もはやコンビニ大国日本では、大都市の場合だと10メートル置きくらいの狭い敷地範囲で店舗が林立していたり、また場所によっては出店してはすぐ消えるというように回転も競争もより激しくなっていますよね。
ここバンコクでも、昔ながらの市場や大型のスーパー、百貨店に加えて、街中にはコンビニも増えてきており、タイの生活者の購買形態の変容がうかがい知れます。
バンコクにおけるコンビニは、基本的には全てが日本でお馴染みのブランド。
セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートの3ブランドです。
本記事では、この増加中にあるバンコクのコンビニの、日本のコンビニと似て非なる競争の様子をお伝えします。
圧倒的な店舗数を誇るセブンイレブン
バンコクのコンビニと言えば、セブンイレブンがほぼ代名詞といえるポジションを築いています。
タイ語でコンビニという意味の言葉である「ラーン サドゥアック」よりも圧倒的に「セブン」の方がタイ人には通じてしまうほど。それほど店舗数が多いため、タイ人にとってコンビニと言えばセブンイレブンを指すようになってしまっています。
なぜそうなっているかと言えば、タイにおいて、セブンイレブンはCPグループという巨大産業グループによって経営されているからです。
CPグループは、生鮮食料品としての鶏肉からソーセージ等の加工肉、フライドチキンに至るまで、どこのスーパーに行ってもそのロゴを見ないことはないほど食品産業としての企業ブランドが有名ですが、実は通信から不動産、農業に至るまでほぼあらゆる基幹産業に関わるタイ最大の企業グループなのです。
CPグループはあまりにも寡占的にビジネスを牛耳ってしまう状況が好ましくないとして(要は商売上手ということなのだと思いますが)、一時期セブンイレブンで不買運動が起きていたほど。
このような背景により、タイのコンビニはセブンイレブンの看板で9割がた埋め尽くされている印象です。
ニッチ的に存在するファミリーマート
圧倒的なガリバー的存在のセブンイレブンとは殆ど比較になりませんが、次によく見かけるのはファミリーマートです。ここは、タイの大手流通会社セントラルグループにより運営されています。
タイのファミリーマートは、日本のファミリーマートに比べると、なぜか店舗の中が薄暗く、あまりパッとしない内装が多い気がします。
そして、品揃えは際立った特徴もなく、また同じ商品が若干セブンイレブンよりも高いことが。例えば、自分のお気に入りであるcheers beer(チアーズビール)は、セブンイレブンだと500mlの缶が45バーツ(約135円)なのに対して、隣のファミリーマートでは47バーツ(約141円)です。まぁ、大した差ではないのですが、それでも全く同じもので、店も隣にあるのであれば誰でもなるべく安い方で買いますよね。
従い、実際にセブンイレブンが近くにあるような場合、ファミリーマートの方にはほとんどお客さんがおらず、セブンイレブンの方はレジに列ができているという状況です。
なぜ、このようなマーケティングになってしまうのか、一消費者としても疑問に思うところですが、流通の雄、セントラルグループのマーケティングの腕の見せ所だと思います。
少数ながら存在感を示すローソン
日本から進出しているもう一つのコンビニブランド、ローソン。
こちらでは、ローソン108というブランド名で展開しています。
店舗数からすると、ファミリーマートよりもさらに少ない印象です。
しかも、敢えてそうしているのか、えっ?こんなところに?という場所に立地していることが多い気がします。ある意味ではその方がセブンイレブンとの差別化ができているのかもしれません。こちらは、シラチャなど都市開発を展開するサハグループにより運営されています。
現在の圧倒的に少ない店舗数のため、完全にマイナーなイメージの強いローソン108ですが、実際に入ってみると品揃えに特徴があり、マーケティングの戦略性を感じることができます。
まず、店舗が明るく、ディスプレイにも気をつかっている様子を感じます。
さらに、オリジナル商品も多いので、「ここで買う必然性」がちゃんとあります。もっとも、オリジナルブランドも、人気がなければ何の意味もないことになってしまいますが、それでも特徴を出してちゃんと存在価値を創出しようという企業努力を感じますし、日本のローソンの商品開発力と最先端のマーケティングのスキルも何かしら関与しているものと思われるため、日本人としては頼り甲斐がある気持ちになります。
タイのコンビニの特徴
タイのコンビニの品揃えカテゴリーは、基本的には日本のコンビニと大きくは変わりません。
飲み物、お菓子、トイレタリー、パン、冷凍食品、雑誌、等々。
電子レンジで温めて食べる弁当も売られていますが、こちらは当たり前ながら基本的にタイ料理。定番料理の一つ、鳥バジル炒めご飯などが安定の人気があるようですが、値段としては、ほぼ40バーツ前後(約120円)程度ですから、日本のコンビニ弁当と比べるとかなり安いですね。
一点、日本のコンビニと大きな違いは、酒類を売る時間が限られているということ。1日に2回の時間帯しか売っていけないことになっているのですが、昼帯の11:00-14:00と夜帯の17:00-24:00です。これは、特にコンビニに限らず、タイの法律でそうなっているため、どこの酒販売店でも同様なのですが、コンビニは影響力も多く店舗数も多いためか、メチャクチャ厳しくその時間を守ろうとします。
もう、1分でもその時間を過ぎると、絶対に売ってくれません。
タイでも今時コンビニでは、レジでの販売もすべてPOS管理されており、販売した商品が売り上げの時間とともにデータとして残されてしまうので、もしルール違反がのちに発覚してしまうと、経営主体も売り子のバイトも大変なことになってしまう、ということなのだと思います。
酒飲みの自分としては、数少ないバンコク生活での不満の一つです。
郊外では主流のガソリンスタンド併設型
またタイのコンビニの立地の一つの特徴として、ガソリンスタンド併設店が非常に多いということが言えます。
鉄道インフラの発達が遅れているバンコクは、基本的には車社会なので、必然的にガソリンスタンドが非常に重要な機能を持つことになります。
コーヒーショップ、レストラン、寿司屋(タイ人がやっているニセモノ寿司ですけど)があるような場所すらあります。
特に、バンコク郊外やバンコク市外のガソリンスタンドは敷地も広いため、ほぼ確実にコンビニがあります。
ただ、当たり前といえば当たり前なのですが、ガソリンスタンド敷地内のコンビニには、酒類の設置が最初からありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?タイのコンビニの状況。
3ブランドとも、外見は日本で見慣れた看板と同じですが、中身はやはり基本的にタイ流です。
ガリバー、セブンイレブンはやりたい放題で、圧倒的な店舗数により何をやってもダイレクトに商売になってしまうという、完全に市場リーダーのマーケティングですが、マイナー2ブランドは、それぞれの母体の経営の特徴が売り場に色濃く出ていることが伺え、なかなか面白い市場競争の様子を見ることができます。
個人的には、セブンイレブンの対抗して、他の2ブランドのより一層の奮起と差別化施策に期待したいところです。
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