ドイツへ留学!と言ってもその目的は人によってさまざまです。留学と言うと学問の勉強だけを想像しがちですが、実はいろいろな留学のタイプがあります。
「ドイツに留学してみたいけど敷居が高そう」とか「ドイツ語なんてわからない」と考えていらっしゃいませんか?そんな悩みを少しでも解決すべく、ここではドイツで留学するにはどんな方法があるのか、お伝えします。
最近、ドイツに滞在する日本人の数が急増しているように思えます。配偶者がドイツ人だから結婚を機にドイツに来る人が多くなっているためもありますが、私が住んでいるベルリンで見かける日本人は年齢層も様々です。
先日、とある場所で開かれた日本関連のレセプションで、日本人のティーンエージャーの男女の集団を見かけました。普段見かけない光景だったので話しかけてみると、どの子もバレエ留学をしているとのことでした。確かに女の子はみんな髪をお団子にしていますし、どの子も背がすらっと高くてスマートです。あどけない表情でワイワイ楽しそうに話していましたが、芯が強そうな印象を受けました。
これはほんの一例ですが、こんな感じで沢山の日本人が自分の目的や夢を達成するために、ドイツが身近な国になりつつあるのを感じます。
ドイツの留学にはどんなタイプがあるのでしょうか?ここではその概要を説明したいと思います。
学問:ドイツの大学に入って勉強
ドイツの大学は大半が国立ですが、一部私立大学もあります。国立大学の場合、施設料がかかるのみで、基本的に学費は無料です。(連邦州によっては学費を導入している大学もあります)
また総合大学に入学するために入学試験はありませんが、医学部だけは例外で適性試験が実施されます。原則的には試験ではなく、書類審査で合格、不合格が決まります。
こちらは大学内に設置された学生のためのサービスセンター。わからない事や不安なことは何でも聞いてみましょう。
しかし誰もが希望する大学の学部に入学できるわけではありません。大学によってはNC(Numerus clausus入学制限)が設けられている学部があるのです。
その場合、ドイツのギムナジウム(日本の中学・高校に相当)卒業資格であるアビトゥーアの成績や大学の学士での卒業成績が、希望する大学の学部が設置したNCの最低ラインを超えていないと入学資格がもらえないのです。一般に医学部のNCは最も高いです。他学部のNCのラインは大学によって異なります。
留学生の場合はこれに加えて、さらに高いドイツ語力が必要となります。
交換留学でなく、正規に入学するためには大学で実施される外国人のためのドイツ語テスト(DSH、 Deutsche Spracheprüfung für den Hochschulzugang)に合格するか、もしくはこれと同等のドイツ語力の証明書が必要となります。因みにこの試験は二回までしか受けられません。もし2回とも不合格だった場合、受験資格がなくなります。記念受験的なものはせず、合格ラインが見えてきたときに受けたほうが良いでしょう。
試験にかかる費用は70ユーロから150ユーロくらいです。試験は各大学で一年間に2回(中には4回の大学もある)実施されます。
http://dsh.de/
こちらはベルリン大学(フンボルト大学)の法学部の建物です。市の中心部にある大学です。NCは学士コースで1.9、弁護士としての国家資格を取るコースの場合は1.6くらいだそうです。(1.0が最高得点、5.0が落第点です)
大学の学生食堂です。
研究:国内の研究所に勤務し、研究活動をする
自然科学系
研究者として留学している方は一般に理系の方が多いです。これまでに医学関係、物理学、理学、生物学の研究者として活躍している人たちに知り合いましたが、大学で博士論文を書いていたり、独内の研究所に勤務していたりしていました。
ロベルト・コッホ研究所やマックス・プランク研究所を始め、ドイツには優れた学者が活躍する研究所が多くあります。
自然科学系の場合、論文自体は英語で執筆するのが普通のようです。また世界各国からの研究者が集まるためか、研究所内の会話もほぼ英語だそうで、ドイツ語力よりも英語力の方が求められるそうです。
ベルリン大学の本館には当大学を代表する研究者の写真がずらりと壁に貼られています。アインシュタインもその一人です。
人文科学系
一方で人文科学系の研究者として活躍されている方も多くいます。ドイツ文学、言語学、法学、経済学、社会学など分野は多岐に渡ります。人文科学系については研究活動の言語はドイツ語が主となっています。
語学:語学学校でドイツ語を勉強
語学留学としてドイツに滞在することが認められた場合、語学学校ビザが発行されます。そのためには原則的に週20時間、語学学校でドイツ語を勉強することが必要です。
ドイツ国内にはゲーテインスティテュートを始め、数多くの語学学校がありますが、一クラスの人数が数人から20人くらいまでと色々です。また勉強の目的も様々で日常会話に不自由のない程度にする人から大学入学を目指す人もいます。年齢もいろいろで10代の人から高齢者まで参加しています。
ゲーテインスティテュートの看板。緑色のロゴが特徴です。
目的や年齢層に加え、国籍も実に様々です。EU諸国を始め、アジア、アフリカ、北米、南米など本当に世界中からの人たちがいろんな目的をもってドイツ語を勉強しています。メルケル首相が難民を多く受け入れる決断を下した2015年前後頃からは、難民の人たちが語学学校に通うケースも増えています。
語学学校は、ふだん話すことのない国の人たちと知り合う上で良い機会です。生死をかけてドイツにやって来た難民の人たちの話を聞いたり、まったく違う文化で育ってきた人たちと友達になることは時にはカルチャーショックはあるものの、人間としての幅を大きく広げられるものだと思ってます。
語学学校ビザは基本的に最長1年半まで出ます。この期間を過ぎた後にもドイツでの滞在を希望する場合、大学の学生ビザなどに切り替える必要があります。そのためには大学のドイツ語試験に合格しなければならず、高いドイツ語力が求められることになります。
音楽:ドイツの音楽大学などで勉強する
ドイツに留学するケースとして最も多いのは、音楽留学ではないかと思います。これまで様々な人たちと知り合う機会がありましたが、日本からの音楽留学生は特に優秀な人が多いと思います。楽器はピアノを始め、バイオリン、チェロ、オーボエ、打楽器など様々です。またクラシック音楽に限らず、現代音楽やジャズなどで留学している人もいます。
音楽大学に入るためには実技試験で合格することが必要ですが、それ以外にドイツ語力も求められます。一般的には、大学に入学する際にドイツ語力の証明書を提出するケースが多いですが、大学によってはドイツ語の試験が実施される所もあります。
音大の試験は、定員があまり多くない上に厳しい実技試験に合格しなくては入学できません。さらには一流の音楽家として生計をとるために、留学中にいろんなコンクールを受けて実績を残したりなどしています。
ベルリンの中心部にある音楽大学の構内です。壁一面に若手の音楽家の写真が貼られています。
大学の試験の直前に渡独するのではなく、プライベートレッスンを受けながらドイツ語の語学学校に通い、ある程度勉強してから大学の試験に挑戦する人達もいます。
大学内にはこんなチラシがいっぱい貼ってあります。現役の学生によるプライベートレッスンがここで見つかるかもしれません。
卒業後の進路は様々で、ソロの音楽家として活躍する人もいれば、ドイツやほかの国のオーケストラに入団をはたす人もいます。日本に帰国して音大で講師をする人もいらっしゃいますし、ドイツでの留学経験を大いに生かして活躍している人が多いです。
アート:ドイツの芸術大学などで勉強する。
音楽同様、芸術大学の募集人数は総合大学に比べると少数で、合格するのは狭き門です。
建築学のように芸術大学だけでなく、総合大学で勉強できる分野もありますので、受験前によく調べたほうがよいでしょう。デザイン、絵画などで狭き門に合格し、活躍している日本人がいることはとても頼もしいことです。
バレエ:バレエ学校、専門大学で学ぶ
バレエ留学をする人はとても若い人たちが多いです。早い人では小学校の高学年から留学しています。例えばベルリンにあるドイツ国立バレエ学校では、小学校5年生からの入学を推奨しています。そのためには小学校4年生の時点で適性試験、入学試験を受けて合格しなくてはなりません。(ただしその後の入学も可能だそうです)ここではクラシックバレエ以外にもモダンダンスなどの舞踏も学ぶことができます。
世界各国のバレリーナを目指す子供達がこの学校に通っています。バレエ学校ではありますが、義務教育の課程に沿った勉強をする学校ですので、卒業すると大学入学資格である高校卒業資格(アビトゥーア)を取得できます。専門の寮があるため、バレエ留学をしている人たちは寮生活をしている人が多いそうです。
卒業後は提携している演劇で有名な単科大学、エルンスト・ブッシュに進学し、そこを卒業すると学士の資格を取ることができます。
国立なので基本的に学費はかからないようですが、寮費などの生活費は自己負担です。
なおドイツ国内には他にもミュンヘン、ニュルンベルク、マンハイム、シュツットガルトなどにバレエアカデミーがあります。様々な都市に日本人が留学しています。
サッカー:チームの一員として、また練習のみの形でも
サッカー留学はまだあまり広がっていませんが、一部には海外へのサッカー留学を斡旋する団体もあるようです。ドイツの場合はバレエ学校のようにサッカー専門の全日制の学校は無く、現地の学校に通いながら地元のサッカークラブに入って集中トレーニングを受けるという形が一般的のようです。
年齢が高校生未満である場合は、自分の年齢に該当する現地校に通うことになります。もし高校を卒業しているのであれば語学学校ビザを取得し、午前中はドイツ語を勉強しながら午後はサッカーをやるという生活パターンも可能となります。
各チームの入団テストを受けて合格すれば、チームの一員としてリーグ戦やカップ戦で戦い、実績を残したサッカー留学をすることもできます。その際には長期ビザもおります。
ドイツに住んでいるとサッカーがこの国の国技であることを実感します。スポーツ鑑賞としても、また自分がやるスポーツとしても、サッカーはドイツ人の生活の一部となっています。幼少期からサッカーをやっている子供たちが多いですし、ほとんどの公園にちょっとしたサッカーコートがあります。
ドイツのサッカークラブに入ってサッカーを学べば、技術力はもちろんですが、ドイツ人のサッカーに対する熱い思いも肌で感じられることでしょう。
なお、一部リーグのブンデスリーガは春休みや夏休みなどに子供向けに数日間のサッカーキャンプを実施しています。長期留学にこだわらず、まずは短期留学から始めて見るのがよいかもしれません。
マイスター留学:職人としての技術を実地経験で身につける
ドイツのマイスター制度についてはご存知でしょうか。
メイド・イン・ジャーマニーの製品と聞くと、反射的に高いクオリティをイメージしませんか?それは中世の頃より続く、スペシャリストを育てる伝統を続けてきた歴史があるからなのです。
マイスターという高等職業能力資格を取れる分野には手工業、工業、農業などがあります。日本人でマイスター資格を取得するために留学している人は特にパン職人、製菓職人が多いです。日本の有名店でドイツに留学し、日本に帰国して開業したというパン屋さんなどを耳にすることも少なくありません。
マイスターコースでは技術以外にも、経営学や教育学も学ばなくてはならず、独立開業するための基礎知識を学ぶほか、実際の実務経験も積みます。理論と実践を学び厳しい試験に合格した後、やっと取得できる資格なのです。
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