小規模でアットホームなイギリスの小学校に対し、イギリスのセカンダリースクールは大規模で生徒数も多く、子供たちにとっては進学に伴うストレスは小学校からセカンダリースクールへの進学が最大と言われています。
一方で、セカンダリースクールはその後の人生を決める大きな役割を果たします。
そんな重要なセカンダリースクールにはどんな種類の学校があり、どのように申請すれば良いのかをこの記事で詳しくご説明します。
イギリスの教育システム
イギリスでは小学校を卒業した後、一斉試験のGCSEを終了するまでの7年生から11年生までの4年間をセカンダリースクールで過ごします。
ここまでが義務教育で、その後は次のような進路に分かれます。
- 大学進学を志す生徒は併設されたシックスフォームと呼ばれるカレッジへ進学
- 就職へ向けた資格等を取得するためカウンシルのカレッジへ進学
- 働きながら資格が取得できるアパレンティス制度に参加
- GCSE後そのまま就職
つまり、セカンダリースクールの間に将来の方向性が決まると行っても過言ではありません。
GCSEとIB、どちらを選ぶ?
GCSEはGeneral Certificate of Secondary Educationの略で、イングランドとウエールズで採用されている一斉試験です。
イギリスの大学に進学する際にはAレベルの見込み成績と併せてGCSEの成績を提出する必要があります。また、就職する際にはGCSEの英語と数学のC成績が最低条件となる募集が殆どで、イギリス国内の大学進学や就職には必須の資格と言えます。GCSEは全ての公立校と一部の私立校で取得できます。
一方のIBはInternational Baccalaureateの略で国際的な大学受験資格です。アメリカを始めとするイギリス以外の大学進学を目指すにはIBの方が有利と言えるでしょう。IBを取得するにはIBプログラムを採用している私立校或いはアカデミー校を選択する必要があります。
イギリスのセカンダリースクールの種類
イギリスのセカンダリースクールは大きくは公立校と私立校に分類されますが、それぞれ更に分類できます。
Public School
パブリックスクールのパブリックは「公立」の意味ではなく、家庭教師による個人教育に対してパブリックであるという意味で名付けられました。イートン校、ハロー校、ウエストミンスター校といったイギリスを代表し長い歴史を誇るセカンダリースクールです。
殆どの生徒がオックスブリッジ(オックスフォード大学とケンブリッジ大学)やアメリカのアイビーリーグに進学します。
イギリス歴代の首相は少数の例外を除いてパブリックスクールの出身です。寮制の学校が多く、学費も高額で、入学も超難関ですが、政界や大企業ではパブリックスクールの学閥があり、その絆は大学よりも固く、様々な状況で有利に働くと言われています。
Independent School, Private School
これらはイギリスの私立校の名称です。いずれの私立校も1クラス15名程度で、精選された教師によりアカデミックだけでなくスポーツやアートを含む全人教育が行われます。寮制の学校も多くあります。
入学に当たっては主に選抜試験と面接があるので、人気校入学には試験対策のチューターが必要となります。面接では習い事やスポーツ・演劇等の校外活動がアピールポイントになります。音楽は特に重視され、楽器演奏上級者の優先入学枠のある学校もあります。イギリスの私立校進学をお考えでしたら、早くから楽器等の習い事をさせておきましょう。
授業料は高額ですが、多くの学校で試験成績の良い生徒や楽器演奏上級者に奨学金が準備されています。
Grammar School
グラマースクールは大学進学を目指す生徒のための公立校で、いずれの学校もシックスフォームを併設しています。ロンドン市内のグラマースクールはコンプリヘンシブに変換しましたが、グレーターロンドンと呼ばれるロンドンの外郭部ではグラマースクールが残っています。
入学試験はイレブンプラスと学校によって英語と数学の試験が加わります。応募者数が多いので、合格するのは非常に難関となり試験対策のチュータリングが必要です。シックスフォーム進学時に再び募集がありますが、在校生より途中入学の方が高レベルのGCSE成績を要求されます。
尚、私立校でもGrammar Schoolという名前が付いている学校もありますのでご注意ください。
ロンドン市内のGrammar School一覧
[Barnet]
- Henrietta Barnett School, Hampstead Garden Suburb (女子)
- Queen Elizabeth’s Grammar School for Boys, Barnet (男子)
- St. Michael’s Catholic Grammar School, North Finchley (女子)
[Bexley]
- Beths Grammar School, Bexley (男子)
- Bexley Grammar School, Welling (男女)
- Chislehurst and Sidcup Grammar School, Sidcup (男女)
- Townley Grammar School, Bexleyheath (女子)
[Bromley]
- Newstead Wood School, Orpington (女子)
- St Olave’s & St Saviour’s Grammar School, Orpington (男子)
[Enfield]
- The Latymer School, Edmonton (男女)
- [Kingston upon Thames]
- Tiffin Girls’ School, Kingston upon Thames (女子)
- Tiffin School, Kingston upon Thames (男子)
[Redbridge]
- Ilford County High School, Barkingside (男子)
- Woodford County High School, Woodford Green (女子)
[Sutton]
- Nonsuch High School for Girls, Cheam (女子)
- Sutton Grammar School for Boys, Sutton (男子)
- Wallington County Grammar School, Wallington (男子)
- Wallington High School for Girls, Wallington (女子)
- Wilson’s School, Wallington (男子)
※試験科目が異なったり、受験できるエリアが限定されている学校もあるので、Prospectusを必ずご参照ください。
Voluntary-aided School
英国教会(Church of England)、カソリック、その他の信者を対象とするセカンダリースクールです。
特にカソリックの学校は人気校が多く、トニー・ブレアがイギリス首相の時に子供全員をカソリックスクールに入学させて話題になりました。カソリックスクールのために教会通いをする家庭もあるほどです。
生まれてから一か月以内に洗礼をしていないと入学できない人気校もありますが、信者でなくともキャッチメントエリア内であれば入学できる学校もあります。
応募の際、礼拝している教会名と礼拝頻度、洗礼日等を記入したフォームを司祭のサイン入りで提出する必要があるので、人気カソリックスクールをご希望でしたら生れて直ぐの対応が必要です。
Comprehensive School
公立のセカンダリースクールの殆どがコンプリヘンシブです。
入学試験はなく、応募者のうち学校から自宅までの距離が近い順に入学が許可されます。中にはグラマーに匹敵するほど成績の良い学校やシックスフォームのある学校もあります。
殆どの学校でストリーミングと呼ばれる成績別のクラス編成が行われており、上位クラスはオックスブリッジへの入学も十分可能です。
人気校の中には、カウンシル実施の試験の上位者であればキャッチメントエリア外からも入学できる学校もあります。
また、学校によってはVocationalと呼ばれるキャリアに直結する実践的な科目のGCSEを取得できるコースを展開しています。(例:Health and Social Care, Engineering等)
Academy School, Free School
アカデミーはカウンシルではなく教育省に直属しており、独自の科目編成や先鋭的な運営が特徴です。学校によってはグラマーに匹敵する人気校もあります。コンプリヘンシブ同様学校への距離の短い順に入学が許可されますが、適性試験(Aptitude Test)を実施し、一定数の好成績者はキャッチメントエリア外でも入学が許可される学校があります。
フリースクールはアカデミーの一種ですが、概して規模が小さく、科目も絞り込んでいます。IBコースを選択できたり、大学に付属するフリースクールもあります。
スペシャリストスクール
イギリスのセカンダリースクールの特徴として、芸術分野に特化したスペシャリストスクールがあります。
将来のバレエダンサーが通うRoyal Ballet Schoolや将来の音楽家が通うThe Yehudi Menuhin Schoolなどがあります。
才能さえあれば入学が可能で、殆どが全寮制ですが才能のある生徒は授業料・寮費ともに免除されます。
セカンダリースクールを選ぶ指針
セカンダリースクールを選ぶ際に最も参考になるのがGCSEの成績です。
毎年新しい試験結果が大手メディアから発表されるので「GCSE League Table」で検索し、最新の情報をゲットしてください。
様々な指標がありますが、大学進学を念頭にしているのであれば、A*or Aのレートを見るべきです。参考までに2016年のランキングを下記リンクからご覧ください。
また、大学入学に直結するAレベルのランキングもチェックしましょう。
Ofstedのリポートを参照する
オフステッド(Ofsted)とは政府機関の「Office for Standards in Education」の略で、イギリスの学校を視察し、評価とレポートを作成しています。評価は上から順に「Outstanding」(素晴らしい)、「Good」(良い)、「Satisfactory」(平均的)、「Inadequate」(平均以下)となっています。
下記のOfstedのWEBサイトに学校名を入れてレポートが探せますが、それぞれの学校のウエッブサイトにも掲載されています。
Find an Ofsted inspection report
Find an Ofsted inspection report
オープンディに参加する
例年6月~7月と9月~10月に各学校でオープンディ、オープンイブニング、オープンモーニング等の名前で学校見学の機会が設けられています。
スケジュールをやり繰りして、希望校のオープンディには必ず参加するようにしましょう。
希望校のウエッブサイトや、公立校の場合はカウンシルのWEBサイトにスケジュールが記載されます。お子様と一緒に参加するとモチベーションを上げるのにも役立ちます。
年齢制限はありませんので、早いうちに見学させると良いでしょう。予約が必要な学校もありますのでご注意ください。尚、都合が合わなければ、学校に直接問い合わせて、個別の見学をアレンジしてもらいましょう。
希望校に入学するには
人気私立校やグラマースクールに入学するには、イレブンプラスというテストと英語、算数の試験で高得点を取る必要があります。学校の勉強とは別のテクニックの習得が必要ですので、良いチューターを探す他、親子でドリル学習を進めましょう。詳しくはイレブンプラスの記事をご覧ください。
コンプリヘンシブやアカデミーの場合は、キャッチメントエリアに入っている必要があります。下記サイトに学校名を入力するとキャッチメントエリアの概要を知ることができます。
School Guide | The Best School Guide
School Catchment Area Checker To Compare Schools | Best School GuideThe Best UK School Guide: Easy to Use, Built for Parents. Clearly presented information on all UK Primary, Secondary and...
特に人気校はカウンシルのウエッブサイトにキャッチメントエリアの地図が掲載されていますのでご参照ください。
正確に知るには、オープンディの時に学校スタッフに直接聞くのが一番です。
セカンダリースクール応募方法
私立校はそれぞれの学校に願書を送り、入学試験と面接を受けます。何校でも受験できますが、受験の際に手数料を払う学校もあります。
公立校は、ご自宅のあるカウンシルに他のカウンシルにある学校も含めて希望校を3~6校まで申請できます。
申請の際に、希望校の順番はとても重要ですのでご注意ください。原則的に、申請した学校で入学許可のあった学校の一番上位からオファーがされます。
つまり同じ入学試験の成績でも、第一希望にした生徒の方が第二希望とした生徒より入学の可能性が高くなります。同様に、学校から遠くても第一希望にすれば入学の可能性は高くなります。
希望校からオファーがなければ
自動的にウエイテイングリストに名前が入る学校と、申請する学校があります。
後者の場合は学校から手紙が来ますが、いずれにせよ学校に連絡してウエイテイングリストの何番目であるか確認します。
その際、どの位の可能性があるのか聞いてみましょう。
終わりに
イギリスのセカンダリースクールについてご紹介しました。
セカンダリースクールは将来の方向性を決定するだけでなく、入学時は子供だったお子さんが、シックスフォームの卒業時にはヤングアダルトとなる、精神的に最も成長の著しい時期です。また、家族より友人関係の方が濃密になる時期でもあります。
そんな大切な時期を過ごすセカンダリースクールですから、慎重に選んであげたいですね。
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