チューリップが咲き乱れる春はもちろん、夏場や秋にも、アムステルダムの中心街は観光客でにぎわいます。老若男女、誰しもが最初見とれてしまうだろうものが、アムステルダム独特の街並みです。特にお天気の良い日には、運河沿いの街路樹、そして美しく並んだ個性的な建築に目が行きます。よく観察してみると、運河沿いの建物はそれぞれ装飾や色などのスタイルが異なるものの、縦に細長く伸びていること、そして家の正面(ファサード)の天辺が三角形のとんがり屋根になっていることが共通しています。
そのような運河沿いの家々に魅了されてしまった人にぜひおすすめしたいミュージアムがあります。それが、今回ご紹介する運河ハウスミュージアム(Museum Het Grachtenhuis)
です。
町の歴史を体現する運河ハウス
外観をぱっと見ると、特別な点はなく、運河沿いの家のうちの一軒にすぎないように見えますが、こちらの「運河ハウスミュージアム」を訪れれば、アムステルダムの街が作られた歴史の一幕を体験したような気分になれるんです。
チケットは、オンラインのチケットセンター(http://www.hetgrachtenhuis.nl/en/plan-your-visit/admission/)で購入すれば、当日に購入するよりも安くなってお得です。訪問する当日にチケットカウンターで買う場合の価格は、大人12ユーロ、6歳以上17歳以下は6ユーロです。
チケットを購入後、スタッフが無料の音声ガイドとヘッドホンを渡してくれました。筆者は英語のものを使ったのですが、事後によく調べてみると、日本語版のガイドもちゃんと用意されているようなので、訪問した際にはぜひ「音声ガイドは日本語で!」と受付のスタッフに頼んでみてくださいね。
スタッフに「あと4分でビジュアルツアーが始まるので、ミュージアムショップ内でお待ちください」と言われて少し待つことになりました。ビジュアルツアーって何だろう、と思っていましたが、せっかくなので参加してみることにします。時間になると、スタッフの指示に従って、筆者の後に来たカップルと一緒に会場に上がりました。暗い室内にみんなで入室します。
スタッフのお兄さんが「音声ガイドの機械に『101』、と入力してお待ちください」と声をかけると、ビジュアルツアーなるものがスタートしました。
映像と音声を生かしたバーチャルツアー
真っ暗な室内で何が起こるのかと思ったら、アムステルダムの街を象った白い模型とその背景のスクリーンに、いろいろなカラーの映像が映し出され、音声での説明が同時に始まりました。
16・17世紀にオランダ・アムステルダムが世界最大規模の貿易港となり、市民による自治が始まったことや、商業活動が盛んになるにしたがって、町の人口も爆発的に増えていったことなど……映像と音声によって、歴史の1シーンが鮮やかによみがえるようです。町として、より多くの人を受け入れるために一体どのように変化するべきなのか? という問いかけで、最初の展示室のガイドは終わります。続きが気になりますよね。
次の部屋に移動し、部屋の壁に書かれている通り、音声ガイドのボタンを「102」と押すと、展示室の中央にあるテーブルの上に映像が映し出されたり、部屋の壁にかかっている古い街の地図などの資料がライトアップされたりと、音声ガイドの説明に同期して、室内の様子が変化します。裏庭が見える窓のシャッターが自動的に空くしかけも面白かったです。
17世紀の街づくり会議に参画!?
この展示室では、アムステルダムの街がどのような環境や理想のもとに都市計画され、デザインを施されたのかが、私たちも「17世紀の都市改革責任者たちの会議に参加している」かのように、会話形式で描き出されます。当時の責任者たちの予算を巡る試行錯誤や、「こんな機会だから、他にない、理想の美しい街を作り出そう!」という熱い思いなど、いろいろな観点からアムステルダムの街づくりについて学ぶことができます。
他にも、アムステルダムの立体地図や歴史的な映像資料も鑑賞することができました。ミニチュアの運河の家々を巨人になった気分で覗き込むことができる展示や、主に17世紀になって建造されたアムステルダムの街の地盤を支えているパイン材の木杭から地上の建物に至るまで、どのように築き上げられてきたのかがわかるようになっています。
全体的にアトラクションのような要素が多くて、体験型の展示でアムステルダムの街や運河沿いの家々が現在の姿になるまでの歴史が学べます。楽しくて、秀逸なガイドツアーだと思いました。小学生くらいの子どもなら飽きずに楽しめそうな仕掛けがたくさんあったので、子連れの方にもおすすめです。
ビジュアルツアーは、合計30分間ほどで終了しました。所要時間がそれほど長くないにもかかわらず、情報量は多くて、とても充実しています。
ミュージアムのスタッフは、常時ツアーに付き添ってくれるわけではありませんが、展示室を移る際に、「いかがですか?」と声をかけてくれて、その時に疑問・質問を投げかけることができます。より深く運河沿いの家々について知りたい方には、絶好のチャンスです。
物語を通して街の歴史に触れる
ビジュアルツアーが終わって地上階に戻ると、この運河ハウスがミュージアムになる前、この家を所有して使っていたアメリカの貿易商人の物語が、展示ボードとアニメーション映像で説明されていました。この他、壁全体に絵画が施されたダイニングルームや窓から運河が覗けるカフェ風のスペースという合計3部屋がありました。
ビジュアルツアーのインパクトがかなり強いので、地上階の展示室はそれほど印象に残りませんでしたが、実際の運河ハウスの一例として見学できました。
アムステルダムを散策していて、その街並みが気に入ったら、その成り立ちについても学んでみませんか。そのきっかけになるのがこの運河ハウスミュージアムだと思います。訪問の際には、比較的手短にまとめられていて、内容も充実したビジュアルツアーをお見逃しなく。
インフォメーション
名称:運河ハウスミュージアム(Museum Het Grachtenhuis)
住所:Herengracht 386, 1016 CJ Amsterdam
開館時間:火曜から日曜10:00~17:00
公式ウェブサイト:http://www.hetgrachtenhuis.nl/en/
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