私は30代後半になってから、子供を二人出産しました。自分で経験として思うのですが、ドイツは出産をする環境やその後の子育ての環境がきちんと整っています。
私の日本人の知人で旦那さんの赴任に伴い、出産直前にドイツに引っ越してきた人がいます。通い始めた病院で、彼女のお腹の赤ちゃんがきちんと成長できていないと診断され、即対応してくれたそうです。それから約1か月後、彼女は無事に元気な赤ちゃんを産むことができました。
ここではドイツでの出産にまつわる経験談やニュースなどついて説明します。
ドイツ人、日本人の出生率はほとんど同じ
ドイツも日本も先進産業国で、どちらの国も少子高齢化の問題を抱えています。一人の女性が生涯に産む子供の数(合計特殊出生率)、いわゆる出生率を比べてみるとドイツの方が日本よりもわずかに上回っています。2017年のドイツの出生率は1.53人(連邦統計庁)で日本の出生率は1.43人(メディア情報)でした。
ドイツのデータはこの統計値に加えて国籍別のデータも出ています。それによるとドイツ国籍を持つ女性の出生率は1.45人、ドイツ国籍を持たない女性の出生率は2.15人だそうです。
ドイツの結婚事情の別記事でも書きましたが、ドイツ内の外国人居住者の中で特に多いのがトルコを始めとするイスラム系の家族です。一般的にムスリムの人たちは大家族で、子供をたくさん産む方が多いです。町中を歩いていると、家族連れの人達で子供が4人や5人連れており、さらにおばあさんも一緒に歩いている光景を時々見かけます。もっとも核家族化する以前は、ドイツ人の家族や日本でもこのような光景は日常的だったのかもしれませんね。
言い換えるとドイツで出生率が高くなっているのは非ドイツ人が数値を上げているといえます。もっとも1960年代のドイツでのベビーブーム時代の出生率は2.5人で、その頃に比べると現在はずいぶんと低くなっているといえます。
ドイツで出産するメリット
ドイツで出産しやすいのは、なんといっても出産費用が無料であることです。
私が出産した時に日本に住んでいる母がドイツまで来てくれたのですが、退院した時に病院で一銭も払わないまま病院を出たので、とても驚いていました。
毎月の検診の医療費もかからない
日本の医療保険に比べるとドイツの医療保険はカバーする範囲が広く、自己負担分はほとんどありません。ただその分、毎月の保険料は高額です。特に高所得者になるほど保険料は高くなります。
一方で日本は毎月の保険料が低額で医者にかかった際に三割を自己負担する制度です。どちらが良いかは一概には言えませんが、ドイツの場合は診療費や治療費がほとんど無料なので、医者に行きやすいといえるかもしれません。
妊婦の場合も同じです。妊娠が発覚してから出産するまで医療費は原則的にすべて保険でカバーされるようになっています。
私が出産するまでに、自己負担をした医療費は次の通りです。
• 予防接種 → 風疹やインフルエンザの予防接種を勧められたので受けました。その際に1回30ユーロくらいかかりました。
• 出生前診断 → 妊婦が35歳以上の場合に推奨されますが、義務ではありません。診断費は100ユーロくらいです。いくつかオプションがあり、羊水検査などもありますがこちらはもっと高額でしたので、私は受けていません。診断の際には3Dのエコー写真をもらえます。(通常の毎月の検診は写真で3Dではありません)担当の産婦人科から推薦状を出してもらい、専門の医療機関で診断を受ける事になります。
上記以外は1か月に一度、検診を受けていました。
ドイツの母子手帳です。
予約は無しで病院へゴー!
毎月の検診はかかりつけの産婦人科で行いますが、出産する時は総合病院の産婦人科に行きます。一部例外もあるようですが、基本的には推薦状や予約は不要です。
病院へ行く基準は、陣痛が5分毎くらいになった時と言われています。総合病院では病室は5つや6つくらいあります。多めに用意されているためか、受け付けてもらえなかったという話は特に耳にしたことはありません。
宿泊できるのは妊婦のみ
私が次男の出産の時のことです。少しずつ陣痛は来ていたものの、私はあまり痛みを感じていませんでした。時刻は夜9時を過ぎていました。医師は「出産まではまだ時間がかかる」と判断し、ゆっくり休んで次の日に出産に備えることになりました。しかし同伴してくれていた主人は病院に泊まることができず、家に戻らなくてはなりませんでした。「出産時には同伴者は滞在できるが、宿泊はできない」というルールがあるそうで、軽い陣痛が来ている中、私は一人で過ごすことになりました。
背中に注射を打たれて(これがものすごく痛かった!)病室で一人で眠りにつきました。
病室が分娩室になっている
事態が急変したのはそれから3時間後の夜中でした。激しい痛みで目が覚めて緊急ベルを鳴らしました。助産師さんが来てくれて胎児の心拍数を測ろうとするものの、激しい痛みのために起き上がることができません。
それでも陣痛と陣痛の間のわずかの間に携帯で主人に電話をし、すぐに来てくれるように頼みました。その間にも陣痛はどんどん激しくなっていきます。
無我夢中だったので記憶があまりないのですが、その間に素早く助産師数人が分娩の準備をしてくれていたようでした。それから30分もしないうちに無事に出産となりました。結局、主人が病院に着いたのは出産のわずか5分前でした。
結果的に安産だったのでほっとしたのですが、出産では何があるか予期できないものだと身を持って実感しました。
緊急時を除いては救急車はNG
病院への移動は緊急時を除いて救急車は使えません。(実際には使えるのですが、緊急性が低いと判断された場合は自己負担となり、高額な請求書が後日届きます)
ドイツ人の知人で買い物の帰りに歩いていたら突然破水してしまったという方がいます。その場ですぐに救急車を呼び、車内で救急医療を受けて数時間後に帝王切開で無事赤ちゃんを出産したそうです。
私は自宅の近くに総合病院があるので、タクシーで移動しました。陣痛の度合いにもよりますが、歩いて病院まで行った人、タクシーがつかまらなかったので電車やバスを乗り継いで病院まで行ったという人もいます。
自宅出産も「あり」です
また自宅で出産したという人もいます。出産予定日まで何の兆候も無かったのですが、突然陣痛が来てその後まったく動けなくなってしまったそうです。かかりつけの助産師さんが緊急で家にかけつけてくれて、無事に自宅で出産したそうです。
出産準備コースはおすすめです
出産準備コースは妊娠後期の妊婦に対して行われる講習で、こちらも通常は医療保険で賄われます。期間は1週間に1度で合計4回くらい行われます。あるいは週末の土日に集中して受けられるコースもあります。内容によっては夫(パートナー)が参加できるコースもあります。
陣痛や破水などが来た時の対応や見分け方を教えてもらったり、出産の予行演習として、いきむ練習などをしたりします。助産師に直接質問したり、他の妊婦さんたちと交流できるので初産の人はぜったいにおすすめです。
私は妊娠中に仕事で忙しかったこともあり、出産については事前の知識はほとんどと言っていいくらいありませんでした。だからこの準備コースで勉強・実践したことは実際の出産で大いに役立ちました。さらには出産に関するドイツ語も初めて聞く言葉ばかりだったので、この講習で勉強しておいて本当に良かったと思ってます。
通常の医療保険でカバーされるため、参加費は無料です。
兄弟コース
長男・長女は兄弟を迎えることで環境がいろいろと変化します。そのケアとして病院によってはお兄さん・お姉さんになるための準備コースを実施している所もあります。
私が出産したのはベルリン・ミッテ地区のシャリテーという大学病院ですが、こちらは兄弟コースがあったので、次男を出産する前に長男を参加させました。講習は2時間で一回限りです。講習費は20ユーロでした。(この病院の場合は3歳以下のお子さんが参加する場合は原則として親の同伴が必要となります)
出産したばかりのお母さんと一緒にいる新生児の病室を見学したり、人形を使っておむつを替えたり、お風呂に入れる練習をしたりします。
2時間の講習を終えたら修了証明書とお土産までもらます。
私の長男は当時2歳半でしたが、私自身の体調がすぐれなかったため、特別に親の同伴なしで参加させてもらいました。
長男は講習後、おやつがどっさり入った哺乳瓶のおもちゃと証明書をを抱えて嬉しそうに戻ってきました。そして講習のことをたくさん話してくれました。「お母さんがおむつを替えている時に、赤ちゃんがおしっこしたんだよー!」と興奮気味に話していました。
それから1か月後くらいに私は次男を出産したのですが、長男は弟を初めて見た時から大喜びでした。よくある赤ちゃん返りはまったく無く、弟を可愛がってくれました。
この講習に参加することで、長男なりに赤ちゃんに対する準備をすることができたのではと思ってます。
兄弟コースの修了証明書です。
助産師さんが家に来てくれる
初めて出産した人にとっては何もかも新しくわからないことだらけですので、この制度は大変ありがたいです。
これを書くにあたり調べてみたのですが、「公的保険の加入者の場合、出産から授乳期が終わるまで助産師のヘルプを医療保険が支払う」となっているようです。
もっとも私の場合は子供二人とも出産予定日の1か月前くらいから助産師にお世話になっていました。陣痛を来やすくするために針治療をしてもらったり、わからないことは何でも教えてもらっていました。
お世話になった助産師さんはネットで探して見つけました。他には知り合いの紹介などで見つける人が多いです。各自、自分で連絡をしてアポをとる必要があります。
ベルリンの助産師を見つけるのに便利なサイトを見つけました。
https://www.berliner-hebammenliste.de/suche
というサイトで自分の居住地の地区と希望する言語の入力もできます。言語のところをクリックしてみたら、何と「日本語」もありました。個人名は伏せますがクリックしてみたところ、ノイケルン地区に日本語を話せる助産師さんがいらっしゃるようです。
助産師のアドバイスですぐに病院に
次男の出産の時は予定日を過ぎても陣痛が来る気配がまったくありませんでした。予定日から5日を過ぎた時、助産師さんが病院に行き検査をすることを薦めてくれました。
病院へ行ってみると子供が4000グラムを超えていることが判明し、促進剤を使ってすぐに出産することになりました。ぎりぎり自然出産でしたが、担当した医師から「あと少し遅かったら帝王切開になっていた」と言われました。
病院に行くタイミングは、やはりプロにしかわからないものだと実感しました。
退院後はすべて助産師さんのアドバイスを頼りに
私は高齢出産だった割には、長男の時も次男の時も安産でした。母子共に健康だったためか、入院していたのはわずか2日。休む間もなく、退院してから新生児の育児と格闘する日々が始まりました。長男の時には知らない事ばかりでしたので、助産師さんのアドバイスがなかったら途方に暮れていたと思います。
出産してから2週間くらいは、毎日助産師さんが来てくれました。赤ちゃんの体重を測ったり、母乳をきちんと飲めているかなど生育の様子をチェックしてくれる他、おむつ替えや寝かせ方などのアドバイスもしてくれます。
他にもお風呂の入れ方、抱っこの仕方、抱っこひもの使い方、毎日の体重の増え方、母乳のあげ方など、ありとあらゆる事を教えてもらいました。
とりわけ助産師さんのアドバイスに助けられたのは、長男が生まれて1週間もたたない時でした。
薬屋さんが搾乳機を届けてくれるシステム
ドイツは基本的に完全母乳で育てようという考え方で、私も助産師さんの言う通り完全母乳で育てるつもりでした。しかし長男の時は母乳の出が悪かったようで、3500グラムで生まれたものの、その後数日間は体重が一向に増えませんでした。最低でも一日に10グラムは増えていなくてはならなかったのに、その基準に満たないという日々が続いていました。
その状況をみて、助産師さんは搾乳機を使う事をすすめてくれました。手動ではなく機械のもので、その処方箋を産婦人科でもらうようにと言われました。すぐに医者にかかりその場で処方箋をもらってそのまま薬屋に移動して、処方箋を渡した後に帰宅しました。
すると数時間後には家のベルが鳴り、業者が玄関先まで搾乳機を届けてくれたのです。
自力で取りに行くほど余裕がなかったので宅配をお願いしたのですが、こんなに早く届けてくれるとは思っていなかったので、感謝感激でした。すぐに使い始め、哺乳瓶で息子に母乳を飲ませました。それからは順調に体重が増え始めたのです。
私が使ったのはMEDELAというメーカーの電動搾乳機です。処方箋がある場合は無料ですが、リンクでみたところ自費で借りることもできるようです。
(写真はMedela社のHPより)
https://www.medela.de/stillen/services/mietpumpe
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