妊娠中や授乳中は、自分の体がまるで自分の体でないように感じる時期。今まで病気知らずでバリバリ働いていた女性でも、急に疲れやすくなったり、具合が悪くなったりすることが多いのですよね。
従来のように元気に働けなくなると、勤勉な日本人は罪悪感を感じることがあるかもしれませんが、オーストリアではそんな女性たちを守るための法律があります。今回は、オーストリアの妊婦や授乳中の女性が持つ権利についてお話しします。
オーストリアの妊婦と授乳中の女性が持つ権利
妊娠中の女性が激しい肉体労働を行うと、母体だけでなくお腹の子どもにも負担をかけることになってしまいます。そのような負担は早産などのトラブルにつながる可能性もあるので、注意が必要です。
オーストリアでは法律で、妊娠中の女性と授乳中の女性は、以下のような仕事を断る権利を与えられています。
・重いものを持ち上げる仕事
妊娠中の女性は5kg以上の重さの物を持ち上げ続けるような仕事や、機械を使わずに10kg以上の物を持ち上げるような仕事をすることが禁じられています。
・立ち仕事
妊娠21週目からの妊婦は一日に立って働いて良い時間は4時間までです。できる限り、座って作業をすることを勧められています。
・ノルマや締め切りのストレスのある仕事
妊娠21週目以降の妊婦は、過度のストレスを受けることを防ぐため、ノルマや締め切りのプレッシャーを受けることを禁じられています。
・健康に害のある化学物質などのある場所での仕事
子どもの健康に影響が出る可能性があるので、健康に害があるとされる化学物質や埃、放射能などがあるような環境では働くことが禁じられています。
・煙草が吸われる場所での仕事
子どもの健康に影響が出る可能性があるので、煙草が吸われている部屋で働くことを妊娠中の女性は拒否する権利があります。レストランやカフェでも同様です。
・健康に支障がでるほど暑い場所、寒い場所、体が濡れるような場所での仕事
妊娠中の女性は、母体の健康を損なうほど環境が悪い場所で働くことを拒否することができます。
・夜間の仕事
妊娠中の女性と授乳中の母親は、20時から6時までの時間帯に働くことは禁じられています。ただし、この時間帯に働いても良いほど健康状態が良い、という医者の診断書があればこの限りではありません。妊娠中にも、夜間に働きたい女性は、妊娠がわかったらすぐにかかりつけの医師または産婦人科医に診断書を書いてもらい、雇用者に提出してください。
・残業
妊娠中の女性と授乳中の母親は一日9時間以上働くことが禁じられています。また、一週間に40時間以上働くことも禁じられています。どんな仕事であろうと、このルールには例外がありません。必ずこの時間内で働くようにしましょう。
仕事が制限されると給料は減ってしまうの?
このように、オーストリアの妊娠中の女性は、仕事の種類や時間が制限されてきます。それでは、それに伴って給料も減らされてしまうのかというと、そうではないのです。
オーストリアでは妊娠して、勤務時間や仕事の内容が制限された後でも、制限される前13週間の間の平均の給料が支払われなければならないという決まりがあります。
妊娠したからといって、経済的に大きな負担を負わなくても良いので、とても安心ですね。
仕事中に体調が悪くなったら
悪阻をはじめとして、妊娠中の女性の気分が突然悪くなるということは結構多いものです。オーストリアでは妊娠中の女性が、仕事中に具合が悪くなった場合は、会社内で横になって休憩する権利を与えられています。
また雇用者は妊娠中の女性が休めるように、会社内にベッドや横になれるスペースを用意する義務があります。
具合が悪くなって休憩している時間分のお金が給料から差し引かれてしまうのでは?という不安があるかもしれませんが、大丈夫。休憩している間のお金は引かれることなく、普段通りの給料を受け取ることができます。
仕事中に授乳はできるの?
子どもを産んだ後、すぐに仕事に戻りたいけど、どうしても子どもを母乳で育てたい!と願うママは多いですよね。それはオーストリアも日本と同じです。
オーストリアでは、仕事中に休憩をとって子どもに授乳をすることが認められています。しかも、授乳休憩の時間のお金が給料から引かれることはありません。母乳で子どもを育てたいママにはとても優しいシステムですよね。ただし、授乳休憩は一日最高90分までと定められています。
妊娠中の女性が、勤務時間内に病院に通う権利
妊娠中は、何かと病院に通うことが多くなりますよね。でも、病院は朝から晩までいつでも開いているわけではないのですから、仕事をしている妊娠中の女性は、産婦人科に検診に通う時間を見つけるのが大変!と思ってしまうかもしれません。
でも、大丈夫です。オーストリアでは、妊娠中の女性が勤務時間内に、病院の検診に通うことが認められています。
もちろん、勤務時間内に病院に行っていて仕事ができなかったからという理由で、その時間の給料を減らされることはありません。
Mutterschutz(ムッターシュッツ)
オーストリアでは、出産予定日の8週間前から出産後の8週間、合わせて16週間の期間をムッターシュッツと言い、この期間女性は働くことを禁じられています。早産の場合、帝王切開の場合、一度に2人以上の子供を出産する場合は更に長く、出産後最低12週間がムッターシュッツの期間になります。
もしも、妊娠中の検査で何らかの問題があることが認められた場合には、8週間よりも前にムッターシュッツに入ることも可能です。
出産日が早まったり、遅れたりする場合は、実際の出産日に伴ってムッターシュッツの期間も短くなったり、延びたりします。
ムッターシュッツの期間、給料はもらえるの?
ムッターシュッツの期間中は、勤めている会社から給料がでることはありません。しかし、健康保険会社からWochengeld(ヴォッヘンゲルト)と呼ばれるお金を受け取ることができます。
まとめ
いかがでしたか?オーストリアでは妊娠中の女性や、小さな子どものいる母親が守られていることがおわかりだったのではないでしょうか?次回は、ムッターシュッツの期間にもらえるヴォッヘンゲルトについてお話しします。
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