BYOはBring Your Own (Bottle, Booze, Beer, Wine) の頭文字を取った略語で、自分で購入したワインやその他のアルコール飲料をレストランに持ち込むシステムを指します。
レストランの飲み物は市販価格よりもずっと高く設定されているので、少々杯を重ねると驚くほど高いお会計になってしまうものですが、BYOレストランならその心配はありません。この記事では、気軽にお財布の心配をせずに外食が楽しめるBYOの活用術をご紹介します。
お酒を販売するライセンスを所有していないお店が多い
レストランで提供されるアルコール飲料は最も利益率が高く、店にとってはドル箱的存在。
それなのにどうして損を承知で持ち込みを許可するのでしょうか。それには大まかに二つの理由があります。
まず第一に、お店が何らかの理由でお酒を販売するライセンスを所有していない場合。イギリスでは店内でお酒を提供するのに「Premises Licence」という許可証が必要ですが、設備や立地等様々な理由で許可が下りない店もあります。
以前はカフェとして営業していた店舗の場合、このライセンスがないケースが多いようです。タイなど東南アジア系料理の店が多く、小規模ながらお洒落なインテリアのレストランが多いのも特徴です。
宗教上の理由で酒を置いていないお店も多い
第二に、宗教上の理由の場合があります。
自身の飲酒を戒めるだけでなく扱うことも禁じている宗教があるからです。インド、パキスタン、イランやスリランカ等のカレーやケバブ料理のレストランが多くあります。規模や設備は普通のレストランと変わりなく、たまに内装が驚くほど豪華な店もあります。
特別なワインを持ち込みたいという顧客の要望
最近では、特別なワインを持ち込みたいという顧客の要望に応えたり、或いは新規顧客の開拓を狙って、ライセンスはあるもののワインの持ち込みを許可してくれるレストランも増えています。
この場合、持ち込み料がそのお店のハウスワインの金額同程度に設定されており、ハイランクなレストランである事が多いので、気軽に外食どころか思わぬ散財をしてしまう事態になりかねないのでご注意ください。
持ち込み料が15ポンド以上だったり、BYOできる曜日が限定されているお店はこの部類に入ります。
BYOの料金
ワインやビールを持ち込むには、通常「コーケージ」(Corkage)と呼ばれる持ち込み料を払います。
ワインボトル1本につき3ポンド、ビール1本につき50ペンスというようにボトルに対して課金する店と、一人当たり3ポンドという風に人に対して課金する店があります。また、コーケージではなく「グラスフィー」(Glass fee)という名前を使う店や、コーケージ無料の太っ腹なお店もあります。
グラス、ワインのコルク抜き、瓶ビールの栓抜き等はお店で貸してもらえます。注文した料理代金にコーケージが加算されてお会計となります。
BYOレストランの探し方
BYOレストランは利益率が低くなってしまうので、地価の高い都心よりも郊外のハイストリートで見つかる事が多いです。
積極的にBYOを受け入れてくれるレストランは、店頭に「BYO Welcome」「We accept BYO」などと表示されているはずです。ハイストリートを歩く際にお店のドアや窓を注意して見てください。なかなか見つからない場合は「BYO+エリア名」で検索してみてください。
BYOをリスト化しているサイトもありますが、アルファベット順なのでエリアで探すのはかなり根気が必要です(http://uk-wine-forum.co.uk/food/byoblist.htm)。
検索やリストで探した場合、ライセンスが取得できた等の理由でBYOを停止する店も多々あるので、席を予約する時に必ず確認してくださいね。
BYOレストランはまず予約から
特に週末のBYOレストランは混み合う事が多いので、行ってみたいレストランが見つかったら、まず席を予約しましょう。
その際、BYOが出来るかどうか聞くのをお忘れなく。お店からコーケージについて説明があるはずですので、しっかり確認しましょう。
特にビールや白ワインを持ち込む予定の方は、良く冷えた状態で楽しめるようウエッブマップ等で付近のスーパーやオフライセンス(酒類も販売しているコーナーショップ)の位置を確認しておくと良いでしょう。
注意点:長居はしないこと
BYOレストランの利益率の低さを補うためには、回転率を上げる必要がありますから、延々と飲み続けられるのはとても迷惑になります。
1. 5時間の時間制限を設けているお店もあります。特に混み合う週末は、時間制限のないお店でも1. 5時間を目安にスマートにサッと引き上げたいものです。
大人数でパーティの場合は、事前にお店に制限時間を相談してみてください。曜日や時間帯によっては快く延長してくれると思います。
注意点:空いている時間を狙う
イギリス人の夕食時間は日本と比べると遅めで、特に週末に外食となると8~9時頃からゆっくりと食べ始める方が多いようです。
そのため、レストランの開店後すぐの午後5時半~6時頃は大概空いています。
この時間帯は急かされる感じもせず、注文した料理もすぐサーブされるのが良いですね。BYOレストランに行くのでしたら、開店直後の空いている時間に予約を入れるのがベストです。
注意点:店内では騒がない
いくらBYOで存分に飲めるからと言っても、そこは居酒屋ではなくてレストラン。
静かに食事を楽しみたいというお客様もきっと居るはずです。居酒屋のノリで大声でしゃべったり、酩酊するまで飲むのはタブーです。
注意点:メインコースは人数分オーダーする
手軽につまめるスターターメニューは、シェアしやすい居酒屋感覚のメニューが多く、ついスターターからあれこれ選びたいところですが、やはりレストランなので、一人一品はメインコースを選びたいですね。
皆でシェアしますとお店のスタッフに伝えれば、人数分の小皿などを持って来てくれるので、メインコースでも取り分けてシェアできます。
おすすめBYOレストラン:The Thai Grocer
BYOレストランをあちこち食べ歩いた私ですが、個人的に一押しなのがこのタイ料理レストラン。
新鮮な素材と手作り感あふれる味付けが魅力です。他のタイレストランではあまり見かける事のないタイのストリートフードが各種あるのが特徴で、BYOにうってつけのシェアするためのメニューがあるのも嬉しいです。
家族経営のこじんまりしたレストランですが、明るくクリーンなインテリアや料理の盛り付けがとってもお洒落。最寄り駅はナショナルレイルのEarls Field駅ですが、Wandsworthのタウンセンターからも徒歩圏内です。アルコール類の調達はすぐ近くのテスコが便利ですよ。
おすすめBYOレストラン:Tay Do Café
東ロンドンにはKingsland Roadという、道の両側にベトナム料理レストランがずらりと並ぶ通りがあります。
かつては多くのBYOレストランがありましたが、最近はあまり見かけなくなりました。その中でBYOを貫いてくれる貴重なレストランの一つです。
メニューが種類豊富で選ぶのに迷ってしまいますが、それぞれボリュームのある盛り付けなので オーダーし過ぎないようにご注意を。斜め道向かいのセインズベリーで飲み物を調達できます。
おわりに
日本ではあまり馴染みのないBYOですが、オーストラリアやニュージーランドでは1970年代から存在するシステムだそうです。
それが80年代に北米に伝播し、90年代頃から徐々にイギリスでも見られるようになったとのこと。
日本と比べてお手頃価格で外食できるレストランが少ないイギリスでは、とてもありがたいシステムです。もちろんイギリス人にも好評で、一人一本ずつワインを持って来て大いにエンジョイしているので、お店全体が明るい活気に溢れています。
イギリスにいらっしゃる間に、一度はBYOを経験してみてください。
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