ジャズ好きのための音楽スポット「ビムハウス」

オランダ

筆者はジャズ初心者ですが、アムステルダムの音楽事情には興味津々です。駅の近くにジャズスポットがあると友人から聞いて、先日、その噂の音楽ホール「ビムハウス(Bimhuis)」のウェブサイトを見ていたら、「無料のジャズセッション・入場自由」という耳寄り情報を手に入れました。どきどきしながら、毎週火曜日の午後8時から開かれているセッションを聴きに、ビムハウスに出かけてきました。

 

多彩な音楽のるつぼ・ビムハウス

 

音楽ホール「ビムハウス(Bimhuis)」では年間300以上のオランダ国内外のミュージシャンによるライブコンサートが開かれ、あらゆる種類のジャズやワールドミュージックや現代音楽など、他では見られないような音楽が聴けるホールとして知られています。もともとは1974年にアムステルダムの赤線街の一角に、地元のミュージシャンたちの力によってオープンしたのが始まり。創設者のなかには、現在もオランダ国内楽でテナーサックス奏者として活躍し、来日公演も行っているハンス・ダルファーらの姿があったそうです。新しい音楽を作り出していく勢いのある時代に、国際的に外に開かれているアムステルダムの街に音楽好きが集う場所が生まれたのは、当然の運びだったのかもしれません。

ビムハウスはホールとしての規模が大きくなくても、つねに存在感がある個性的な音楽ホールです。2005年に現在の場所に再オープンし、現代建築の最新技術が取り入れらましたが、以前のビムハウスの雰囲気を残すためにステージやカフェバーのレイアウトは同じように誂えられているのだそうです。

演奏プログラムには、国内外からこの場所で演奏するために集まってくるミュージシャンたちによって、チャレンジングで好奇心をそそるような一風変わったものが用意されています。アムステルダム中央駅や、将来を期待される国内外の学生が通うアムステルダム音楽院(Conservatorium van Amsterdam )からも近いという立地条件の良さも手伝ってか、有名なミュージシャンから音大生、アマチュアで音楽を楽しむ人まで、幅広い音楽家や音楽ファンに愛されています。

 

海に浮かぶ音楽ホール

 

アムステルダム中央駅から26番トラム「IJburg」方面に乗り、一つ目の停留所「Muziekgebouw / Bimhuis 」で下車します。トラムを降るとすぐ目に入ってくるのは、海の方にそびえたつ巨大で現代的な、複雑な箱のような形をした建物。これがビムハウスを一角に擁した音楽ホール、ムジークヘボウ(Muziekgebouw aan ‘t IJ)です。水面に張り出して建てられているので、一見すると、海の上に浮かんでいる船のようにも見えます。

その方向に車道を渡り、この建物に入るために橋を渡りましょう。目下には、海の水が流れ込む水路が見えます。3階建て程度の高さでしょうか。強風のときはちょっとしたスリルが味わえる道のりです。橋を渡りきると、左手にある階段もしくはエスカレーターがあるので、そこからビムハウスのある階に上れます。

階上には、小さなチケット窓口とコート掛け、お手洗いがあります。その奥に、ホールの扉が、右手にはカフェ・レストランが見えます。好きな飲み物をカフェで買って客席に持ち込んでも良いというので、ビールを購入してから客席につきました。セッションに参加する人も聴きに来た人たちも、徐々に集まってきている様子でしたが、席数にはけっこう余裕があります。

 

ステージが間近で楽しめるしかけ

 

ビムハウスのホールは、半分に切ったすり鉢型になっています。コの字型の客席は階段状になっていて、一番低い位置にあるステージを囲んでいます。舞台の背後は大きなガラス窓なので、ときどき電車が通り過ぎていくのが見えます。この舞台では、音楽イベントやコンサートはもちろん、レクチャーなど幅広い用途でも使われているそうです。

先鋭的な現代音楽のパフォーマンスでもどこか親密な空気が流れるのは、このホールの大きさゆえなのかもしれません。どこに座っていてもステージと客席との距離が近いので、演奏しているミュージシャンからも聴衆の顔が見えるためか、舞台の演奏者が聴衆に話しかける姿もしばしば見かけました。そのような双方向の対話が生まれる舞台は素敵ですよね。

 

参加自由のジャズセッション

 

ビムハウスのジャズセッションは、演奏しない人でも、誰でも参加できる無料の定期イベントです。その日、20時からは自由参加のセッションが開かれ、22時以降にプロの若手演奏家たちによるビッグバンドのステージがありました。

セッションでは、地元に住んでいるプロやアマチュアのジャズ・ミュージシャンたちがそれぞれ声を掛け合って、ステージに現れます。即興のジャズのパフォーマンスばかりなので、聴いている方も先の展開が読めなくて、どこかスリルを感じました。印象的だったのは、80歳くらいのエレガントなご婦人が、詩を朗読するかのように静かに語りかけるように歌い始めて、それにドラムとピアノが即興で合わせていった演奏です。今までに聴いたことがないような、個性的な音楽を聴かせてもらい、ジャズの即興って面白いなぁ、と興味をひかれました。

セッションを聴いている人の中には、イラストレーションを手帳に描きつづける人や、ビールのグラスを片手に膝の上で指を叩いてドラムのビートを味わっている人など、さまざまな楽しみ方をしている人がいました。また、20時以降は何時からでも参加でき、入退場も問題ないようなので、遅れても問題なく楽しめるようです。

セッション後にはサックス、ドラム、トランペットなどを若手の音楽家たちによる演奏が登場し、雰囲気ががらっと変わりました。アルゼンチン出身の歌手も登場し、ギターを片手に、スペイン語で勢いよくオリジナル曲も歌い上げ、盛り上がりは最高潮! 素晴らしい演奏でした。

 

眺望抜群のカフェ・レストラン

 

ビムハウスには、カウンター席でバーのように気軽にビールが飲める、カジュアルな雰囲気のカフェ・レストランがあります。私が訪れたジャズ・セッションのときは、コーヒーや紅茶といったソフトドリンクや、数種類から好きな銘柄を選べる生ビールやワインなど、皆が思い思いのドリンクを楽しんでいました。席やテーブルの数はあまり多くないのですが、着席して軽食をとることもできるようです。ビムハウスの音楽ホールで行われているイベントの開催時間や内容によって、ランチメニューが用意されることもあります。

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このカフェの魅力は、何よりも眺望の素晴らしさだと思います。夏なら、オランダは日没時間が22時過ぎと遅いので、公演の合間にカフェから港の方を眺めていると、美しい夕暮れが楽しめます。天気さえよければ、見晴らしも抜群で、夜景も楽しめます! 音楽とお酒、眺望がすべて一度に味わえるなんて、お得ですね。

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気軽に楽しめるコンサート

 

今後のイベントは、公式ウェブサイト(http://bimhuis.com/)で確認できます。気になる公演は予約しておくと確実です。まずは雰囲気を知りたいという方には、毎週火曜のジャズセッションの見学や、カフェ・レストランだけを利用してみるのもいいかもしれません。

ビムハウス・ラジオ(Bimhuis Radio)というオンラインで聴ける無料のネットラジオや、ライブストリーミングもあるので、興味のある方はウェブサイトをチェックしてみてください。オランダ語ではなく英語で書かれている情報が比較的豊富なので、読みやすいと思います。

ジャズ好きの方にはもちろん、いつもと一味違った夕べを過ごしたいという方に、おすすめの音楽ホール「ビムハウス」のご紹介でした。

 

≪インフォメーション≫

名称: ビムハウス (Bimhuis)

住所: Piet Heinkade 3, 1019 BR Amsterdam

アクセス方法: アムステルダム中央駅北口(港方面)から徒歩10分、

もしくはアムステルダム中央駅からトラム26番アイブルグ(IJburg)方面行き、「Muziekgebouw / Bimhuis 」停留所下車すぐ。

ウェブサイト: http://bimhuis.com/

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