冬になると流行するインフルエンザ。日本では、マスクなどでの対策が一般的ですが、アメリカでは、インフルエンザ用の予防注射=「flu shot(フルー・ショット)」が盛んです。
便利なのは、わざわざ病院に行かなくても、ドラッグストアやホームセンターで flu shot が受けられること。これからアメリカ生活を始める方、次のインフルエンザの流行に備えて、この記事で予防接種の受け方を予習しておきましょう!
あちこちで見かける「flu shot」の広告
秋に入ると、アメリカのドラッグストアやホームセンターの店頭で、「flu shot」と書かれたポスターが目につくようになります。
「flu」とは、「influenza(インフルエンザ)」の略。「shot」は、注射のこと。つまり、このポスターは「インフルエンザの予防接種を受けましょう!」という広告なのです。
ドラッグストアで受けとる処方薬の袋に、flu shot の広告が。
日本と違い、アメリカでは、医師だけでなく、資格を持った薬剤師も、ワクチン等の接種を行うことができます。
スーパーマーケットやホームセンターでも、店内の一角に処方薬局があり、薬剤師が常駐しているという店舗が少なくありません。
そうした店では、「ショッピングのついでにflu shotを受けましょう」と宣伝したり、flu shot を受ける人に割引クーポンを発行したりしていますが、まさに、その気軽さ、お得さが、ワクチンの接種率アップに貢献しているようです。
インフルエンザワクチンの種類
インフルエンザのワクチンは、対応しているウイルスの型や、接種の方法によっていくつかの種類があります。
2016年現在、一般的に流通しているワクチンは次のとおりです。医療機関でも、薬剤師のいる店舗でも、共通して提供されています。
対応しているウイルスの種類:
- Four-strain(Quadrivalent):4価ワクチン。A型インフルエンザ2種類、B型インフルエンザ2種類に対応。近年、新しく導入された。
- Three-strain(Trivalent):3価ワクチン。A型インフルエンザ2種類、B型インフルエンザ1種類に対応。
- High-dose:3価高用量ワクチン。 65歳以上向け。3価ワクチンと同じ種類のウイルスに対応していますが、免疫のつきにくい高齢者のために、ワクチン成分の濃度を高めてあります。
接種方法:
- Intramuscular injection(イントラマスキュラー・インジェクション):筋肉注射ワクチン。一般的なインフルエンザワクチンはこのタイプです。
- Intradermal injection(イントラダーマル・インジェクション):皮下注射ワクチン。筋肉注射よりも短く細い針で、皮膚の下に注射。筋肉注射よりも痛みが少ないとされています。接種できるのは、18歳から64歳まで。
- Intranasal vaccine(イントラネイザル・ヴァクチン):鼻腔内スプレーワクチン。注射ではなく、鼻の中にスプレーし、粘膜からワクチンを体内に吸収させます。
※2016年から2017年にかけては、有効性が低いとの研究結果に基づき、鼻腔内スプレーワクチンは提供されていません。
2016年秋に、本記事のライターが flu shot を受けた際には、特に指定しなくても4価(quadrivalent)ワクチンの接種を受けることができました。
皮下注射ワクチンは早い時期に在庫がなくなったそうで、筋肉注射でした(幸い、痛みはほとんどなく済みました)。
Flu shot の手順1:受付・支払い
では、実際に flu shot を受ける方法を、薬剤師による接種の例で説明します。
先ほどご紹介したように、薬剤師から接種を受ける場合には、基本的に予約は不要です。
健康保険証(insurance card)を持参して調剤薬局に行き、もし「Flu shot here」などと書かれた指定の窓口があれば、そこへ向かいます。
薬剤師に「I would like to have a flu shot」(Flu shot を受けたいのですが)と伝えれば、手続きをしてくれます。
氏名と生年月日、保険の種類などを聞かれた後は、調査票に回答します。
大手ドラッグストアチェーンの「CVS」では、以下のような質問を行っています(2016年現在)。
- 現在、寒気・発熱・急病などの体調不良があるか
- 食品、医薬品、ワクチン、ラテックス(天然ゴム)などへのアレルギーはあるか
- 抗血液凝固剤を摂取しているか
- 心臓病、肺疾患、喘息、腎疾患、代謝疾患(糖尿病など)、貧血や血液疾患があるか
- 脳卒中や、脳・神経系の問題が起きたことがあるか
- 妊娠中・授乳中か
注射の跡には絆創膏を貼りますので、接着剤やラテックスのアレルギーのある方は、調査票に明記しておきましょう。
調査票の裏面が、予防接種の同意書です。オレンジ色の枠で囲まれた部分に、署名と今日の日付を書き入れます。その下には、使用するワクチンの情報が書かれています。
調査票への記入を終えたら、会計用の窓口に並びます。順番が回ってきたら、調査票を渡しましょう。
調査票の内容に問題がなければ、会計の手続きが始まります。
健康保険でカバーされている場合には、自己負担なしか、20ドル程度の自己負担。薬局での flu shot に健康保険が対応していない場合には、40ドル弱の自己負担になります(いずれも2016年現在)。
Flu shot の手順2:接種
支払いが終わったら、いよいよ接種です。
窓口の横にある、ついたて付きの机や、場合によっては従業員用休憩室の一角で行われることもあるようです。
筋肉注射の場合には、二の腕のかなり上の方に打ちますので、肩や二の腕まで出せる服(注射による接種の場合)を着ていくと便利です。
接種箇所を消毒し、トン、と軽く注射を打てばもうおしまいです。注射の跡には絆創膏を貼ってもらいます。
窓口に行ってから、早ければ10分、遅くても1時間以内には、接種が完了するかと思います。
サンクスギビングやクリスマスなどの祝日前には、flu shot の接種や処方薬の受け取りで窓口が混雑しますので、そうした時期は避けた方が良いかもしれません。
ワクチンの説明が書かれたシール。手帳などに貼って、接種の記録をとっておくことができます。
医師と薬剤師、どちらから受ける?
さて、ここまでは薬剤師に flu shot をしてもらう例を紹介してきましたが、場合によっては、医療機関で医師からワクチン注射を受けた方が良い例もあります。
下に、医師による接種と、薬剤師による接種、それぞれの利点と難点をまとめてみました。
★ 医師による接種《利点》
- 小児(5歳未満)や妊婦の接種にも対応
- 健康保険の種類によっては、医師による接種であれば自己負担費用なし(※)
- 体調やアレルギーなどの不安があれば相談できる
※一方で、薬剤師による接種と、医師による接種、どちらもカバーしてくれる保険もあります。保険会社のサイトなどで確認しておくと良いかもしれません。
★ 医師による接種の《難点》
- 予約がとりにくい(数週間待ちになることも)
- 自分の健康保険に対応している医療機関・医師を探す必要あり(特に、かかりつけ医がいない、普段は病院にかからない…という方にとっては、なかなか面倒)
- 健康保険の種類によっては、ワクチン代に加えて診察費も加算され、負担が大きくなる
☆ 薬剤師による接種《利点》
- 予約なし(walk-in)で受けられる薬局も多い
- 診察費はかからない。健康保険の種類によらず、ワクチン代を払えば接種できる。健康保険の種類によっては、自己負担なしで接種できることも
- 買い物のついでに接種できる。買い物の割引クーポンがもらえる場合も
☆ 薬剤師による接種《難点》
- 小児(5歳未満)や妊婦には対応していない
- 健康保険の種類によっては、ワクチン代(20〜40ドル程度)が全額自己負担
手軽に接種を受けたいのであれば、薬剤師に flu shot を打ってもらうのが良いかもしれません。
ただ、薬剤師では対応できなかったり、かかりつけ医に相談したいことがあったりする場合には、医師の接種を選ぶのが良さそうです。
まとめ
いずれにしても、流行が本格化する前にワクチンを接種しておくのが大切です。
早めに準備を始めて、アメリカの冬を少しでも安心して過ごしましょう!
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