カンボジアで観光と言えば、アンコールワットがあるシェムリアップのイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。確かにプノンペンに比べるとシェムリアップは観光資源がたくさんあるのは事実ですが、プノンペンにもシェムリアップの遺跡群に負けないくらい美しい遺跡があります。
ここでは、プノンペンの北の方にある「ワットプノン」と呼ばれる仏教遺跡を紹介していきます。
カンボジアと仏教の関係について
ワットプノンの説明に入る前に、知っておきたい前提知識があります。
それは、カンボジアと仏教の関係についてです。
実はカンボジア人は元から仏教を信仰していたわけではありませんでした。
古代のカンボジア人は土着の精霊を信仰し、その後はインドの影響を受けてヒンドゥー教を信仰していました。かの有名なアンコールワットも、元々はヒンドゥー教の最高神の一角であり、宇宙の維持と世界の救済をもたらすヴィシュヌ神を祀った寺院だったのです。
しかし次第にカンボジア国内でのヒンドゥー教の求心力が失われていき、代わりに仏教が台頭してきたことから、寺院も仏陀を祀るようになりました。
ということもあって、カンボジアの寺院は仏陀を祀っていたとしても、ナーガやガネーシャなどといったヒンドゥー教の神々の像も見られるのです。
ワットプノンも同様で、お土産ショップに行くとこのようにガネーシャやガルーダなどといった、ヒンドゥー教の神々の像も売られています。
ワットプノンの基本情報
ワットはクメール語でお寺、プノンは丘とか山という意味があり、その名の通り、プノンペンで一番高い場所にある寺院で、この名前がワットプノンの成り立ちに大きくかかわってきます。それは後ほど説明していきます。
プノンペン中心部からもトゥクトゥクで30分以内で行くことができて、入場料も1$と格安なのですが、いかんせん知名度が低いため、わざわざ訪れる観光客は少なく、もっぱらローカルの人々の憩いの場となっています。
なので人込みに煩わされることもなく、落ち着いて観光できる穴場スポットになっています。
ワットプノンの成り立ち
ワットプノンには、こんな言い伝えがあります。
昔、現在のプノンペンにあたる場所にペン夫人という信心深い大金持ちが住んでいたんですね。
ある日、ペン夫人は大雨で川のようになった道路から、仏像が流れてくるのを見たそうです。
余談になるのですが、カンボジアは雨季になると道路が冠水してしまうくらい雨が降るんですね。道路は川のようになり、太ももくらいまで水かさがあることもあります。
当時はプノンペンは窪地になっていて、今よりさらに冠水しやすかったと思われます。
そんな状態を見た信心深いペン夫人は心を痛めました。
そこで、カンボジア中から土砂を集めて、プノンペン全体の土地を高くしました。(プノンペンの語源はここからきています。日本語に訳すと、「ペン夫人の丘」ですね。)
さらにそれだけでは心配だったペン夫人は、仏像を祀るところはさらに高くしました。その場所こそ、現在ワットプノンと呼ばれ、多くの現地の人々から愛される寺院です。
ワットプノンの見どころをおすすめ見学ルートでご紹介!
次にワットプノンの見どころをお伝えしていきます。ワットプノンは特に見る順序は決まっておらず、自分の好きなところから見ていいのですが、ここではおすすめの見学ルートをご紹介します。
入口
まずは入り口にあるカウンターでチケットを購入します。ワットプノンは入場料も安く、わずか1$(約120円)でチケットを購入できます。
時計台
ワットプノンに入場して、地上をぐるっと歩いてみると、そこに現れるのはひときわ目立つ大きな時計台。この大きな時計台はワットプノンのシンボルになっています。ワットプノンの中で一番目立って写真映えもするとあって、ここで記念撮影を撮ったりしている人も多く見受けられます。
本堂へ
地上をぐるっと一周したら、高台にある本堂を目指しましょう。道中は木陰が多く、ここが常に雑然としているプノンペンにあるのを忘れさせてくれます。レンガ道に落ちる木漏れ日はとても絵になりますね。また観光客も少ないため、ゆったりと歩くことができます。
ただ、写真のように足場が悪いところもあるので、歩く際は十分注意してください。
本堂前
本堂前の最後の階段の入り口に、身を清めるための水があります。横に置いてあるコップを使って口や手を清めましょう。日本の神社などと違って、清める順番は明確に決まっていないので、好きな順番で清めて構いません。
この水は写真の通り蓮が浮いていて、顔を清めたりすると蓮のいい香りがしますよ!
ペン夫人の偶像
最後の階段を上がると、本堂前にワットプノンを建設したペン夫人が祀られています。
蓮の花やお線香は外で購入できるので、お供えしたい方は購入しておきましょう。またお祈りするときは、100-1000リエルくらいの少額のお金をペン夫人が持っているお椀に入れます。
ミニチュアサイズのペン夫人もいます。こちらもお金がお供えされていることがわかりますね。他の東南アジア諸国だと、食べ物をお供えすることも多いのですが、カンボジアの場合は、ほとんどお金です。
本堂
丘の頂上に登ると写真のような本堂が見えます。
カンボジアに移住する中華系の方々も年々増えています。それだけでなく、中国の文化もカンボジアに根付きつつあり、ワットプノンの本堂にも中国でよく見かける赤いランタンが飾ってあります。
本堂の中では、ペン夫人が自分の財産を使ってまで必死になって守った大仏が祀られています。大仏は黄金に装飾され、鎮座する台の下には花やお金などがお供えされています。
タイミングが合えば、写真のような仏教音楽を聴くこともできます。木簡や太鼓、鈴が奏でるメロディーは神秘的で異国情緒たっぷり。自然と手を合わせたくなるメロディーです。
ミュージアム:WAT PHNOM CAMBODIA ARTS AND CRAFTS CENTER
ワットプノンの境内を歩いていると、写真のような白い建物があります。ここがワットプノンのミュージアムWAT PHNOM CAMBODIA ARTS AND CRAFTS CENTERで、中に飾っているものは買うこともできます。
ここで、どんな物が飾ってあるか見てみることにしましょう。
カンボジアにはあまり絵画のイメージはありませんが、ワットプノンのミュージアムには絵画も展示されています。これらはすべて買うこともできます。作品を購入したい場合、価格はもちろん絵によって異なりますが安いもので300$(40000万円弱)ほどでした。
部屋に一つ飾れば、いつでもカンボジアを思い出すことができそうですね!
ミュージアムの中には、木を彫った彫刻もありました。模様の細部に至るまで丁寧に彫ってあって実に見事。ちなみに写真に写っている彫刻は、クメール神話で海で生まれたと言われる天女「アプサラ」で、カンボジアの伝統ダンス「アプサラダンス」は彼女がもとになっています。
中には、こういった工芸品もありました。草を編んで作られているため軽く、彩りも鮮やか。写真にあるようなボックス型だけではなくて、財布や筆箱タイプのものもあり、お土産にぴったりな一品です。
ミュージアムの外にもお土産ショップがあり、そこではポストカードや写真手前に見える色とりどりのタイパンツ、クロマーと呼ばれるカンボジアのスカーフなどが売られていました。
自販機もあるので、観光中喉が渇いたらここで何か買っていくことをおすすめします。
留意しておきたい注意事項
ワットプノンを観光する際に、いくつか留意しておきたい注意事項があるのでお伝えしていきます。
熱中症
カンボジアは一年を通して日中はほとんど毎日30度を超える熱帯の国です。そのため、水分補給を怠ると簡単に熱中症にかかってしまいます。特にワットプノンのような遺跡を見る場合は、スポーツドリンクを持っていくことをおすすめします。
なお、この場合スポーツドリンクはポカリスエットにしておきましょう。大きなデパートやコンビニには置いてあることが多いです。アクエリアスもあるし、こちらの方が安価なのですが、カンボジアに置いてあるアクエリアスはほとんど「炭酸あり」のアクエリアスなのです。私は炭酸ありのアクエリアスも好きですが、水分補給という意味では、炭酸が胃に負担をかけてしまうのでポカリスエットの方をおすすめします。
偽僧侶
ワットプノンのような仏教系の観光地には、ときどき偽僧侶が出没し、数珠などを買わされることがあるので注意しておきましょう。
ここで、本物との見分け方をお伝えします。
偽僧侶は靴を履いていることが多いですが、カンボジアの僧侶はほとんどの場合サンダルを履きます。さらに、偽僧侶の服装は一見するとちゃんとした袈裟を着ているように見えますが、よく見ると下がズボンになっていたり色がどこかおかしかったり(カンボジアの僧侶の袈裟は、オレンジに近い黄土色か暗い赤色であることが多いです)と本物との間に相違があります。また、偽僧侶は基本的に単独で行動しますが、本物の僧侶が托鉢に出かけたりするときは普通複数人で行動します。
以上お伝えしたことを参考に、偽僧侶には気をつけましょう。
もし僧侶らしき人が数珠を買わせようとしたらきっぱり断って構いません。そもそも本物の僧侶は数珠を無理やり買わせようとなんてしないので。
ワットプノンでイベントが開かれることも
プノンペンには広場らしき場所がほとんどありません。
そのため、広場っぽいスペースがあるワットプノンの中で度々イベントが開かれます。特にお正月シーズンはワットプノンは出入りに苦労するほど人が集まり、みんなで踊りを踊ったり音楽を聴いたりして新年を迎えます。
夜になるとワットプノンは別の顔を見せる!?
今までご紹介したワットプノンはすべて昼の顔です。もし、ローカルの男性から「これからワットプノンに行こう」と言われたら、それはほとんど夜の顔を指します。
夜になるといったい何があるのかというと、ワットプノン自体は夜は閉まってしまうのですが、ワットプノン周辺にはフリーの売春婦が立ち並んでいるのです。
昼のワットプノンは平和そのものですが、夜は盗みをはたらく者や麻薬の売人などもうろついているので、あたりには十分警戒してください。
ワットプノンへの行き方
ワットプノンへはトゥクトゥクを利用して行くのが、一番行きやすいです。ワットプノンはプノンペンでは知らぬ者がいないような有名な観光地なので、「ワットプノン」とドライバーに伝えれば連れて行ってもらえます。
まとめ
あまり遺跡観光のイメージがないプノンペンですが、ワットプノンはじっくりと見学できる穴場の遺跡観光スポットです!
プノンペンに来たときは、ぜひ一度、ワットプノンを訪れてみてください。
ワットプノンの基本情報
最後に、ワットプノンの基本情報をお伝えしておきます。
住所 | Wat Phnom, Phnom Penh |
営業時間 | 特に規定なし |
入場料 | 1$ |
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