日本人にとってお花見と言えば桜ですが、残念ながらロンドンでは日本のように見渡す限りの桜の名所はありません。
でも、ロンドンで見渡す限りのツツジやシャクナゲを楽しめる場所があるのをご存知ですか?
4月の終わりから5月の始めにかけて、色とりどりの花に埋め尽くされ鳥のさえずりがこだまするこの場所は、まるで天国に一番近い地上の楽園
皆様も今年は是非、ロンドンでお花見を楽しんでください。
リッチモンドパークの秘密の花園
イザベラ・プランテーションは、ロンドン南西部にありロイヤルパーク最大の面積を誇るリッチモンドパークのほぼ中央に位置しています。
鉄製の柵によって周囲から隔離された植林公園は、ビクトリア時代に珍しい植物を見つけるために世界中を駆け巡った「植物ハンター」のアーネスト・ウイルソンが、日本や中国から持ち帰ったツツジとシャクナゲのコレクションで有名です。
花の時期には、さながら色見本台帳のごとく色とりどりの花が咲き乱れ、花見客で賑わいます。
公園内の歩道や小川の両側では、1920年代にウイルソンが日本から持ち帰った「羽衣」や「麒麟」「久留米」といった日本のツツジが咲き揃います。
ウイルソンと屋久島
ウイルソンと言うと、世界遺産にも指定されている屋久島にある「ウイルソン株」を連想される方も多いのではないでしょうか?
樹齢3000年のこの株は1914年に屋久島を訪れたアーネスト・ウイルソンによって世界に知られるようになり、この名が付けられました。
この時にウイルソンが屋久島から持ち帰った屋久島シャクナゲは、「トムソンの池」(Thomson’s Pond)付近の広場に植樹されており、他のシャクナゲより少し遅い5月上旬頃から見事に咲き始めます。
屋久島でしか自生しない固有変種であるこのシャクナゲは、桃色の蕾が開花するにつれ淡い色に変化し、とても可愛いらしい花がさきます。葉の裏に綿毛が密集し、ビロードのような手触りなのが特徴です。
日本庭園を彷彿させるスティル・ポンド
イザベラ・プランテーションの中でも、個人的に一番お勧めしたいスポットは「静かな池」という意味の「スティル・ポンド」(Still Pond)です。
池を囲むようにツツジが咲き競い、その名の示す通り鏡のように静かな水面を染める様は見飽きる事がありません。
小さな池とツツジの組み合わせは、何故か日本庭園を思い出させ、とても懐かしい気持ちにさせてくれます。
必見!ウイルソンが探しあぐねたハンカチの木
中国で宣教活動をしていた牧師アルマン・ダヴィドが、中国の山奥で不思議な白い花の咲く木を見たという話はヨーロッパでも瞬く間に広がり、ウイルソンも1899年にハンカチの木を発見すべく中国に派遣されます。彼は中国各地を探しあぐねた末、二年後にようやく発見できたそうです。
この貴重なハンカチの木はイザベラ・プランテーションに三本ありますが、一番見事な花が咲く木は屋久島シャクナゲの裏手にあります。
5月の心地良い風に真っ白な苞葉が一斉に揺れる様子は思わず息を呑む美しさ。ツツジやシャクナゲとほぼ同じ時期に見頃となるハンカチの木、イザベラ・プランテーションに花見に行ったら忘れずに探してください。
他にもある日本原産の植物たち
イザベラ・プランテーションでは、その他にも日本で見た事のある花々を見つけることができます。写真はその中の一つの「馬酔木」。
有毒で馬が食べると酔っ払った様に見えることからこの名が付いたそうですが、英語では「ジャパニーズ・アンドロメダ」と呼ばれています。新芽が燃えるように赤く、その下にすずらんのように可愛らしい花が連なっている様は、とても毒があるとは思えませんよね。
小川の川辺では、「ジャパニーズ・プリムローズ」と呼ばれるクリンソウや黄色い水芭蕉も咲いています。
ところでこの水芭蕉、日本語だと詩的な響きがありますが、英語では「スカンク・キャベツ」(臭いキャベツ)という妙な名前で呼ばれているんですよ!
イザベラ・プランテーションの花の見頃は?
ツツジやシャクナゲは、4月下旬から5月上旬が一番の見頃です。
当然ながら、寒い日や雨の日が続くとなかなか開花しなかったり、好天で気温の高い日が続くと早く咲き始めてしまうのでご注意を。天候の様子を見て、余裕を持ったスケジュールを立てると良いでしょう。
屋久島シャクナゲやハンカチの木がお目当てでしたら、5月に入ってからの方が確実で、白や紫のシャクナゲがお好みでしたら早めに行かれるのをお勧めします。
早すぎてまだツツジやシャクナゲの開花が今一つという場合でも、椿や山茶花、木蓮、ヒースやブルーベルなど、様々な花を楽しむ事ができますので、がっかりしないでくださいね。
アクセス方法
自家用車で行く
イザベラ・プランテーションは広大なリッチモンドパークのほぼ中央に位置し、最も近いゲートからでも約1km以上の距離があるので、車で訪れるのが一番便利です。
ロビンフッドゲートとキングストンゲートの間にある「ブルームフィールド・ヒル」(Broomfield Hill)駐車に車を停め、道路を渡った坂を下るとイザベラ・プランテーションの入り口が見えてきます。
嬉しい事に、駐車場と入園料はいずれも無料!但しこの駐車場は花の時期はとても混雑し、特に週末は空きスペースを待つ長い列ができます。
できれば平日の午前中に訪れるのをお勧めします。また、日没前の長く明るい宵の時間も狙い目です。
週末しか行けないという方へ耳より駐車情報
週末しか行く時間がない方は、ペン・ポンド(Pen Pond)付近の駐車場(Spankers Hill Wood Car Park)に車を停め、ハム・クロス(Ham Cross)方面へ向かう歩道を歩きます。
車道に出る少し前に左に曲がり(サインボードがあります)イザベラ・プランテーションの身障者用駐車場を過ぎるとボトム・ゲート(Bottom Gate)から入園できます。
徒歩でおよそ15~20分です。こちらの駐車場も満杯の時は、一旦、ハムゲート(Ham Gate)から公園の外に出て、Ham Gate Avenueの道沿いに駐車し、再びゲートからハム・クロスを越えて15分程度歩き、ボトム・ゲートから入園するという裏技をお試しください。
水曜日運行の公園ミニバスを利用する
リッチモンドパークでは、イースターから10月の間の水曜日に限り、公園内を循環する無料ミニバスを運行しています。
このバスは、イザベラ・プランテーションと各ゲートおよび各駐車場を一日に5便で循環しています。ハム・コモン・クロスロード(Ham Common Crossroads)のバス停には65番のバスが停まります。
また、430、170番のバスでローハンプトン(Roehampton)の終点まで行き、進行方向に数分歩いた小学校の先で交通バリアを越えると、ダンベリーアベニュー(Danebury Avenue)のバス停があります。
ミニバスの時刻表は、下のリンクのリッチモンドパークのサイトを開き、一番下にある「View the 2017 seasonal bus timetable here」の「here」に埋め込まれているリンクをクリックするとダウンロードできます。
公共交通機関だけで行く
イザベラ・プランテーションに一番近いゲートは、歩行者と自転車専用のラダースタイル・ゲート(Ladderstile Gate)で、85番とK3のバス亭が付近にあります。
バス停からラダースタイル・ライド(Ladderstile Ride)という道に入り、ゲートを越えて右折するとブルームフィールド・ヒルの駐車場まで徒歩で約15分です。
レンタル自転車で行く
ローハンプトンゲートの駐車場にパークサイクル(Parkcycle)というレンタル自転車店があり、1時間から4時間まで自転車をレンタルできます。
バス170、340の終点が付近にあります。ここからイザベラ・プランテーションへは、ソウヤーズ・ヒル(Sawyer’s Hill)を上り、最初の交差点を左折。ロイヤルバレエのあるホワイトロッジの壮麗な建物の前を通り、ペンポンドを遠くに望みつつ駐車場を過ぎたら右折してハム・クロス方面へ。
後は8と同じ行程でボトムゲートから入園するルートがお勧めです。ブルームフィールド・ヒル駐車場へ向かう道は、険しい山道なので避けた方が無難です。営業時間やレンタル料金などの詳細はパークサイクルのサイトをご参照ください。
Parkcycle: the place to hire bikes in Richmond Park
Parkcycle: the place to hire bikes in Richmond ParkA site dedicated to cycling and bike hire in Richmond Park, London.
おわりに
まだイザベラ・プランテーションに行かれたことのない方は、この記事を参考にして今年こそはお花見に訪れてみてください。
きっとロンドンで最高な春のひと時を楽しめることと思います。園内にはサインポストが設置されていますが、念のため下記リンクのガイドブック6~7ページにある地図で予めチェックしておくと良いかもしれません。
https://www.royalparks.org.uk/__data/assets/pdf_file/0003/55236/A-guide-to-Isabella-Plantation.pdf
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