ローマの4大聖堂を訪ねてみよう!その4

ローマ

サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂(BASILICA DI SAN PAOLO FUORI LE MURA、バジリカ・ディ・サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ)

 

古代ローマ時代、アウレリアス城壁の外にあった聖パオロを祀るサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂。現代でも、そのほかの著名な観光地から少し離れているために、4大聖堂の1つでありながら、知名度が低い大聖堂。その分、観光客であふれるその他の大聖堂と違い、ゆっくりと静寂した雰囲気の中でじっくり見て回れます。ここでは、この大聖堂のほか、この近くの穴場の美術館、そして、教会を見るときに役立つキリスト教芸術の見方についてもご紹介します。

聖パオロとは

この大聖堂に祀られているのは、初期キリスト教の重要な12使徒のひとりで、新約聖書の著者としても知られる聖パオロです。キリストの直接の弟子で初代ローマ法王となった聖ピエトロと一緒に、キリスト教総本山のローマ市の守護聖人とされている重要な人物です。

ところが意外なことに聖パオロはキリストの12使徒ではなく、もともとは熱心なユダヤ教徒で、キリスト教の最初の殉教者である聖ステファノの投石刑の場にも立ち会ったとも言われるほど、逆にキリスト教徒を迫害していた立場にいました。ところがイエスの声を聞いたのをきっかけに、キリスト教に改宗したというユニークな経歴の持ち主です。イエスの幻を見て馬から落ちるパオロの姿は、「パオロの回心」(CONVERSIONE DI PAOLO、コンヴェルシオーネ・ディ・パオロ)というタイトルで、たくさんの画家によって描かれています。

キリスト教改宗後はローマ帝国内を布教するために、イスラエルから果てはスペインまで何度も旅をして回り、あちこちから書き送ったたくさんの手紙が当時の貴重な資料として、「使徒言行録」に残されています。ついには、ネロ帝治世下におけるキリスト教徒の迫害にあい、おそらく聖ピエトロと同じ時期に殉教したと言われています。

サン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂

この大聖堂も、キリスト教を公認したコスタンティヌス帝の命により、聖パオロの墓の上にあった聖パオロの記念堂を基に建てられました。その後、数々の改修を重ね拡張し続けた大聖堂は、現在のサン・ピエトロ大聖堂が完成するまでは、キリスト教世界でも有数の大きな美しい教会としてその名を馳せてきました。

教会前には、まず146本の柱に囲まれた大きなアトリウムがあり、荘厳な中にも華やかな解放感が広がっていて特徴的な空間を形作っています。晴れた日には、まるで南国にいるかのような雰囲気の特徴的な大聖堂です。

入り口には、一番に左に聖なる扉を含む五つの扉が並び、中へ入ると幅が60メートル、高さ30メートル、奥行は131メートルもあり、80本の大理石の柱が4列に並んでいるという壮大なバジリカ式の大聖堂です。

後陣のモザイクに向かって進んでいくと、法王専用の祭壇の下には、聖パオロのお墓があり聖パオロが牢屋でつながれていた時の鎖も見ることができます。この13世紀に造られた後陣のモザイクは、使徒に囲まれたキリストという重厚な尊厳さを美しく表現しています。

実は残念ながら、この美しい大聖堂は1823年に大火事が起きて、大半が焼失してしまっています。1450年の聖年でローマを訪れた巡礼者の記述には、この大聖堂は、イエスキリスト自身の木の小さな十字架や、殉教した聖ステファノの腕や、イエスキリストの祖母、聖アンナの腕、そして数々の聖人の骨など、数々の貴重な聖遺物であふれていた、ということが記されています。この大火事は、これらの15世紀にわたるお宝の数々を焼きつくしてしまったのです。

19世紀になってから再建された大聖堂とはいえ後陣のモザイク画をはじめとして、入り口にある旧約・新約聖書を描いたブロンズの扉、12世紀に作られた復活祭用の燭台や、アルノルフォ・ディ・カンビオの祭壇などは奇跡的に焼け逃れ、今でも当時の面影を見ることができます。大聖堂正面に輝やく聖パオロと聖ペトロ、そしてキリストのモザイク画も、19世紀末の作品ですが、10世紀のオリジナルな図案に基づいたものだけに、純粋な信仰を感じさせる美しさです。

この大聖堂で、特におすすめなのは回廊(CHIOSTRO、キオストロ)です。この美しい柱廊で囲まれた中庭は、例の大火事の惨事を免れ、サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂と並んで、ローマ有数の見事さです。ローマの観光に少し疲れた時に、少し足を延ばしてゆっくり瞑想してみるのにもぴったりです。

 

サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂

住所:VIA OSTIENSE、186(地下鉄B線「SAN PAOLO、サン・パオロ」駅下車すぐ)

開館時間:7時~18時30分(回廊は9時~13時、15時~18時、入場料4EURO)

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キリスト教芸術を楽しむためのミニ知識

 

この教会でも、数多くのキリスト教の聖人の彫刻、絵画がありますが、だれを表しているかは、その持ち物などで判断することができます。少しでもわかると、教会の鑑賞が楽しくなります。サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂には、聖パオロがいくつも登場しているので探してると楽しいです。

聖パオロ:長いあごひげが目印で殉教のときに使われた剣を持っている。

馬から落ちて地面にあおむけの人。

キリスト:頭の上に金色の輪が輝いていて、通常画面の中央にいる。

十字架にかけられているか、十字架から降ろされた様子。

洗礼のために川の中にはいって頭を垂れている。

玉座に座っている。

または、頭上に金色の輪が輝く子供の姿で、聖マリアに抱かれている。

聖マリア:赤ちゃんのキリストを抱いている。青い服を着ている女性。

聖ペトロ:初代ローマ法王として、キリストから渡された天国の鍵を持っている。

初老の漁師だったので、短い白いひげで粗野な感じの人。

十字架に逆さにかかって殉教したときの様子。

聖ステファノ:殉教時の石を頭に投げられた人。

聖セバスティアヌス:殉教時の矢を何本も裸体に刺されている人。

洗礼の聖ヨハネ:裸に動物の皮をまとい、槍を持っている大人。

または、幼児の姿のキリストの隣にいる槍を持った子供。

 

モンテ・マルティーニ美術館

 

せっかく「壁の外」まで来たのなら行ってみたいのが、近くにある穴場の美術館、モンテ・マルティーニ美術館(SCULTURE DEI MUSEI CAPITOLINI CENTRALE ALLA MONTEMARTINI、スクルトゥーレ・ディ・ムセイ・カピトリーニ・チェントラーレ・アッラ・モンテマルティーニ)です。大聖堂を出て、ピラミデ方面に広いオスティエンセ街道を進むと、道路の左側に出てきます。

ここは、元の発電所を美術館に改装したという面白い美術館。しかも、展示品は、ローマ市の美術館カピトリーノ美術館の収蔵品、約400点です。ギリシア時代の彫刻、ローマ時代のモザイク、装飾品など、価値のある作品が斬新なスタイルで並んでいます。少し離れた場所にあるうえに入り口が少しわかりにくいのですが、いつでもゆっくり鑑賞できます。

 

住所:VIA OSTIENSE、106

電話:06.5748.038

開館時間:9時~19時、(12月24日、31日は14時まで)月曜休み

入場料:7.5EURO、6.5EURO(6歳~25歳)

カピトリーニ・カードCAPITPLINI CARD

カピトリーニ美術館との1週間有効の共通券

16EURO、14EURO(6歳~25歳)

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