子どもがドイツの小学校に入ったとき、日本の学校とあまりにも違うので少なからずショックを受けました。数か月経った頃には「まあ、仕方ないか」と妥協する気持ちが出てきて、数年間経った今では「まあ、こんなものか」と諦めの境地でいます。
日本よりも良いと思う点もあるのも確かですが失望する点も多々あります。
ここではドイツの小学校をハード面(学校制度やオーガナイズなど)とソフト面(勉強の仕方、内容など)に分けて、私なりの視点からお伝えしたいと思います。
ドイツの小学校:ハード面編
半日制、全日制の学校制度
ドイツの学校制度は大きく分けると公立と私立に分けられますが、それ以外にも半日制と全日制という括りでとらえることもできます。
公立の学校は全て半日制の学校と全日制の学校に分けられます。
半日制の学校とは授業は午前中のみです。また学童制度が無く、学校によっては給食がない所もあるそうです。給食がない小学校があるとは一昔前の話かと思っていたのですが、ドイツ国内にはまだそのような所もあるそうです。学童制度が無く、給食もないとなると親の負担は大きくなり、仕事をしている親にとっては家庭と仕事の両立のハードルが上がってしまいますね。
私の子どもが通っている学校は半日制ですが、給食があり学童制度もあります。半日制の制度を取っているものの、学年が上がるにつれて午後の授業があったり、参加が義務付けられた課外活動などがあります。
子どもを全日制の学校に通わせている人に聞くと、一週間の授業のコマ数は半日制とほぼ変わらないそうですが、自由時間などを挟みながら午後4時まで授業を行っているのだそうです。また私が知っている限り、私立はすべて全日制の学校です。
https://amheidberg.de/ganztagsschule.html
学費が高い私立、当たり外れが大きい公立。どちらを選ぶべき?
日本では私立小学校に入れるためにお受験に勤しむ親子が多いですが、ドイツにも少なからずその傾向はあるようです。最も日本のお受験のような過酷な受験勉強はまったくありません。親御さんが子ども私立に通わせたいと思う背景には、公立小学校に疑問をもつ人が多いからだと思われます。
ドイツの私立学校の種類
ドイツ私立学校連合のHPによるとドイツ全土の私立学校の数は5814校。学校別にみると小学校はそのうちの約23%で全体の4割を占めるのは専門学校という結果が出ています。他にも私立の中等教育であるギムナジウムや職業学校なども多数あるようです。
ただ一口に私立学校といっても性質は様々で、さらにそこから3種類の学校に分けられます。
1. 代替学校(Ersatzschule)と呼ばれ、私立ではありますが公立学校と同じ指導方針に沿うことが義務付けられている学校です。代替というのは公立学校の代替という意味で使われています。
2. 指導方針に沿う義務を免除されている学校。一般にfreier Träger( 自由な設置者)によって運営されています。日本でドイツの学校として評価されているシュタイナー教育の学校はこの形式をとっているところが多いようです。
3. 補習学校(Ergänzungsschule)です。これは通常の学校以外に週1、2回などで授業が実施されている学校です。私の子どもはドイツの現地校以外に日本語の補習校にも通っていますが、これらの学校などは補習学校の一例です。
私立は親の収入で学費が決まる
ここでは代替学校と自由な設置者の学校をみてみましょう。学校によりますが、一般的に学費は高額のようです。学費の金額は親の収入の3%と決められている学校もあるようで、高額所得者ほど学校に払い込む金額が多くなります。
インターナショナルスクールやバイリンガルの学校(但し公立のバイリンガルスクールも多数あります)、教会系の学校、シュタイナー教育で知られるWaldorfschuleなどはこの形態で運営されています。
バイリンガル学校は最後の卒業試験でドイツともう一か国の卒業資格を取得できるシステムを導入しているところが大半です。子供の勉強はその分ハードルはあがりますが、卒業後の進路の幅が広げられるのは良いですね。
因みにドイツ内には全日制の日独のバイリンガル学校は今のところ無いようです。近年、ドイツに住む日本人人口が増えてきているので、もしこのような学校があったら需要は高いかもしれないと思われます。
当たり外れの大きい公立学校。親の大半がドイツ語を理解できない学校もある
一方で公立学校の評判はどうなのでしょうか。
二人の子供を公立小学校に通わせている私としては、言いたいことは多々あります。また他の公立学校に通わせているお母さん方からもいろんな話を聞きますので、その生の情報をお伝えしたいと思います。
外れの学校とは?
外れの学校とは失礼な言い方ですね(スミマセン)。
実際にどんな学校なのかと言うと、生徒の大半がドイツ語を不十分にしか話せなかったり、生徒の両親がドイツ語を話せない学校は避けられている傾向が強いようです。
理由は明らかで、ドイツ語ができない子が多いとそれだけ授業のレベルが下がるためです。ドイツ語ができない子ども達の大半は、家庭での言語がドイツ語ではありません。家では親の母国語を使っているため、ドイツ語を理解できないというパターンが多いです。いわゆる移民の家庭です。
ドイツ語力が低い児童を対象にした補講がありますが、それでも両親の母国語がドイツ語である家庭の子ども達のドイツ語力に追いついていくのは難しいのです。
移民社会では一般に移民が集まる地区があり、その地区の学校には必然的に移民の子ども達が通うことになります。そのような学校ではドイツ人がマイノリティーとなり、いじめられてしまうケースもあるようです。
https://blogs.uni-bremen.de/heterogenitaetindenschulen/2018/04/13/heterogenitaet-und-bildung-zuwanderung-und-migration/
当たりの学校とは?
どのような学校が当たりとは一概には言えませんが、結果として「子どもが楽しく通学し、勉強をきちんとやり、良き先生や友達に恵まれている」と思えるのであれば、それはその学校にして正解だったと言えます。
子どもが楽しく通っていても、学力がつかなかったら意味はありません。また勉強をどんなにちゃんとやっていても友達がいなかったら楽しくはありません。
その辺りのバランスがきちんと取れている学校に通えるのが理想的だといえます。
他にもいろいろ、ドイツの学校はこんなに違う
勉強面でももちろんですが、他にはこんな所が日本の学校と違います。
その1:学校は親が送り迎え。親の車で登校する子どもも。
その2:靴箱はなく、教室内で部屋履きに履き替える
その3:全校集会、朝礼、給食当番、掃除の時間は無い
その4:先生は勉強を教えることが任務。友達ができないことを親が相談したところ、、、?
その5:給食だけでは足りない?毎日持たせる軽食。
その6:下校中、ランドセルを持つのは親
その1:学校は親が送り迎え。親の車で登校する子どもも多数いる
子どもがある程度大きくなるまでは、親が学校への送り迎えをします。集団登下校の習慣はありません。これは「登下校の安全は親の責任」という規則のためではないかと思ってます。3年生になった長男は最近やっと親の同伴無しで友達だけで通うようになりましたが、今だに自分一人で下校する際は、親は連絡帳にその旨を記載しなければなりません。
登下校に関する校則が無いため、子ども達の登校スタイルは実に様々です。徒歩の子どもが一番多いですが、自転車通学をする子もたくさんいます。
学校には自転車置き場も設置されています。また親の車で登下校する子どもも多いです。朝、スクールゾーンにはベンツやBMWなどの高級車をいっぱい見かけるのですが、日本人の私にとっては不思議な光景です。
その2:靴箱はなく、教室内で部屋履きに履き替える
日本の学校とは違い、校舎の入り口には靴箱が置かれている場所はありません。勉強をする教室の向かいにある学童ルームに靴を履き替えるスペースがあり、そこで部屋履きに履き替えます。
そもそも外履きと部屋履きの境界線があまり無いので、何か忘れ物をして外履きのまま教室に入っても咎められることはまずありませんし、お迎えに行った親は外履きのまま教室に入っています。
ただし雨が降って靴がドロドロになってしまった時は校舎入り口にあるマットで汚れを綺麗に落とすなど教室を汚さないための配慮は必要です。
その3:全校集会、朝礼、給食当番、掃除の時間は無い
日本の小学校では定期的に全校集会が開かれ、ほぼ毎朝朝礼やホームルームがありますが、ドイツにはありません。
以前に長男が日本の小学校に体験入学をした時、たまたまその小学校の全校集会を見る機会がありました。6年生までの生徒が校庭に集まり、先生のお話を聞き、最後に音楽に合わせて行進するのを見た主人はとても驚いていて「みんな揃っていてすごいとは思うけど、軍隊みたいだね」と言っていました。
自分が学校に通っていた頃は行進することに違和感を感じたことはありませんでしたが、この習慣は日本の集団主義を表す一例だと思います。個人主義であるドイツでは学校で行進するということはまずありません。
給食当番や掃除の時間もドイツの学校にはないのですが、これらは日本の学校の良い習慣だと思います。自分たちが食べるご飯は自分たちで責任を持って配膳することで、適当な盛り付けの量を学ぶことができます。また勉強や遊びで汚れた教室を自分たちで綺麗にすることで、掃除の仕方を学ぶこともとても大切なことです。
ドイツでは掃除は下校後に業者が行いますが、一か月に一度くらいは自分たちで掃除をしてもいいのではないかと思っています。
その4:先生の責任の管轄は学校内のみ
日本では、学校近辺のパトロールを先生方が行うケー多いのではないでしょうか?学校の生徒の安全を守るだけでなく、地域の治安を維持する目的もあるとは思いますが、これは先生方の負担が大きいように思われます。
一方でドイツの教員が責任を負う範囲は「学校内」に限られているようです。登下校中の安全の責任が親にあるため、親が送り迎えをしているのです。
その5:友達ができないことを親が相談。すると?
先生の責任の管轄は学校内でありますが、子ども同士の付き合いに先生が介入することはめったにありません。
これは聞いた話ですが、ある日本人のお母さんが先生とも二者面談で自分のお子さんがクラスで遊び友達がいない事を先生に相談したところ、「学校は学ぶところです」という答えが返って来たそうです。
しかし、そのお母さんは自分の子どもが日本人であるために友達ができないのではないかと疑っていたため、その事も伝えてみたところ「友達ができない原因が人種差別にあると思われるなら、それはクラスで解決する必要があります」と先生はおっしゃったそうです。
これを聞いた時に「なるほど」と思いました。ドイツの学校では一人行動や一人遊びをしている子どもがいても、「浮いている」と思われることはありません。特に気に留めず、その子は「一人でいたいから一人でいる」と思われるのです。
学校生活を送るうえで、気の許せる良い友達ができたら良いでしょう。でも学校の目的は学ぶことですので、「友達の有無はさほど問題でない」ということなのでしょう。
しかし「日本人であるために友達ができない」のであれば、それはクラスの子ども達に問題があります。そのため先生が介入して問題解決をする必要があると言ったのだと思います。
その6:給食だけでは足りない?毎日持たせる軽食
私は毎朝、朝食以外に子ども達の軽食を作って持たせています。サンドイッチ、ワッフル、マフィン、たい焼き、おにぎりや巻きずしを作って持たせたこともあります。それに加えて果物やカット野菜なども入れています。
給食ももちろんありますが、子ども達は休み時間に軽食を食べて、次の授業に向けてリフレッシュしています。
ちなみに子どもが誕生日を迎えると、その日はクラスの子どもと先生方に手作りのケーキを持っていきます。市販のケーキでも良いのですが、習わしならではのプレッシャーを感じ、誕生日の前日には時間をかけてケーキを作っています。
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