オランダの南ホラント州にあるデルフト(Delft)。その街の名前は、日本人の私たちにとっても聞きなれた街の名前のひとつです。それはひとえに、古くは17世紀から、独特の美しい青色「デルフト・ブルー」で彩られた焼き物「デルフト焼」のおかげといえるでしょう。
意外と知られていませんが、デルフトはかの有名なオランダ人画家ヨハネス・フェルメールが生まれ育ち、生涯をすごした場所でもあります。フェルメールの作品はどれも光の描写や画題がきれいで独特の魅力があって、日本でも人気のある画家です。その特有の魅力のある絵画様式は、どのように描かれたかも正確には知られておらず、絵のモデルなども謎に包まれています。「真珠の耳飾の少女」や「牛乳を注ぐ女」など、神秘的な絵画を数多く遺したフェルメール。デルフトの街を訪れれば、そんなフェルメールの秘密に触れることができるかもしれません。
デルフトの街は、デン・ハーグ市の南側に隣接しています。デン・ハーグ観光の際に、時間を作って立ち寄ってみるだけでもコンパクトな古都の雰囲気が楽しめるのですが、今回は、デルフトの街中がとりわけにぎわう、毎週木曜日と土曜日に行われている野外マーケットの様子をご紹介します。
週に二度の町が賑わうマーケット
デルフトの野外マーケットは、毎週木曜と土曜の朝10時ごろから夕方17時ごろまで開かれています。野外マーケットの常として、お店によっては午後早々商品が売り切れてしまったり、16時ごろに閉まってしまうところもあるので、訪問するなら大体14時ごろにはデルフトに到着しておいた方がよさそうです。
週に二度のマーケットデーには、広場に露店の主がブルーシートを広げていたり、移動式の車両型のお店が並んでいたり、運河沿いに露店が立ち並んでいたりして、人通りが増え、街は大賑わいとなります。
木曜日の野外マーケットは、主にお花の市場や食料品などの一般雑貨のマーケットがメインですが、土曜日には美術品や骨とう品などが集められたアンティークマーケットが充実しています。
雑貨のマーケットは、大規模なものが毎週木曜日にデルフトの中心的な広場であるDe Marktで、小規模なものが毎週土曜日にBrabantse TurfmarktとBurgwalで開かれています。
骨董品が揃うアンティークマーケットは、4月から10月までの毎週木曜と土曜に開催されます。木曜の方が規模が小さく、土曜の方がメインなので、アンティーク雑貨が好きな方には圧倒的に土曜日のマーケットを訪れることをお勧めします。場所は、Hippolytusbuurtの運河沿いと、土曜はVoldersgrachtとWijnhavenです。
こちらは、観光で訪れる方にとっては見逃せないチーズ市場の一角。直径1メートルはあろうかという大きなチーズの塊がごろごろテーブルの上に並んでいます。もちろん、小さなかわいらしいボール状のものもあります。一つずつ表面がワックスがけしてあるので、持ち運びに安心で日持ちがしますし、温度によらず鮮度が保てるのでおみやげにおすすめです。
色々な種類のチーズが並んでいて、ホールでも量り売りで少しだけでも購入できます。筆者は、直径10センチメートル程度の小さいチーズを1ホール購入しました。表面の焼印には、「+48」、つまり48か月熟成と書かれたゴーダチーズです。手のひらサイズの1ホール、お値段は5.50ユーロでした。
この他、真っ黒なチーズやレフ(Leffe)という銘柄のベルギービールのチーズ、クミンシード入りのチーズなどがありました。好きな量だけ切り売りしてもらって、食べ比べすると楽しそうです。
オランダらしく、お花を取り扱う露店も数多く並んでいます。7月に訪れたので、ひまわりがたくさん売られていました。何やら人だかりができていたので近づいてみると、「1束1ユーロ! 持ってけドロボー!」と花屋のおじさんたち。威勢のいい掛け声に誘われて、老若男女が花屋の店先に集まっていました。筆者も思わず1束手に取り、1ユーロをぽんと店員さんに手渡しして買ってしまいました。安かったのですが、お花の鮮度は良かったのでお買い得でした。
花束を手に市場を歩いていると、地元の人になった気分がして、より楽しい市場体験ができます。花は手頃な値段で新鮮なものが手に入りますので、家で飾ってもよいですし、自分で包装すればちょっとしたプレゼントにもなるので、機会があればぜひ買ってみてくださいね。
掘り出し物を探す楽しみ
骨とう品を並べている露店はどこも個性的な店主がのんびりと店番をしているのが特徴的です。古い真鍮や銅の燭台や、誰のものかわからない額縁入りの絵画、中古レコードやCD、ビデオなどもあります。
通りの運河沿いには、ブルーシートを道路に広げて、アンティーク小物を販売しているおばあさんがいました。大小の花瓶や動物を象った陶器の置物など、どこかいわくありげで、雰囲気もある小物がずらりと並んでいます。商業的な雰囲気よりも、個人が売買しているような印象があって、どこか親しみが持てるお店が多いと思いました。
小皿やティーカップやソーサーのセットがありました。日本にないような絵柄や色合いがかわいいんです。デルフト焼を思わせる深い青の絵柄のついたものには思わず目が留まります。もしかして素晴らしい名作が、この土曜マーケットでならお買い得な値段で手に入るかも……?! という期待が芽生えます。
オランダではおなじみのご当地菓子「ストロープワッフル」の屋台も、もちろんありました。このデルフト土曜マーケットに出ていた露店では、焼きたてのストロープワッフルに加えて、色々なソースを選んで好きな味のクレープを注文することもできます。また、お土産用のワッフルの缶や陶器製の容器の種類もとても豊富で魅力的です。筆者は、今まで幾つかのオランダ国内の野外マーケットを歩いてきましたが、ここまで品ぞろえが良いお店は見たことがありませんでした。
ワッフルがぴったり入る陶製の容器は、12ユーロ程度とお値段は高めですが、アムステルダムやデルフトの町並みやフェルメールの作品など、いろいろな絵柄があります。白地にデルフト・ブルーのクラシックなものと、フルカラーのもの、そして缶入りのものなど。お土産やちょっとした贈り物にぴったりで、喜ばれる一品です。
町歩きついでにマーケットの賑わいも楽しめる土曜日に、デルフトの町をぜひ訪れてみてくださいね。
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