際、本国に持ち帰ったものの一つがじゃがいもがだったそうです。つまり、元々の発祥地は南米なのです。

因みにじゃがいも以外にもパプリカ、とうもろこし、トマトなどを欧州にもたらしたそうです。じゃがいもも他の野菜も今では食生活に不可欠なものばかりですが、元々は南米からきているのですね。

食用ではなく、花を観賞していた

もっとも食用としては当初は広まらなかったそうです。じゃがいもは侯爵や王たちの庭に植えられたものの、美しい花を観賞していたとか。確かにじゃがいもの花は紫色で綺麗ですね。

ある学説によると、じゃがいもは南米のインカ帝国から16世紀の前半にもたらされたという記録が残っているそうです。さつまいもも一緒に持ち込んだそうですが、当初は区別はされておらず、じゃがいもとさつまいもを区別するようになったのは18世紀に入ってからだそうです。

ドイツにじゃがいもがもたらされたのは?

1591年にドイツ中部の公国の侯爵が書簡にKartoffel(じゃがいものドイツ語)の語源と思われる言葉を書いた記録が残っているそうですが、実際に食用として広まったのは17世紀末から18世紀初めごろと言われています

ドイツに普及するまでには時間がかかった

ドイツで食用として栽培が始まった場所はドイツのプファルツの辺り、ワインの産地などで有名なところです。ただこの地域はワイン畑が盛んなだけあって丘陵地であるため、ジャガイモの栽培には適していなかったのです。

またドイツとチェコの国境付近にあるフォークトラントという地域にもじゃがいもはもたらされたそうですが、この辺りはボヘミアン・スイスと呼ばれる絶景が見られる山間部ですので、やはりじゃがいも栽培には不適切だったのです。

見慣れない食物に懐疑的だった

当時ドイツを支配していたプロイセン王国の王はじゃがいもは作物として価値が高いと判断していましたが国民の間では広まりませんでした。
ドイツ人たちは、この見慣れない珍しいものにはなかなか手を出そうとしませんでした。なぜそんなに懐疑的なのか?と思われるかもしれませんが、これはドイツ人独特のメンタリティだと思います。

ドイツに住んでいると、ドイツの人達が新しい食べ物にとても慎重だと思わされます。
お友達を家に呼んで手料理でもてなしても、食べたことのない料理にはなかなか手を出そうとしません。材料を全部説明するとようやく眉をひそめながら少しずつ食べ始めるという事がとても多いです。そのため、子供のお友達が遊びに来て夕飯を食べさせる時は、いつも子供が絶対に食べるピザやパスタを出すことになるのです。
少々残念ですが、このようなメンタリティはこの時代から変わっていないようです。

食料飢饉がきっかけで国民食となる

その後、転機が訪れます。
1740年にフリードリッヒ二世がプロイセン王国の王に就任した当時、国民は食料飢饉に苦しんでいました。

王はジャガイモの栽培を命じるじゃがいも令なるものを発布します。
王の臣下たちは国民がきちんと作付けをしているかどうかコントロールしたり、フリードリッヒ二世自身も現地に足を運んでじゃがいも令がきちんと遵守されているかどうかチェックしていたそうです。

1770年にも飢饉が訪れますが、国民の多くはじゃがいものおかげで飢えを凌いだそうです。

じゃがいもの種類

スーパーのじゃがいもコーナーでは、たいてい2.5キログラムくらいで袋に入って売られています

正直言ってこの量は家まで持ち帰るのも一苦労ですし、家族4人で食べてもなかなか完食できない量です。その上、じゃがいもは数日経つと芽が生えてくるので、鮮度も落ちてきます。捨てるのはもったいないので厚めに皮を剥いて食べきるようにしています。

スーパーでは何気なく選んでしまいますが、じゃがいもの種類はいろいろあります。ゆでるのに適した種類など、作りたい料理によって選ぶと良いです。

じゃがいもの種類はどのくらいある?

ドイツのじゃがいもの種類ですが、世界全体では何と5000種類くらいあるそうです。ドイツ内だけでも数十種類から100種類以上あり、よく聞く品種名にはレイラ、カレーナ、ニコラ、アナベルなど女の子の名前がつけられていることが多いです。ただ全体の数を考えるとどうやら女子名だけではなさそうです。

品種が多いじゃがいもですが、調理に適した方法によって以下の3つのグループに大別できます。

固くて煮崩れしないタイプ(festkochend)

→ でんぷん量は平均14%。茹でるのにも焼くのにも適しています。ポテトサラダ、ジャーマンポテト、ポテトグラタンなどに適しています。

ドイツのポテトサラダは日本のものと違い、潰さないで茹でて皮を剥き、スライスして作ります。おいしく作るコツは茹でたてのじゃがいもの皮をすぐに剥くことだそうですが、熱いのが苦手な私はいまだにうまく作れません。
私の義母が作るポテトサラダはとても美味しいのですが、スライスしたじゃがいもに玉ねぎのみじん切りにお酢とサラダ油と塩コショウをしただけというとてもシンプルなもの。素材のじゃがいもに適切な調理を加えてあげればとても美味しくできるのです。

煮崩れしにくいタイプ (vorwiegend festkochend)

→ でんぷん量は15%以上フライドポテトや、シチューやカレーなどに適しています。ミネストローネのようにじゃがいもの形を残したスープを作る場合にはこのじゃがいもが適しています。

柔らかいタイプ (mehligkochend)

→ でんぷん量は16.5%程度で水分が少ない。クリーム状のマッシュポテトやとろみのあるポテトスープ、クヌーデル(じゃがいも団子)などを作るのに適している。
我が家ではマッシュポテトやポテトスープをよく作りますが、必ずこのタイプのジャガイモを使っています。マッシュポテトは粘り気があり、スープはかなりとろとろした食感に仕上がります。

ジャーマンポテトとは何か?

日本のレストランやバーでは「ジャーマンポテト」というメニューがありますが、そもそもジャーマンポテトとはどんな料理なのでしょうか。

ドイツ人に聞いたら「へ?聞いたことない」という反応でしたので、ジャーマンポテトは日本で作られた造語のようです。
ネットで調べたところ、「じゃがいもをソーセージやベーコンと一緒に炒めた料理」をジャーマンポテトと呼んでいるようです。となると、ドイツではBratkartoffelnやBauernkartoffelnと呼ばれている料理がジャーマンポテトに該当すると思います。

Bratkartoffeln mit Speck und Zwiebeln | maggi.de

Bratとはbraten(焼く)の言葉から来ており、Bratkartoffelnとは「焼いたジャガイモ」という意味になります。煮崩れしないfestkochendのじゃがいもを使い、少し茹でてスライスした後にフライパンで油を使って炒めます。玉ねぎやベーコン、ソーセージなどを一緒に炒めた料理が多いです。チリが効いた辛めのスペインのソーセージ、チョリソーを使うとビールのおつまみなどにぴったりの味になります。

地域によっては同じ料理をBauernkartoffeln(農家風のじゃがいも)と呼ばれることもありますが、作り方も材料もどれもほぼ同じです。
フライパンは鉄製のものを使うとうまく焼けます。じゃがいもの表面に少し焦げ目をつけたくらいが一番おいしいと思います。

おすすめのじゃがいも料理

揚げたり煮込んだりしても美味しいですが、素材を生かした料理でおすすめなのが、ローズマリーポテトです。

ローズマリーポテト

じゃがいもをよく洗い、皮を剥かずにオーブンで45分~50分ほど焼きます。焼く際にローズマリーを入れるのですが、じゃがいもにローズマリーの香りがしっかりついていてとても美味しいです。こんがりと焼きあがったローズマリーも食べられます。塩コショウの量はお好みで。
パーティーで出されるとあっという間に無くなる人気料理の一つです。

煮崩れしないfestkochendタイプのじゃがいもを使うと形が崩れず、きれいに焼きあがります。小さめのじゃがいもを使う場合は切らずに、大きめのものを使う場合は半分に切って焼いた方が早く焼けます。

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