オランダの政治上の首都デン・ハーグ。その中心部には、観光名所となる美術館が点在しています。なかでもマウリッツハイス美術館は、オランダの黄金時代の絵画を中心としたコレクションで有名なアートスポットです。
所蔵作品の中でもとりわけ有名なのは、フェルメール「真珠の耳飾りの少女」でしょう。青いターバンを頭に巻いた少女の目線がとても印象的な絵で、映画にもなり、近年また注目が集まっている作品です。その他にもフェルメールの風景画や、レンブラントの描いた解剖画や自画像、歴史的にも重要な絵画など、充実したコレクションを誇り、フェルメールファンはもちろん、絵画ファンには見逃せない美術館として国内外に名を馳せています。
街なかの瀟洒な美術館
マウリッツハイス美術館は、デン・ハーグ中央駅から歩いて10分ほどの場所にあります。カフェやレストランの立ち並ぶにぎやかな広場から横道に入ってすぐのところに建っている一見柵で囲まれた立派な洋館ですが、こちらが世界的にも有数の名作を含むコレクションを持つ美術館なのです。
ついつい建物の正面口から入ろうとしてしまいますが、私たちが入れるエントランスは建物に向かって左手の階段を降りたところにあります。なお、その階段の途中には、建物を囲む運河の水面が壁越しに見えます。オランダならではの眺めですよね。
2014年にリニューアルオープンしたこの美術館のエントランスは、現代的で、明るくてシンプルな印象で、歴史を感じさせるスタイルの外観とギャップがあります。
入ってすぐのカウンターでチケットを購入しましょう。大人が14ユーロで、18歳までの子どもは無料です。その隣のカウンターでは、コートやリュックなどの荷物を預けることができます。なお、気づきにくいのですが、カギつきのロッカーがカウンターの裏側にたくさん並んでいるので、小さい荷物ならこちらに預けられます。荷物を預け終わったら、チケットのバーコードを階段の下にある入口でスキャンしてもらって、いざ展示室に進みましょう。
優雅な展示空間でゆっくり過ごすひと時
エントランス以外は伝統的なインテリアで、落ち着いた上品な雰囲気。いかにも貴族が住んでいそうな内装です。元々は、1633年から44年にかけてマウリッツ伯爵の邸宅として建てられた、最初期のオランダ古典様式の建物。美術館としてオープンしたのは1822年のこと。展示室の数が多く、それぞれが昔は書斎だったり、寝室だったりしたことが想像されます。
比較的小さい展示室が多いのですが、部屋ごとに集められている絵のテイストが違ったり、部屋の作りや壁紙の色、カーテンなどの内装が全く異なるため、雰囲気ががらっと変わって、鑑賞していて飽きません。お金持ちの豪邸に招かれ、絵画コレクションを見せてもらっているような気分になります。ちなみに、常設展の展示室内では写真撮影ができます。
絵画に加えてインテリアにもご注目を!
シャンデリアの美しい広間や、階段を上がった吹き抜けの展示や天井画など、絵画作品だけではなく、細部までこだわったインテリアにも注目してみると、いろいろな発見があって楽しいですよ。
歴史のある洋館のクラシックな雰囲気を壊さないように、展示スペース内のエレベーターがガラス張りになっていました。動き出すまではエレベーターなのかどうかも定かではありませんでしたが、よく見てみると、建物のフロアの色とエレベーターの底面が同化するようにデザインされていて驚きました。さりげなくバリアフリーに対応する工夫が凝らされていますね。
見応えのあるコレクションの数々
作品の コレクションのほとんどは、歴史上最後の「オランダ総督」を務めたウィレム5世によって、18世紀に形成されたもので、現在はオランダ王国によって所有され、このマウリッツハイス美術館に一部が常設展として展示されています。
なかでも注目すべき絵画として筆者がおすすめしたいのは、レンブラントの「テュルプ博士の解剖学講義」と自画像、ファブリティウスの「五色ヒワ」、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」や風景画、ブリューゲルとルーベンスの共作「エデンの楽園」です。
オランダ・フランドルの黄金時代の絵画は、細微までリアルに美しく描きこまれているので、間近で鑑賞するとじっと見入ってしまうような魅力があります。世界に名を轟かすミステリアスな「耳飾りの少女」もとても素敵でしたが、個人的には、アムステルダムの国立美術館でも幾つか見ることができたレンブラントの自画像の別の作品や、ルーベンスの作品をじっくり鑑賞できたのが嬉しいところでした。可愛らしい小鳥が描かれた「五色ヒワ」も印象的でした。
より深くオランダ絵画に触れる場所
館内では、スマートフォンやタブレットを使えばマウリッツハイス美術館の鑑賞ガイドのアプリが無料で楽しめます。3.5ユーロでレンタルすることもできます。
私が常設展を鑑賞するために必要だった時間は、だいたい1時間半でした。訪問する時期によっては、常設展だけではなく、道路を挟んだところにある別棟のブラッスリーのひとつ上の階で特別展が開催されていることがあるようなので、その場合はもう少し時間をとっておくとよさそうです。名作が多数並んでいる素敵な美術館なので、急いで見て回るのはちょっともったいないかもしれません。ゆっくりと余裕を持って鑑賞することをおすすめします♪
また、マウリッツハイス美術館から歩いて5分ほどの場所に、「ウィレム5世ギャラリー(Prince William V Gallery)」という、マウリッツハイス美術館のコレクションの大部分を構成する絵画を集めたのと同じ王子によるコレクション・ギャラリーがあります。もっと作品を見たい!という方にはこちらもおすすめです。
鑑賞が終わったら、チケットカウンターと同じフロアにあるギャラリーショップに立ち寄ってみてください。ゴム製のお風呂に浮かべるあひるのおもちゃの「真珠の耳飾りの少女」バージョンなどなど、個性的なおみやげが多数見つかります。
マウリッツハイス美術館の敷地を出て、建物の裏側に回ると、大きな池があります。ベンチがいくつか並んでいるので、ゆっくり夕日を眺めるのはいかがでしょうか。池の中央には島があり、白鳥や鴨などの水鳥たちが遊んでいる様子に心なごみ、デン・ハーグの日は暮れるのでした……。
(インフォメーション)
名称:マウリッツハイス美術館(Mauritshuis)
住所:Bezoekadresplein 292511 CSDen Haag
開館時間:月曜13~18時
火・水・金・土・日10~18時
木曜10~20時
公式サイト(日本語):https://www.mauritshuis.nl/nl-nl/bezoekinformatie-japans/
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