11月末の感謝祭から12月にかけて、アメリカの街はホリデームードに包まれます。
アメリカ西海岸のカリフォルニア州では、アメリカ・世界各地から集まった人々が、アーティストの多いこの地で生まれたクリスマス物語を楽しんだり、キリスト教以外の年末行事を祝ったりと、思い思いの形でホリデーシーズンを過ごしています。
この記事では、カリフォルニア在住のライターが、現地で体感したホリデーの様子をお届けします。
冬になったらモミの木を買いに…
11月の後半頃から、カリフォルニアの街角では、大きな木を積んだ車を見かけることが増えてきます。運ばれているのは、生のモミの木…そう、クリスマスツリーです。
ピックアップトラックの荷台だけでなく、セダンタイプの乗用車の屋根にも、モミの木がくくりつけられているのを見かけます。
こうしたクリスマスツリーは、大型量販店の店頭、ショッピングモールの駐車場に作られる特設販売所、そして、郊外にあるクリスマスツリー農園(tree farm)などで購入することができます。
家族みんなでツリー農園に行き、サイズや枝ぶりなどを見ながらお気に入りの1本を選ぶのが、毎年の恒例行事になっている家庭も多いのだとか。
「モミの木のにおいを嗅ぐと、ホリデーシーズンが近づいてきたことを感じる」という人も。
多くのツリー売り場・農園では配送も行っていますが、選んだ木をすぐに持ち帰るのも、ワクワクして楽しいかもしれませんね。
ホリデーシーズン恒例のアニメ
アメリカのホリデーシーズンの恒例になっているのが、テレビアニメ「A Charlie Brown Christmas(ア・チャーリー・ブラウン・クリスマス)」の全国放映です。
日本でもおなじみの、チャーリー・ブラウンやスヌーピーが登場するこのアニメは、クリスマスツリーにまつわるストーリーになっています。
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チャーリー・ブラウンの友だちは、たくさんのプレゼントをねだったり、派手なツリーを飾ったりすることに夢中。飼い犬のスヌーピーまでが、犬小屋をライトでデコレーションしています。
商業化されすぎたクリスマスにうんざりしたチャーリー・ブラウンは、「クリスマスとは、なんだろう?」という疑問を感じ、友人のライナスに相談します。
クリスマスのための劇の準備を通じて、クリスマスの原点を探っていく子どもたち。
ツリー農園の片隅でチャーリー・ブラウンが見つけた、小さな頼りないクリスマスツリーが、フィナーレでは舞台の中心を飾ります。
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原作者の故チャールズ・M・シュルツ氏のスタジオ、そして、アニメを製作したリー・メンデルソン/ビル・メレンデス・プロダクションは、いずれもカリフォルニア北部にあり、カリフォルニア州の人々にとっては特になじみ深い作品です。
挿入曲となっているジャズナンバー、「Linus and Lucy(ライナス・アンド・ルーシー)」は、このアニメのイメージと相まって、クリスマスソングとしてのイメージも持たれているようです。
12月になると、明るく力強いピアノから始まるこの曲が、ラジオからよく流れるようになります。
「グリンチ」のクリスマス物語
さて、カリフォルニア生まれのクリスマスストーリーを、もう一つご紹介します。
その作者は、「Dr. Seuss(ドクター・スース)」のペンネームで活動した絵本作家、セオドア・スース・ガイゼル氏です。
第2次世界大戦後、カリフォルニア州南部のラホヤに移り住んだドクター・スースは、子どもたちが英単語を楽しく覚えられるよう、『The Cat in the Hat(ザ・キャット・イン・ザ・ハット)』など、言葉遊びをたっぷりと盛り込んだ名作絵本を、次々と世に送り出しました。
1957年に出版された『How the Grinch Stole Christmas!(邦題:グリンチ/いじわるグリンチのクリスマス)』も、その一つです。
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雪山に暮らす、不機嫌な生き物「Grinch(グリンチ)」は、ふもとの村で行われているクリスマスの騒ぎが気に入らず、プレゼントやツリー、ごちそうを奪って、クリスマスが来ないようにしてしまおうと考えます。
サンタクロースの変装をし、飼い犬のマックスにもトナカイの格好をさせて、クリスマスにまつわる品物を盗んでいくグリンチ。盗みを終えた彼が、夜明けとともに目にする光景とは…?
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ドクター・スースの暮らしたラホヤに近い、カリフォルニア州サンディエゴの Balboa Park(バルボア・パーク)では、12月にグリンチの劇が上演されます。
劇場前には、絵本の世界観を取り入れたツリーも展示され、ドクター・スースへの親しみや敬意が感じられます。
ユダヤ教の祝日「ハヌカー」
ところで、アメリカはキリスト教徒の多い国ですが、各国からの移民やその子孫が多いカリフォルニアでは、他の宗教・文化圏の行事を祝う様子もよく見られます。
その中でも、ちょうど、11月から12月のホリデーシーズンに重なるのが、ユダヤ教の清めの祭り「Hanukkah(ハヌカー)」。
年によって異なりますが、2016年は12月24日、2017年は12月12日が、ハヌカーの初日に当たります。
近年では、店頭で売られているクリスマスカードの隣に、ハヌカー用のグリーティングカードを見かけることも増えました。
清めの精油が8日間燃え続けたという逸話に従い、ハヌカーの行事は8日間続きます。
8つのオイルランプ(現在はろうそく)を1日1つずつ灯していき、油を使った料理(揚げドーナツなど)を食べるのが、伝統的なハヌカーの過ごし方だそうです。
子どもたちは、四角錐の形をしたコマ「Dreidel(ドライデル)」をもらい、それを使って子ども同士で遊びます。
コマの4つの側面には、サイコロのように1つずつ文字が書かれていて、出た面に応じて、コイン型のチョコレートをやり取りするそうです。
また、現在では、子どもにクリスマスプレゼントのような贈り物をする家庭もあるそうです。
カリフォルニアの大手デパートやベーカリー、キャンディーショップなどでも、ハヌカー仕様のギフトを販売しています。
飲食物の場合、ユダヤ教の規則に従っていることを示す「Kosher(コーシャ)」のマークがついています。

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サンフランシスコ発祥の「See’s Candies」では、クリスマスだけでなく、ユダヤ教の行事「ハヌカー」のためのチョコレートギフトも販売。ユダヤ教の規則に従った食べ物であることを示す「Kosher」マークつき。
まとめ
さまざまな文化圏からやってきた人々が共存し、リベラルな気風が強いカリフォルニア。
ホリデーシーズンの挨拶も、宗教や文化の違いに配慮して、「Christmas」の言葉を使わずに、「Happy Holidays!」と言うことがほとんどです。
現地でホリデーを過ごされる皆さんも、ぜひ、その多様なお祝いムードを味わってみてください!
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