オランダといえば、チューリップや風車、木靴がまず思い浮かぶのではないでしょうか。切り花として日本にも出荷されているオランダのチューリップは、まさに国のイメージを代表するお花です。
そのようなイメージを裏切らない素敵なスポットが、アムステルダムから南下した街にあります。それは、キューケンホフ公園という、一年のうち春の8週間だけ限定でオープンする公園です。春にオランダを観光する人やお花好きな方にとっては、絶対に見逃せない観光スポットです。オランダ観光の目玉として有名なキューケンホフ公園の様子をレポートします。
花だらけの美しい庭園
年によってはまだ肌寒い日が続くオランダの春。でも、時折太陽が顔を出すと、街の中や公園に溢れる色鮮やかな花たちの美しさが際立ちます。オランダでは、道端にも見事な水仙やクロッカス、ヒヤシンスやチューリップが咲き乱れていて、立ち止まって見とれてしまうほど美しい街角がいくつもあります。
そんなオランダの中でも、とりわけ見事に花が咲き誇る「世界一美しい公園」と呼ばれているのがキューケンホフ公園です。
キューケンホフ公園は、一年のうち8週間だけ限定で門を開く特別な公園です。園内には、チューリップを始めとするありとあらゆる種類の春の花が咲いていて、ガーデニング好きな人にとっては、まさに夢のような場所です。規模も大きく、32ヘクタールの敷地に、約700万株の花が植え込まれています。
オランダ語で「Keukenhof」は「キッチン・ガーデン」という意味です。15世紀にテイリンゲン城に住む貴族のため、野菜や果物を育てるための栽培地としてつくられたのが歴史の始まりだそうです。アムステルダムのフォンデルパーク(Vondelpark)という公園をデザインしたのと同じランドスケープ・デザイナーが手掛けたイギリス式の庭園で、現在もその姿をベースにして数多くのスタッフによって手入れされ、美しい姿を保ち続けています。1950年に花の咲き誇る公園としてオープンした最初の年から、23万人以上が訪問したという、オランダ国内はもちろん、世界中で有名な、観光客にもとても人気のある庭園です。
花畑の中を散策するひととき
筆者がキューケンホフ公園を訪れたのは、5月中旬を過ぎたころ。閉園が一週間後と近いせいか、見ごろを過ぎたお花畑も見られましたが、園内の場所によっては咲き始めや満開のお花もあり、咲き具合は様々でした。また、パビリオンの屋内の展示が思ったよりもずっと充実していましたので、十分楽しむことができました。何より、満開時よりも人出が少なくて、公園内をゆっくり散策したり、記念撮影をしたりするのには快適でした。
一番の見ごろは、フラワーパレードが行われる4月中旬ごろだといわれています。切り花として出荷するためのチューリップ畑が公園の周りに広がっているのですが、園内からもその外の畑を眺めることができるので、多くのチューリップが出荷のために刈り取られる前の4月下旬より前に来れば、公園内外のお花を合わせて楽しむことができそうです。
こちらが、キューケンホフ公園の入場門。向かって右手にチケットカウンターがあります。チケットは大人が16ユーロ、4歳から11歳までの子どもが8ユーロで、3歳以下は無料。ちなみに、インターネットでも事前に予約ができるので、混雑しそうなシーズンにはオンライン予約をしておくのがおすすめです。
門の左側には、小さなカフェとお手洗い、そしてロッカーがあります。
チケットを門の前でスキャンしてもらって、園内に入りました。さっそく地図を眺めて、反時計回りのルートで回ることにして歩き始めると、すぐにチューリップの溢れる色とりどりの庭園が目に入ってきます。
園内には、一面にチューリップを始めとするさまざまなお花が咲き乱れるお庭が広がっています。その合間には散歩道が整備されていて、ゆっくりと歩いているだけでも色々な趣向を凝らしたガーデニングや多種類のお花が楽しめます。お花畑の間を通り抜けたり、噴水やモニュメントなどのアート作品に触れられたり、記念撮影をしたりと色々な過ごし方ができます。
大きいチューリップは高さが1メートル近くあって、花も両手で包めないくらいのサイズでした。花びらも15センチメートルほどあるでしょうか。チューリップ以外にも水仙やヒヤシンス、桜の木やツツジなど、さまざまな花が咲いていました。ヨーロッパの公園や、ガーデニングが好きな方にはたまらない場所です。
テーマのある花のアレンジメント
2017年のテーマは「ダッチ・デザイン」。20世紀前半に興ったオランダのデザイン運動に関わりのあった抽象画家ピエト・モンドリアンの絵画をイメージしたお花のコーナーが設けられていました。
赤・黄・青、そして白のくっきりとした特徴的なカラーリングや各色のバランスや配置など、モンドリアンの絵に合わせて、お花が植え込まれています。色の配置やバランス、トーンがまさにモンドリアンにインスピレーションを得て制作されたのがわかります。この展示のほかにも、絨毯のように咲かせたお花のモザイクもありました。
日本庭園をイメージしたお庭もありました。竹や熊笹に始まり、楓やツツジなど、ひととき日本を感じる空間でゆっくりと過ごすことができました。
メイン・エントランスから見て左手に少し歩いた場所にあるパビリオン「Julia」の周りには、色鮮やかなチューリップが群になって植え込まれていました。花畑の間には川が流れていて、鴨の親子がのんびりと水上を泳ぐ姿も見られました。川沿いにはチューリップがびっしりと植えられていて、その色が水面に映り、とても美しく、印象に残るスポットです。公園内でもとりわけ素敵な箇所だと思うので、ぜひ見逃さずに訪れてくださいね。
パビリオンも見どころたっぷり
園内には6つのパビリオンが建っています。その中には、さまざまなテーマのフラワーアレンジメントのフラワーショーや、チューリップの歴史や種類について学べる展示や、球根なども取り扱うギフトショップやカフェテリアなどがあります。
1週間ごとに取り換えられるという切り花のパビリオン「Oranje Nassau Pavilion」など、各パビリオンごとに趣向が異なります。その屋内の展示を見て回るだけでもかなり楽しめるので、雨の日にぴったりです。珍しい蘭ばかりのパビリオン「Beatrix Pavilion」は、ハート型のアレンジがとてもかわいらしくて、記念撮影にぴったりのスポットでした。百合のコーナーは、見目麗しいだけではなくとてもかぐわしく、まるで着たように記念撮影できるお花のドレスも素敵でした。
ギフトショップも多数あり、花柄のグッズやポストカードだけではなく、チューリップの球根も多数取り扱われていました。園内にはカフェやレストランも設けられていますが、もし天気が良ければピクニック用にサンドイッチや飲み物を持参して、お花に囲まれながら食事をすると楽しそうです。
子ども連れでたっぷり遊べる公園
子どもたちへのケアが厚いオランダらしく、キューケンホフ公園の中にも、子どもたちが存分に楽しめる仕掛けがたくさん用意されていました。触るとゆらゆらする大きなミッフィー像やミッフィーの絵がついた滑り台など、ミッフィーづくしのコーナーもあります。特大のミッフィー像は、思わず横に並んで記念撮影したくなるかわいらしさです。
園内には、いわゆる「ふれあい動物園」もあります。囲いの中には、ウサギやヤギ、ブタ、孔雀、七面鳥などが歩き回っていて、時間によって動物たちの温もりを感じることができる場所です。夕方になると、小屋に入ってすやすや眠る動物たちが見られました。
その他にも、迷路やクイズコーナーなど、いろいろな遊びがあるようなので、大人はもちろん、子ども連れで遊びに行くとまた違った楽しみ方ができそうです。
ボートや自転車でめぐる花畑ツアー
園内には移設された小さな風車があります。その脇にある小屋でチケットを買えば、園内やチューリップ畑の合間に張り巡らされた運河に沿って、水上からお花を楽しむことができます。5月には畑のお花がほとんど刈り取られてしまっていたので、ボートツアーに挑戦したい方は、チューリップが満開のシーズン(4月中)にぜひ訪れてみてくださいね。園外に広がっているチューリップ畑の周りを自転車で走り回りたい! というアクティブな方には、キューケンホフ公園の入口近くにあるレンタサイクル・コーナーで自転車を借ることもできます。
1日たっぷり滞在しても十分飽きずに楽しめるキューケンホフ公園、4月のお花のシーズンにぜひ訪れてみてください。
インフォメーション
名称:キューケンホフ公園
住所:Stationsweg 166a、2161AM、Lisse
開園日時:年間8週間(年によって日付は異なる)の8:00~19:30(チケット売り場は18時まで)
公式ウェブサイト:https://keukenhof.nl/en/
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