バンコクには、多くのレストランでBGM代わりに生演奏を入れています。
演奏されている曲は、比較的軽いポップスの雰囲気のものが多く、殆どの場合が英語です。
そのため、音楽を聴くことが優先されるいわゆるライブハウスというタイプのお店が少ないように思います。
そんなバンコクにあって、Jazzだけはちょっと別格のようで、歴としたライブハウスがいくつかあります。もっとも有名なのは、Victory Monumentという場所にある、サキソフォンというライブハウスなのですが、ところどころ郊外にも良いお店があったりします。
今回は、その郊外型のライブハウスに、タイのジャズマンの代表格であるKOH Mr. Saxmanさんのサックスを聴きに行って参りましたので、その状況をレポートしたいと思います。
タイでのJazzの位置付け
タイは東南アジアの国ですし、またJazzはアメリカ発の音楽ジャンルですね。
なんとなく、タイでJazz?というと、何かフィットしないというか若干違和感を感じられる方が多いのではないかと思います。
ところが、ここタイでは、Jazzを好む方は比較的多いのですね。
なぜかというと、2016年に亡くなったプミポン前国王が非常にJazzを愛されておられまして、ご自身もSaxを演奏されていましたし、また国王ご自身が作曲されて曲も全部で48曲あるそうです。
そして、国民には絶大な人気のあった王様でしたから、彼が愛した音楽を国民もフォローする形でJazzに触れる機会が多かったと思われます。
実際、2016年10月に亡くなった直後は、すべてのテレビ局が特別番組をほぼ一ヶ月近くに渡って繰り返し放映していましたが、そこで使用されているBGMはほぼ全て、元プミポン国王による作曲のものでした。
タイを代表するアーティストKOH Mr.saxmanさん
比較的ジャズが浸透しているタイですので、比較的多くのJazzプレイヤーもいます。
その中でも、もっとも有名で人気のあるサックスプレーヤーがKOH Mr. Saxman(コー・ミスター・サックスマン)さんです。
本名は、コー・セックポン・ウンサムラーン。1973年の生まれです。
幼少の頃から音楽に触れ始め、当初はドラムやクラリネットなどもやっていたようですが、サックスに出会ってからメキメキと腕を上げ、国際的なレベルのミュージシャンになりました。
1991年 コケミュージックアワード最優秀ミュージシャン賞
1991年サイアム・コラカーン サックス部門優勝
1993年 ネスカフェミュージックフェスティバル サックス部門優勝
1994年 タイランド・ミュージック・アソシエーション サックス部門優勝
などなど、輝かしい記録を残しています。
彼は、基本的にはアルト・サックスを吹きます。そして、彼のテクニックはもちろんのこと、その音色が本当に素晴らしい。非常に滑らかで美しい音を奏でます。
間違いなく彼のサックスプレイは、世界のトップレベルにあると思います。
また、とてもひょうきんな性格で、旺盛なサービス精神と人懐っこい笑顔で、周りの人を温かい気持ちにしてくれる方です。
これは、ファンが多く付くのもよく分かります。
めちゃくちゃ辺鄙な場所にあるライブハウス
たまたま日本の友人の知り合いだった関係から、コーさんのことを知っていたのですが、ちょっとした縁で、偶然にも彼主催のライブに伺えることになりました。
一度、聴いてみたいと思っていたところちょうど良い機会だったので、友人の車に便乗し、そのライブハウスまで出向いて行ったのです。が、場所はノンタブリーという中心街から30kmくらい慣れた郊外にあります。とにかく街中から遠いし、道中渋滞もあり、しかも店のロケーションが極めて分かりにくい。
目抜き通りから路地に入って、さらに団地のような区画の中まで入って行きます。そして、表に看板もサインも無い。店にたどり着くのも一苦労です。
店の名前は「JAZZ SHUSHI」で、寿司を中心に和食がメインのお店です。どうやら、寿司をつまみながらジャズを楽しむ、というコンセプトのようです。
アイデアは良いと思いますし、お店は清潔で広さも丁度よく、また音も良いので、とても良いライブハウスなのですが、一体なんでこんな辺鄙なところなのでしょうかね?
どうやら、以前はスクンビット界隈の街中にあったようなのですが、引っ越してこの場所になったのだとか。
ナイトライフは車移動が基本のバンコクなので、駐車場の確保出来る郊外に店を移すことは悪いこととは思えませんが、それにしてももう少しアプローチがしやすい店はなかったのかと思ってしまいます。
でないと、せっかくの良い演奏も、この距離と場所の不便さが障害になって客足に支障を来たす筈。
最高のサックスプレイ
この日のセッションは、サックス、ピアノ、ドラムス、ベースのカルテットでした。ピアノはタイ人、ドラムスは日本人の方だったようです。ベースは、意外にも珍しいロシア人の方。途中で、タイ人のギターが加わり、また2、3人ボーカルも登場しました。
20:30からのスタート予定が、時間が押しに押して、スタートしたのは21:30近くで、終了したのは23:30くらいです。まぁこんなところもアメージングタイランドといったところでしょうか。
上にもご紹介しましたが、コーさんのサックスの演奏は本当に素晴らしいです。
もともと持っている音色が美しいのに加えて、表現力の幅がとても広い。
曲は、スタンダード的なジャズから、ポップスっぽい曲からフュージョンまで、幅広いジャンルでした。
全体の演奏としては、まぁまぁと言ったところ。ベースのロシア人の方は、とても良いベースでした。熟練のテクニックも太い音色も気持ちが良く、全体をうまくサポートしていましたね。ただ、ドラムスがもう少し締まると、全体がもっとずっと良くなるのに、とちょっと残念ではありました。
途中、リクエストを聞かれたので、なんとなく会場全体の雰囲気から、ビリー・ジョエルの「素顔のままで」をリクエスト。
「いやー初めてだから、どうなるかなー」などと言いつつ、会場から一人女性のゲストボーカルを呼び込み、とても良いアレンジの「素顔のままで」を演奏してくれました。
コーさん、コンップンカップ!
まとめ
タイにでもある程度定着しているジャズ人気。今後、もっと多くの若いジャズプレーヤーも参入してもらって、ますますタイ及びバンコクのジャズシーンを熱くしてもらいたいと思います。そして、定期的にライブハウスに足を運び、引き続きタイのジャズシーンをフォローして行きたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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