前回はかかりつけの医者の選び方や、健康保険のきく病院ときかない病院のそれぞれの利点や欠点など、オーストリアの病院に行く際に知っておくと便利ないくつかの基本情報をお話ししました。今回も続けてオーストリアの病院情報についてお話ししていきたいと思います。
病院の予約は絶対に必要?
具合が悪くなったり、怪我をしたときに訪れる病院ですが、病院には予約が必須な病院と、予約なしでも大丈夫な病院があります。
診察のために予約が必要な病院は、ホームページや病院の玄関に
「Nach Terminvereinbarung」(ナーハ・テルミンフェアアインバールンク)
「Nach Voranmeldung」(ナーハ・フォアアンメルドゥンク)
など、予約が必要だとはっきりと表記されているはずです。
このような病院では、予約なしで行っても診てもらえません。必ず事前に電話をして予約をとるようにしてください。
これに対して、予約なしで大丈夫な病院は、何も書かれていないか、「Terminvereinbarung ist nicht erfolderlich」(テルミンフェアアインバールンク・イスト・ニヒト・エアフォルデアリヒ)などと表記されていると思います。
このような病院は、診療時間内であれば、予約なしでいつ行っても大丈夫です。
ただし、予約なしでも診療してもらえる病院は、とても混んでいて待合室で何時間も待たなければならない可能性もあるため、注意が必要です。
病院に着いたら、まずすべきこと
健康保険のきく病院を受診するのでしたら、まず窓口でオーストリアの健康保険証e -card(イーカード)を提出しましょう。
もしもイーカードを忘れてしまった場合は、窓口で自分の健康保険ナンバーを告げましょう。ナンバーはコンピューターで照合されるため、診察をしてもらうことが可能です。ただし、次の診察の際には必ず持参するようにしてください。
病院によっては、イーカードを忘れている状態で診察を希望する場合、保証金として50ユーロ程度を預けるように言われることもあります。しかしこのお金は、後でイーカードを持って行けば返却してもらうことができます。
このイーカードは、病院の窓口の機械でスキャンされて情報を読み取られた後には、すぐその場で返してもらえます。イーカードは普段から携帯しておくべき大切なカードです。忘れずに返してもらうようにしてください。
病院をはじめて受診する場合は、問診票に必要情報を記入するように言われることがあります。記入する内容は、名前や住所、症状、アレルギーの有無、過去の手術の有無、妊娠中であるかどうかなどです。
全てがドイツ語で書いてあると、さらに具合が悪くなりそうになってしまいますが、この問診票は大切ですので、わからないところは適当にチェックするのではなく、受付の人に質問して正しく書き込むようにしましょう。
窓口で申し込みが終わると、待合室で名前が呼ばれるまで待つように指示されます。
名前が呼ばれたら、診察室に入りましょう。まず問診がありますので、医師の質問に回答してください。ほとんどの医師は英語を話しますので、ドイツ語に自信がない人でも大丈夫です。不安な方は、ドイツ語と日本語の医療通訳をつけてもよいでしょう。
診察が終わると、医師はどの薬を処方するかの説明をしてくれます。
薬を処方されたら
医師の処方箋が必要な薬を処方される場合、薬を受け取るのは診療所内ではありません。
病院で受け取るのはRezept(レツェプト)と呼ばれる薬の名前が書かれた紙、つまり処方箋です。
この処方箋は、診察室で医師が直接目の前で発行してくれることもありますし、一度診察室を出てから、待合室で名前が呼ばれるまで待ち、窓口で受け取る場合もあります。
診察を受けたのが、健康保険のきく病院でしたら、保険外の治療を受けていない限りは、病院内で診察代や薬代を支払うことはありません。
薬を手に入れるために訪れる必要があるのは、Apotheke(アポテケ)と呼ばれる薬局です。
アポテケは、大抵病院のそばにありますが、どこにあるのかわからない場合は病院の窓口で尋ねると良いでしょう。
アポテケ内には、カウンターがあり、カウンター越しに薬剤師が働いています。ここで、病院で受け取った処方箋を提出すると、薬剤師の人が店の奥から指定された薬を持ってきてくれます。
薬は全額健康保険でカバーされていないため、お金を支払って購入する必要があります。
万が一、訪れたアポテケで処方箋に書かれた薬が無かった場合は、他のアポテケを訪れるか、そのアポテケで注文するようにしましょう。
病院には3か月しばりルールが存在する!
オーストリアで健康保険のきく病院に行く場合、そこには3か月しばりのルールが存在します。
このルールでは1年を
・1月から3月
・4月から6月
・7月から9月
・9月から12月
までの4つの期間に区切っています。
そして、1つの期間内には、同じ科には同じ病院しか訪れてはいけない、というルールがあるのです。
[例1]
1月10日に風邪をひいて内科を訪れたAさん。Aさんにとってその内科のお医者さんの印象が非常に悪かったため、もう二度とこの内科には来たくない、と思いました。
Aさんは3月20日に再び風邪をひきました。前回の内科には行きたくないのですが、1月から3月は1期間中ですので、残念ながらAさんは前回通った内科に行かなければなりません。
[例2]
6月15日にBさんは視力をはかるため眼科を訪れました。その眼科の雰囲気が、Bさんには気に入りませんでした。
Bさんは7月2日にものもらいができてしまい、また眼科を受診することになりました。6月15日と7月2日の間はたった半月ほどしかあいていませんが、6月と7月は別期間となるため、Bさんは前回と違う眼科を受診することができます。
ただし例外として、
・行くべき病院の先生が休暇中で、病気の時に病院が閉まっている場合
・旅行中に病気になってしまったので、本来行くべき病院が遠すぎる場合
などの理由がある場合は、1期間内で同じ科でも、違う病院を受診することが可能です。
この3か月しばりのルールが適応されるのは、健康保険がきく病院のみです。
健康保険のきかないプライベートの病院に行く分には、どの期間内に何回病院を変えても全く問題がありません。
1期間内に2度病気になってしまって、1度目にかかった病院にどうしても行きたくない場合は、診察代は自腹になりますが、プライベートのお医者さんを受診すると良いでしょう。
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