芸術家に愛されたモンマルトル。自由な空気に満ちあふれていたモンマルトルの空気に触れようと、多くの観光客がやってきます。
名所であるサクレクール寺院やテルトル広場は一年中お祭りのように賑やかです。
その一方で、一歩路地裏に入れば、絵画や写真で見たノスタルジックなモンマルトルが今も残ります。
モンマルトルは多様な魅力のあるエリア。そんなモンマルトルを紹介します。
モンマルトルの簡単な歴史
本来モンマルトルはパリの郊外で、モンマルトルの村と呼ばれていました。
19世紀初頭までワイン畑が一面に広がっていたのだそうです。風車が回る、のどかな農村だったといいます。
やがてモンマルトルは19世紀の中頃から都市として変化することとなります。居酒屋やキャバレー、ダンスホールができ、歓楽街として有名な町となりました。「ムーランルージュ」など、今でもその名残を見ることができますね。
1860年にモンマルトルはパリの一部として編入されました。家賃も安く、歓楽街特有の自由な空気感があったモンマルトルには、お金のなかった若いアーティストたちが移り住むようになるのです。モンマルトルは画家のインスピレーションの源。この町は20世紀を代表する芸術家たちを生み出したのです。
芸術家が愛したモンマルトル
モンマルトルにはピカソ、ゴッホ、ルノワール、ロートレックなど、20世紀を代表する画家がアトリエを構え、絵画の制作をしました。
今でも芸術家のアトリエだった建物が残っています。1900年初頭、ピカソはモンマルトルにアトリエを構えました。詩人、マックス・ジャコブに名付けられたこのアトリエ「洗濯船」には、ピカソの他に、モディリアーニ、ヴァン・ドンゲンが集まり制作活動をおこないました。ピカソがここで「アヴィニヨンの娘たち」を制作したのは有名な話です。
モンマルトルの芸術家で忘れてはいけないのが、ユトリロです。この町で生まれたユトリロは、画家のモデルをしていた母の影響から、自然と画家を志すようになりました。ユトリロの人生は波瀾万丈だったといいます。私生児として生まれ、アルコール中毒に悩まされました。晩年は家から出ることもできず、葉書の写真を見てモンマルトルの風景を書き続けたといいます。
ユトリロの描いた絵からは下町情緒溢れ、優しい光が包み込むようなモンマルトルの姿を感じとることができます。
洗濯船/Le Bateau-Lavoir
13 Rue Ravignan75018 Paris
Metro :12番線Abbesses
観光名所:サクレクール寺院とテルトル広場
モンマルトルの名所といえば、サクレクール寺院。
サクレクールは聖なる心臓を意味します。モンマルトルの丘にそびえ立つ真っ白なこの寺院はモンマルトルのシンボル的な存在。
サクレクール寺院建設は、普仏戦争で亡くなった国民のために建築の構想が始まったと言われています。1875年に建設が始まり、1919年に礼拝が開放されました。その年は第一次世界大戦の終わり。この戦争で亡くなった死者を弔う役割を果たしました。
サクレクール寺院からはパリの街を一望することができます。
ここから見える景色が美しいのは夕暮れ時。パリの街を夕日が埋め尽くす瞬間が、言葉を失い心に響くほど綺麗なのです。
サクレクール寺院のすぐ隣りにあるテルトル広場は似顔絵や風景画を描くアーティストが集まる場所です。
芸術の町の今を見てみようと観光客が集まります。多くの芸術家を生み出したモンマルトルの名残が感じられるのです。またテルトル広場のすぐ傍にはサルバドールダリの美術館「エスパスダリ」もあります。
サクレクール寺院
35 Rue du Chevalier de la Barre, 75018 Paris
テルトル広場
Place du Tertre, 75018 Paris
Metro :12番線Abbesses, 2番線Anvers
アメリなどの映画の舞台地
1900年代前半、モンマルトルは画家や写真家に愛されましたが、2000年代に映画監督たちによって再び脚光を浴びることになりました。
2001年、フランス人監督ジャン=ピエール・ジュネはモンマルトルを舞台に「アメリ」を制作しました。モンマルトルに住むウェイトレスのアメリの不思議な物語は世界的に大ヒットし、今も映画の舞台地にはファンが絶えず訪れています。特にアメリの働いた「カフェ・ド・ムーラン」は、公開から10年以上経った今でもアメリファンで溢れかえっています。
またオムニバス映画「パリ・ジュテーム」や「ミッドナイトインパリ」でもモンマルトルが描かれています。芸術家の愛したモンマルトルは再びスクリーンの中で輝いているのです。
カフェ・ド・ムーラン/Café des Deux Moulins
15 rue Lepic, 75018 Paris
Metro :12番線Abbesses, 2番線Anvers
何でもない路地裏の魅力
モンマルトルの魅力といえば、サクレクール寺院やテルトル広場から少し離れたところにある何でもない路地裏にあります。
ぜひ観光地から離れた場所を歩いてみましょう。素顔のモンマルトルに出会うことができます。
パステルカラーの建築物、緑溢れる小さな広場、坂道、階段、これらはモンマルトル特有の風景。
モンマルトルの路地裏はどこをとっても絵になるほど美しいのです。絵画や写真で見た風景に出会えるかもしれません。100年前に描かれたモンマルトルは今もここにあるのです。
今もワイン作りが行なわれてるモンマルトル
ワインの生産地だったモンマルトルには現在も小さなぶどう畑があります。
1933年にモンマルトル美術館の裏側に、この村のシンボルだったぶどう畑が復活しました。モンマルトルでは10月の第2週末にぶどう収穫祭が行なわれます。1年に一度のぶどうの収穫を祝うモンマルトルの大イベント。
3日間に渡って行なわれるこのお祭りでは、大道芸人によるパレードや、フランス各地から生産者が集まりスタンドが立ちます。
またこのぶどう畑から作られたワインの販売もあります。1000本ほどしか作られないモンマルトルのワインは希少価値大。毎年多くの人が訪れる、モンマルトルらしい活気のある祭りです。
モンマルトル美術館
最後に紹介したいのが、モンマルトル美術館。かつてルノワールのアトリエだったこの美術館にはモンマルトル関連の芸術作品を展示しています。
モンマルトルのアートの歴史を知ることのできる興味深い美術館。
この美術館の魅力は美しい庭園にあります。鳥の声しか聞こえてこない静かな庭には、100年前のモンマルトルの時間が今も流れているようで、ゆったりとした時を過ごすことができます。
この庭からはぶどう畑、ピカソたち芸術家が通ったという伝説的な居酒屋「オ・ラパン・アジル/Au Lapin Agile」が見えます。モンマルトル美術館は古く良き時代のモンマルトルを体験する貴重な空間です。
モンマルトル美術館/Musee de Montmartre
12-14 Rue Cortot, 75018 Paris
Metro :12番線Abbesses
ホームページ: http://www.museedemontmartre.fr
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