海外に長く住むと、日本がいかに安全な国かがよく分かります。日本のニュースでは日々犯罪事件を目にしますが、それでも犯罪率として数字で比較すると、マレーシア・クアラルンプールより日本(東京)がはるかに安全であることが浮き彫りになります。マレーシアは、雰囲気も人もあまりにノンビリしたムード。そのため、観光客はつい、気が緩むことがあるのではないでしょうか。今回は、マレーシアで生活し海外在住5カ国目の筆者が、観光客が危険な目にあわないために気を付けたほうがいい点について、生活者の目線でご紹介します。
安全指数は東京の「約3分の1」
各国、都市生活情報のデータベースとして世界最大の『Numbeo(ヌンベオ)』によると、東京の安全指数が80.11(高いほど安全)であるところ、クアラルンプールの安全指数が30.40と2.6倍の差があります。細かい項目別だと、例えば “Worries being mugged or robbed(屋外での強盗や盗難の恐れ)”が東京16.26と低いのに対し、クアラルンプールが76.82。“Safety walking alone during daylight(日中に屋外を歩く際の安全性)”が、東京で“非常に高い”の87.40のところ、クアラルンプールで47.26。それが、夜間の一人歩きの安全性となると、82.93と東京で昼間・夜間で大差がないのに対し、クアラルンプールでは安全性が急激に下がり“低い”の21.38。数字で見ると、改めて安全性の低さが明らかに。
観光で来る方は事前に『外務省海外安全ホームページ』や在マレーシア日本国大使館のホームページで、安全情報の最新情報をチェックすることをオススメします。
筆者はマレーシアに移住して約9ヶ月で、危ない目にあったことが幸いにしてありません。でも、こうして数字で見ることで「やっぱり気を抜いてはいけないんだ。」と再確認することができます。実際に周囲で起きた話を聞くと、自分だけの肌感覚より数字を信用した方がいいことが断言できます。上記背景を踏まえて、具体的に日頃どう気をつけているのか、以下に続きます。
ショッピングモールには朝に行く!
観光で一度は訪れるショッピングモールは、混まない朝になるべく短時間で用事を済ませるのが、スリの危険を回避する方法。激混みして他人との距離が近くなるランチタイム以降を避けるのが、オススメですよ。実際に『外務省海外安全ホームページ』内、マレーシア情報ページにはこのように記載が。
”マレーシアで在留邦人及び短期滞在者が遭遇する代表的な犯罪は、置き引き、ひったくり、すりの三点です。”
このように、スリの件数が多いとか。具体的な例だと、クアラルンプール、ペトロナスツインタワー直結の『Suria(スーリア)』というショッピングモールにて。クアラルンプールを訪れる観光客が一度は訪れる場所ですが、ジーンズの後ろポケットに入れたスマートフォンが気づかない間に盗まれた件が、身近で起きています。
観光客はキョロキョロしながら歩いていることや、服装(ローカルはサンダルにTシャツなど軽装が多い)で、一目で分かります。少し無防備に見えることもあるので、注意が必要です。きちんとファスナーがしまるバッグを体の前でしっかり持つか斜めがけ、スパイさながら定期的に後ろを振り返る、などは鉄則。むしろこちらの方が不審人物に思われそうですが、筆者も日々実践しています。要は“警戒している姿を見せるのが、ターゲットとされないために重要“だからです。
また、別のショッピングモールでは、他の知人がトイレで誰かに待ち伏せをされて、ゴールドチェーンの装飾品など身の回りの品を要求され、刃物で脅迫されたという話も聞きました。ショッピングモールのトイレでは、お掃除係の方がウロウロしていることが多いですが、人気がなく不安な場合は、別のトイレを利用するのも手です。
さらに、ショッピングモールで時計などの高級品を買った場合は、かなり注意が必要。中身が時計だと一目でわかるようなショップの紙袋を持って歩いていると、スリやひったくりのターゲットになりやすいとか。そのため、当地の高級時計店を利用するローカルは、時計店の袋をすぐに捨て、スーパーのビニール袋に入れ替えて帰る人が多いとか。お店側も、なるべく目立たないパッケージにするよう、気を遣っているというので、驚きます。
バイクが突然走る?!「歩道を極力避ける」
こちらに住んで最も驚いたことのうちの一つが、なんと大型バイクが歩道を走ること。初めて見た日の衝撃は忘れられません。バイクが突然車道から歩道の中に乗り込んで「?!」と思うと、そのまま歩道を走行。歩行者と普通にすれ違い、歩行者側も当たり前のようにやり過ごしているため、さらに度肝を抜かれました。最近、中華系の学校の近くでインド系の女性が歩道に倒れているのを見かけましたが、歩道を走行したバイクがぶつかったことを知りました。子どもも歩く学校近くの歩道をバイクが走行することは大変危険だと、その通りを通るたびに思っていました。実際に起こった事故を見て、大変気の毒に感じました。
そもそも“車道に近い歩道を歩く際、バッグを車道側に持つとひったくりにあいやすい”という話は、よく聞いていました。ひったくりは大体2人組のフルヘルメットをかぶったバイク乗りというケースが多いことも、認識していました。でも、バイクの歩道走行の想像はしていませんでした。クアラルンプールに来て家探しをした際に、ローカルの不動産エージェント達が口をそろえて「車移動にして、なるべく歩道は歩かないほうがいい。」と言っていたのが、こういう意味かと実感しました。観光で歩道を歩くみなさんは、ひったくりだけでなく、バイクが急に乗り上げて歩道を走行することがあるので、くれぐれも気を付けてくださいね!
屋外で過ごす際の他の注意事項は、スマートフォンをあまりいじらないこと。当地に遊びに来た知人が宿泊していたホテルの宿泊客に、実際に起こったことですが、ある女性が屋外のカフェでお茶をしながらスマートフォンをいじっていました。すると、ローカルの男性が近づいてきて、スマートフォンを渡し暗証番号も教えるように脅してきたとか。指示に従うも、その女性は頭にきて、去っていく犯人につい中指を立ててしまったそうです。すると、その男性は止めておいたバイクからナイフを持ち出し、女性の指を切断したとのこと。かなり衝撃的な事件ですが、在マレーシア日本国大使館のホームページ、マレーシア生活安全情報に“万一、犯人と鉢合わせしてしまった場合には、無理な抵抗はせず、相手を刺激しない。”と教訓が掲載されています。失う物よりも、自分の身の安全が第一です。
さらに、インド系マレーシア人のローカル女性の友人は、海外から帰国しマレーシアの空港に着いたらすぐに、着けているゴールドネックレスなどのジュエリーを取りバッグにしまって隠す、路上を歩く際はバッグをスーパーの袋に入れる、と言っていました。地元の人でもこのように気を付けているため、隙がありそうな外国人で、お金がありそうに見える日本人はなおさら、高級品を身につけない方が安全です。
誘拐多発!子どもから目・手を離さない
最近ショッピングモールでちらほら、ハーネスを付けている子どもを見かけます。犬の散歩みたい、と賛否両論日本ではあるかと思いますが、マレーシアは誘拐大国。子どもの危機管理に真剣な親御さんなんだな、という目で筆者は見ています。公園の遊具で一人で遊び、親とはぐれて泣いている子を見かけたこともあり、誘拐多発の国なのに親の危機管理がのんびりしすぎの印象を持っていたからです。また、習い事の教室は、オートロックで中にいるスタッフしか開錠出来ない扉を使用するのが普通な、マレーシア。
つい先日、知人の息子さんが通っているインターナショナルスクール入り口で誘拐未遂事件があり、親に注意喚起レターが回ってきたのが、筆者のところまでシェアされました。大使館のホームページでも過去の類似事件を見つけることができますが、富裕層が通う学校があるエリアでは、過去にもこうした事件が起きています。警備員の人々も、頼りにならないことが多いと聞きます。そのため自分の身は自分で守るのが、鉄則!
『Malaysia Digest(マレーシア・ダイジェスト)』の『Despite Increasing Risks Of Kidnappings, Many Parents Still Leave Their Kids Unsupervised (誘拐のリスクが高まっているのにもかかわらず、多くの親が子どもに付き添わないで放置している)』という記事からの引用から実態がわかるため、下記します。
“ロイヤル・マレーシア警察によると、2012年1〜10月の間に4,804人が行方不明となり、そのうち発見されたケースが2,332。2,472人は依然として行方不明となっている。またそのうち、1,177人は18歳以下の子どもとなっていて、うち896人は女の子である。この統計から分かることは、マレーシアでは毎日約16人が行方不明になること”。
これだけ頻発しているのに、子どもの近くを付き添わないで公園で子どもだけで遊ばせていたり、ショッピングモールで親が買い物に夢中で、子どもが店内で一人になっていたりするのを見かける、と記事は警鐘を鳴らしています。
筆者は5歳のころ、近所の友人宅に一人で歩いて遊びに行っていたなぁと、安全だった日本を遠い目で思い出してしまいます。マレーシアに子連れで来られる方は、周囲ののんびりムードに流されず、子どもから目・手を離さないように気を付けてくださいね。
以上になります。上記の他には、流しのタクシーやショッピングモールで客待ちをしているタクシーを使わず、タクシーアプリ(UberにGrab)で配車したタクシーのみ利用すること。特にいいのが、『Grab(グラブ)』のTex1mとExecutiveサービスです。理由は、見た目が個人車でなくタクシーと第三者から一目でわかること、乗車から降車まで運営会社の追跡機能で管理されているためです。
スリにひったくり、最近はジカウイルスにテロの危険と、在住者としては気が休まらないのが本音ですが、対策をしっかりとれば、トラブルに遭う可能性を減らすことができます。観光で来るみなさんも、防衛策をしっかりとって、トラブルのない楽しい旅行となりますように!
<参考>
・外務省海外安全ホームページ
・在マレーシア日本国大使館
・Crime – Numbeo
・Despite Increasing Risks Of Kidnappings, Many Parents Still Leave Their Kids Unsupervised – The Malaysian Digest
コメント