長年ドイツに住んでいますが、最近ドイツ人と日本人で国際結婚をする方がすごく多くなったと感じています。多くは男性がドイツ人、女性が日本人ですが、若い世代になるにつれて逆パターンを見かけることも増えています。
お話ししてみると、ドイツに来ることになったきっかけは人によってずいぶん違います。日本で結婚相手に知り合い、結婚を機に旦那さんの仕事の都合でドイツに引っ越してきた人たちや、もともと留学などでドイツに滞在していて現地の人に知り合って結婚したという人もたくさんいます。
ドイツ内の国際結婚は?
日本人に限らず、ドイツ全体で国際結婚する人は割合的に多いようです。独連邦統計庁によると国内で婚姻したうち、国際結婚をした人は全体の16%(2013年の統計)です。そのうちドイツ人女性とトルコ人男性による結婚が最も多く全体の19%でした。
ではドイツ人男性と外国人女性はどうでしょうか。見つかったのは2007年の統計ですが、ドイツ人男性とポーランド女性が4205件と一番多く、二番目がトルコ人女性で1874件でした。
聞くところによると「ドイツ人女性は強すぎるから、ドイツ人男性は外国人の女性を好む傾向にある」のだそうです。ポーランドはドイツの隣国ですがカトリック教徒が多く、女性は小柄で家庭的な人が多いです。トルコ女性はムスリムですがやはり以前の女性観を持った方が多いようです。このうわさもあながち間違いではないのかもしれません。
最もドイツは政府が移民国家と位置付けており、国内の移民や移民系の人たちはとても多いですので、国際結婚が多いのは自然な流れであるともいえます。
婚姻手続きは容易ではない!
しかしドイツで婚姻手続きをするのは容易ではありません。よく「結婚は勢い」などと言われますが、ここドイツでは熱愛中の二人が勢いで婚姻手続きをすることはできない仕組みになっているようです。ましてや国際結婚となると必要書類を母国から取り寄せなければならず、時間もかかります。
ここではこの事について詳しく説明しましょう。
婚姻に必要な書類は?
ドイツ大使館のホームページにドイツ人と婚姻をする場合に必要な書類が詳しく記載されています。それによるとドイツ人はGeburtsurkunde(出生証明書)の原本1通、日本人は戸籍謄本(ドイツの出生証明書に該当します)、婚姻用件具備証明書、住民票です。離婚歴がある人の場合は戸籍謄本に過去の婚姻・離婚の年月日が記載されているものが必要になります。
https://japan.diplo.de/ja-ja/service/ehed/901048
婚姻用件具備証明書って何ですか?
ここで聞き慣れない書類が出てきました。婚姻用件具備証明書とはいったい何なのでしょうか。簡単に言うと「結婚することができることを証明する書類」です。過去の婚姻で別居はしているが離婚が成立していない場合は重婚になるため、婚姻手続きをすることはできません。
ではどうやったら入手できるのでしょうか。ドイツに住んでいる場合、この書類は日本から取り寄せなければならないのです。そのために必要な書類は次の通りです。
1. 結婚相手のパスポートの氏名や生年月日などが記載されているページのコピー
2. 氏名、国籍、生年月日を日本語に訳した書類。なお、結婚相手の名前はカタカナで表記する。
3. 戸籍謄本の原本1通
4. 日本に在住していない場合は委任状
これらを揃えて最寄りの地方法務局、または市町村役場に申請しなければなりません。私の場合はすでにドイツに在住していたため、日本に住んでいる母に法務局まで行ってもらい、それをドイツまで郵送してもらいました。
日本のパスポートとドイツのパスポートです。
無事に書類がドイツまで届いた。めでたしめでたし・・・・とはいきません。今度はこの書類をさらにドイツ語に翻訳しなくてはならないのです。でも自分が訳したものでは受理されず、法定翻訳家という特別な資格を持った翻訳家に訳してもらったものではないと証明書として認められません。翻訳の依頼を出してから仕上がるまでは約5日かかり、手数料として35ユーロかかります。
時間もかかるし、手間もかかる。おまけにコストもかけて、ようやく婚姻用件具備証明書を入手できるのです。
ドイツ内の戸籍局によってはアポスティーユが必要であることも
アポスティーユとは、日本の官公庁などが発行した公文書に対する外務省による証明です。ドイツ内の戸籍局によっては、アポスティーユが押された日本の戸籍謄本や婚姻用件具備証明書の提出を求めるところもあります。アポスティーユが必要かどうかは事前に各自、戸籍局にご確認ください。
書類の提出と役所での婚姻式のアポを取る
さあ、これで婚姻に必要な書類がすべてそろいましたが、まだ終わりではありません。
実はドイツでは正式に婚姻するには戸籍役場で婚姻式を行わなくてはならないのです。戸籍役場による挙式とは言え、担当官の前で愛を誓いあうなどかなり本格的です。
まずは上記の書類を揃えてお住まいの戸籍役場(Standesamt)に提出し、婚姻式をあげるアポイントメントを入れます。ところがこのアポがなかなか入らないのです!
最も地域によって事情は異なるかもしれません。私が結婚したのは数年前ですが、アポを入れたときは「半年待ち」と言われ、びっくりしたのを思い出します。結局、いろいろと交渉してもっと早めにアポを入れてもらえたのですが、アポ入れが難しいという状況は今も変わっていないようです。
2017年の地元紙の記事によると、ベルリン市内で最も人気の地区で住居探しなどが最難関と言われているミッテ地区では、アポを取るために朝4時から役所で並んでいる光景が見られるそうです。役所が開くのは7時半なので、新聞紙の上に座ったり、折り畳み式の椅子を用意して役所が開くのを待っている人たちがいるとのことでした。
華やかな結婚の舞台裏には涙ぐましい努力があるようです。
役場と言え、婚礼ホールはとても綺麗
戸籍役場は市内に何か所もあり、アポは居住している市内であればどの地区でも入れることができます。中には昔の貴族の邸宅などが戸籍役場になっていたり、婚礼ホールから絶景の眺めを楽しめるところもあるようです。人気の地区でアポを取るのは難しいとは思いますが、記念に残る式をあげられたら良いですね。
ホール内には花婿と花嫁が座る椅子の他にも椅子がありますので、親族や友人などを招待することができます。ただし日本の披露宴のように大人数が入れるスペースはありませんので、ご注意ください。
婚姻までにたどり着けない知人。いったいなぜ?
私の知人にイギリス人とドイツ人のカップルがいます。二人の間の子供もいて、家族三人で暮らしているのですが、両親は籍を入れていません。ここまでならばドイツではよくあるケースなのですが、その知人の場合はある事情があったのです。
このカップルの男性はイギリス国籍なのですが、養子として育てられました。イギリスの法律では一定の年齢を超えると生みの親(生物学上の親)を自分で調べることができるそうです。そこで知人男性も自分の親を調べてみたところ、あることがわかったのです。
男性はイギリス人の両親に育てられました。実の父親は彼が住んでいるところから遠方に住んでいるイギリス人であることがわかり、コンタクトを取ろうとしましたが父親は病床に伏しており会うことはできず、それから程なくして父親は亡くなったそうです。
一方、母親はドイツ人であったことが判明したのです。ある時、彼は産みの母親を訪ねにドイツへ行き、母親との初の対面を果たします。
生まれて初めて会った母親に、彼は長い間、聞きたかったことをたずねました。「なぜ自分は里子に出されたのか?」母親は当時の状況を説明し、どうしても育てられなかったことを彼に説明したそうです。結局、彼が産みの母親に会ったのはその時一度きりで、母親もその数年後には他界されたそうです。
それから何年も経ち、彼は私の知人のドイツ人女性に出会い、二人の間に生まれた子供の父親となります。産後の忙しい時期が過ぎて一段落ついた頃、二人は正式に籍を入れ、結婚しようということになったそうです。しかし、ここである問題が生じてしまいます。
彼がイギリスから取り寄せた出生証明書には育ての両親の名前が記載されていました。そのことでドイツの役所に問い合わせると、「婚姻する二人が親戚ではないことを証明する書類がないと婚姻できない」と言われてしまったのです。ドイツでは法律により、いとこ以上の近親婚は禁じられています。二人が親類関係にないことは明らかなのに、それを証明する書類がないと婚姻ができないそうです。
しかし彼の実の両親はすでに他界されており、彼の出生を証明できる人が誰もいません。結局、知人は書類がそろえられないという理由で今もなお、婚姻をせずに事実婚を続けています。
婚姻後は独内の日本大使館あるいは在外公館へ
日本人の場合はドイツの戸籍役場での式を終えて婚姻が成立した後は、日本大使館あるいは在外公館に婚姻届けを出す必要があります。期間は婚姻した日から3か月以内になります。
配偶者が外国人の場合、必要書類は婚姻届(所定のフォーマットに必要事項を記入したもの)、戸籍謄本、婚姻証明書(ドイツで発行されるHeiratsurkunde)、配偶者のパスポート(身分証明書)、と訳文(所定のフォーマットに必要事項を記入したもの)となります。
もし日本人同士で結婚した場合は配偶者のパスポートの代わりに、両者の戸籍謄本を提出します。
書類を提出した後、ドイツから日本に書類が送られ、自分の戸籍謄本に記載されている役所で受理されます。期間は約2か月かかりますが、これでようやく全ての手続きが完了となります。
在ドイツ日本国大使館の連絡先は以下の通りです。婚姻に関する質問の担当は領事部になります。
Hiroshimastr. 6, 10785 Berlin
Tel. +49 (0)30 210 94-0
Fax +49 (0)30 210 94-222
他にもデュッセルドルフ、フランクフルト、ミュンヘン、ハンブルクに日本の在外公館があります。詳しくは下記をご覧ください。(当然ですが、どこの公館でも日本語が通じます)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/zaigai/list/europe/germany.html
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