ドイツ人はいつもビールを飲んでいる?

ドイツ

ドイツビールは美味しいものはいっぱいありますが、ドイツでは一体どの程度ビールが飲まれているのでしょうか?

ここでは統計や資料を元に、また私の独断でドイツのビール事情をお伝えします。

パーティーでは一人がビールを何本も飲むのが普通

友人宅で開かれるパーティーに行くと、大抵ビールが何ダースか用意されています。つまみはわき役で冷蔵庫を開けると所狭しと冷やされた大量のビールがあり、スーパーに行くと広大なビールコーナーが広がっている――――ということは日常茶飯事です。

ビールは1本の量は通常0,5リットルですが、これをコップに次いで何人かで分けるといった飲み方はせず、そのままラッパ飲みする人が多いです。そして一人の人がビールを複数本を飲むのはごく普通の出来事なのです。
因みにドイツ人はビール瓶の蓋を栓抜きを使わずに、手で開けてしまう人が結構います。長年住んでいる私には到底マネできない(マネしたくもないですが)技だと感心させられます。

ドイツではビールはとにかく安い!

ビールはドイツでは気軽に飲めるお酒ですが、その理由の一つは価格が圧倒的に安いことがあると思われます。スーパーで買えば0.5リットルのビールは通常、1ユーロから高くても2ユーロ程度です。チェコやロシアなど外国のビールは送料が入るため、少々高めです。またレジで支払う際には瓶のデポジット料金である8セントを含めた価格を支払います。(このデポジットは後日瓶を返却すれば返金されます

レストランでもビールは決して高くありません。
ドイツのレストランでは水が出ないので必然的に飲み物を何か頼むことになるのですが、ビールの値段は水よりも1ユーロ~2ユーロ高い程度です。そうなるとついついビールを頼んでしまうことになります。

ドイツは飲酒の解禁年齢が早い

ドイツではビールは16歳から飲むことができます。飲酒が16歳から許されているのではなく、16歳の時点ではビールとワインをのみ飲むことができます。それ以外のアルコール度の高いお酒は18歳から飲むことができます
16歳とは高校生です。聞くところによると高校のごみ箱や校内の人気のない場所にはビール瓶が置かれていることがよくあるとか。

違法ではないにせよ、学校にお酒を持ち込むのは好ましくないですね。しかし早い年齢からビールを飲むことができるため、ビールが身近なお酒として好まれているのでしょう。
因みに観光客であっても16歳になっていれば、ドイツを訪問した際にはビールとワインを飲むことはできます。

ドイツのビールの銘柄はどのくらいあるのでしょうか?

ドイツのビールには5000~6000種類の銘柄があるそうです。レストランやスーパーで見かけるビールはほぼ同じなのですが、実際にはこれよりももっとあることになります。確かに旅行に出かけるとその地域の地ビールが販売されていることが多いです。

昔、片田舎を一人旅していた時のことですが、歩き疲れた体を休めるためにふらっと寄った居酒屋で飲んだ地ビールの味は、今でもはっきりと覚えています。素朴な味でとても美味しかったです。
因みにビールの醸造所は全国で1200か所くらいあるそうです。
世界全体ではビールの銘柄は10000から15000種類あるそうなので、単純に考えると世界のビールの2分の1から3分の1はドイツが醸造していることになります。この数値だけを考えてみても、ドイツがビール大国であることがわかります。

ビールが法律で定められている

ドイツのビールには厳格に定められたビールの基準なる法律があります。ビール純粋令(Reinheitsgebot)といい、ビールの原料を「麦芽、ホップ、酵母、水」の4種類のみとするというものです。
ビール純粋令の歴史は古く、何と中世の時代に遡ります。1516年にバイエルン王国の王様ヴィルヘルム4世が制定しました。2016年にはビール純粋令制定から500年ということで大々的に祝賀行事があったのですが、500年前に定められた決まりが今も有効であるとは、ドイツ人のビールへのこだわりをよく表しています。

https://www.rantlos.de/wp-content/uploads/2016/04/reinheitsgebot-1.jpg

中世の時代、ドイツは現在のような統一された連邦国家ではなく、各地に公国が割拠しており、バイエルン公国もその中の一つでした。1871年にプロイセン王国の王が皇帝となってドイツ統一帝国が築かれるのですが、バイエルン公ヴィルヘルム4世はビール純粋令がドイツ全土で有効となる事を条件に帝国に入ることを決定したのだそうです。

ビールの美味しさの秘密は水にあり!

特に人気のあるビールを飲んでいると本当に美味しいと思わされるのですが、地元の人が言うにはその秘密の一つは水が綺麗だからだそうです。

ビールの種類が違うので一概には言えませんが、バイエルン地方のビールではアルプス山脈からの水を使っています。そのおかげなのか、ビールは他の地方のビールとはひと際違ってビールの美味しさがより際立っているように感じます。またドイツで最も売れているビールであるWarsteiner(ヴァルシュタイナー)で使われている水は名水として有名なカイザー・グヴェレの泉の水を使用しています。

ワインとビール、どちらが好まれている?

ドイツの人たちはビールばかり飲んでいるイメージですが、ワインを好んで飲む人たちも多いです。今回この記事を書くにあたり、「ドイツでのビールとワインの消費量はどのくらい違うのか?」とふと疑問に思ったので調べてみました。
結果は以下の通りです。
ビール → 2018年の一人当たりの年間消費量は102リットル
ワイン → 2018年の一人当たりの年間消費量は20.5リットル
圧倒的にビールの消費量の方が多いのです!

しかし欧州圏内にはドイツよりも一人当たりの年間のビール消費量が上回る国があります。チェコが一位でオーストリアが二位となっており、ドイツは欧州では3番目にビールの消費量が多い国となっています。

チェコが消費量トップの理由は?

世界でビールの種類としては最も飲まれているピルスナー発祥の地はチェコのピルゼン地方です。だからチェコの人々とビールの結びつきはドイツに負けないくらい強いのです。
私はチェコのビールも大好きで値段は少々高めですが、ウルケル(Urquell)という銘柄をよく飲んでいます。
チェコに旅行するとどれも美味しいビールばかりで、地元のバーなどではチェコ人はヘロヘロになるまでビールを飲んでいる姿を見かけます。ビールの消費量がトップというのもよく理解できます。

ドイツビールの主な種類

話がドイツから逸れてしまいましたが、ここでドイツのビールの主な種類についてお伝えしましょう。

下面発酵と上面発酵

ビールの種類は大きく分けると「下面発酵」と「上面発酵」に分かれます。

下面発酵は5度程度の低温でじっくりと発酵させ、上面発酵は20度程度の高温で発酵させます。上面・下面の名前の由来は酵母が浮くか沈むかによるものだそうです。つまり下面発酵では最後に酵母が下に沈み、上面発酵では酵母が上に浮くのだそうです。

おすすめのドイツビールとは?

下面発酵と上面発酵という言葉を使うと何やら難しそうですが、味がはっきりと分かれるので実際に飲んでみて味を見分けると分かり易いと思います。

代表的な下面発酵ビールはピルスナー

下面発酵の代表的なビールはピルスナーです。先述したように発祥の地はチェコのピルゼン地方ですが、ポーランドやドイツ北部のビールの主流はピルスナーです。
味は苦めですが、切れがありのど越しが良いので暑い日に飲むにはぴったりのビールです。グラスに次ぐと輝くような黄金色のビールが楽しめ、ビールの上面に作られるきめ細やかな泡も美味しいです。
銘柄としてはBecks (ベックス)やベルリンのビールであるBerlinerベルリーナ)、JEVER(イェーバー)、Bitburger(ビットブルガー)などがお勧めです。

下面発酵にはピルスナー以外にもミュンヘンのビールとして人気のあるヘレスや黒ビールとして知られるシュバルツなどの種類があります。シュバルツでは火で炙った小麦を50%以上使用しているため、色が黒くなるのだそうです。

代表的な上面発酵ビールは白ビール

日本のビールは大半が下面発酵ビールですので、白ビールはあまり知られていないかもしれませんが、ドイツに来ることがあったらぜひ一度は試してほしいビールです。
ピルスナーは麦芽を使用しているので苦みがありますが、白ビールは小麦を50%以上使用しています。苦みはほとんどなく、むしろ甘くフルーティーな味がするのが特徴的です。甘味があり飲みやすいので、ついいっぱい飲んでしまいます。
銘柄としてはPaulaner(パウラーナ)、Erdinger(エルディンガー)、Franziskaner(フランチスカーナ)あたりでしょうか。どれもスーパーで販売されており、安価ですので機会があればぜひ試して頂きたいと思います。

伝統的なドイツビールにライバル誕生?人気が強まるミックスビール

ここで気になるデータがあります。実は、ドイツのビール消費量は年代別で見ると徐々に減っているのです。最も多かったのは1980年で一人当たりの年間消費量は145.9リットルでした。それが1990年代より徐々に減り始め、2017年には101.2リットルまで減っているのです。
次のグラフは1950年代から2018年までの推移を表したものです。

https://de.statista.com/statistik/daten/studie/4628/umfrage/entwicklung-des-bierverbrauchs-pro-kopf-in-deutschland-seit-2000/

その理由として、ビールの種類が多様化していることが考えられます。

ビールにオレンジジュースやグレープフルーツ、ライムなどを混ぜたミックスビールの種類がどんどん増えてきているのです。最近では有名なメーカーまでがライム入りのビールを販売するようになりました。

さらにドイツのレストランではビールにスプライトを混ぜたもの、ファンタを混ぜたもの、コーラを混ぜたものも売っています。この3種類の飲み物は地域によって名称が違うようですが、ベルリンではAlsterwasser(アルスターワッサー)やRadler(ラドラー)などと呼ばれています。

またEUが拡大したことにより、ベルギーのビールやアイルランドのビールなどが簡単に買えるようになったことも考えられます。ビール純粋令はあくまでもドイツのビールだけに適用されるため、ドイツ圏外のビールを飲んでもドイツの基準となるビール以外はビールの範疇に入らないため、統計上ではビールの消費量が減ってきているのでしょう。

かくいう私も、ここ数年はミックスビールの大ファンになっています。最近はいつもオーストリアのゲッサーという会社のレモネード入りのビール(Gösser Natur Radler Zitrone)を飲んでいます。レモンジュースにちょっとだけビールの苦みが加わった味で、ほろ酔い気分になるにはもってこいの飲み物です。

時代と共にビールが多様化していく一方で、500年の歴史を持つドイツのビールへの人気と信頼は絶大なものです。

今後、ビールの人気がどのような変遷を遂げようとも、ビール純粋令を遵守したビールの味は守られ続けていくことでしょう。

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