みんなが楽しい!同性愛者の祭典マドリッド・プライド・フェスティバルの紹介

スペイン

マドリッドで開催されるイベントの中でも、年々大きくなるのが同性愛者の祭典マドリッド・プライド。7月1日前後の週末が恒例です。

デモと称したパレードがスペインで始まってから40周年となった2017年は、ヨーロッパ大会のヨーロッパ・プライドだけでなく、世界大会ワールド・プライドの開催地にも選ばれました。

通常は3日程度のところ、2017年は10日間。把握できないほどたくさんのイベントが開催されました。

同性愛者に対するスペインでの受けとめ方は?

マドリッドのチュエカ地区に同性愛者が集まり始めたのは1980年代。今では同性愛者を象徴する地区として有名です。法的に同性婚が認められるようになったのはヨーロッパで3番目の2005年。今では養子縁組も認められています。

スペインの人の同性愛者に対する印象はどうなのでしょうか?

法的な平等化が進んだといえ、カトリックの信仰心が強い年輩者や保守的な地方では、抵抗を感じる人が多いと聞きます。同性愛者を侮辱するスラングは、マドリッドでも健在。今回、ワールド・プライド開催にあたり交通規制が行われるとわかると、批判を口にする人も目立ちました。

それでも、同性婚が認められる前、2004年の調査で50%以上の人が同性婚を支持する結果が出ているので、比較的理解はあるようです。マドリッドの街中で同性同士手をつなぐ光景を見かけても、特に誰も驚くことがないのがその証拠でしょうか。同性愛者であることを公言する私の友人は、スペイン大手企業で管理職として働いていて、特に仕事上でも問題はないようです。

あくまで一般論ではありますが、同性愛者が住む地域は文化度が上昇し、治安が良くなるという話も聞いたことがあります。実際に、同性愛者の集まるチュエカ地区は、以前は売春やドラッグ中毒者の多い地域と見られていましたが、今では個性的なお店やカフェが並び、おしゃれな地区として知られるようになりました。その点は、ポジティブに捉えられているようです。

 

チュエカ地区から街全体へ広がるマドリッド・プライド

数年前まで、マドリッド・プライドは同性愛者の集まるチュエカ地区とその周辺限定で開催されていましたが、年々人気が高まるにつれて地域も拡大し、数年前からは中心街全体で行われる傾向にあります。

ワールド・プライドの開催地に選ばれた2017年も例外ではなく、中心地から少し離れた公園までが会場となり、マドリッド県や市が率先してコンサートパフォーマンスなどのイベントを企画。大学でも知識人を交えて世界人権会議マドリード・サミットが開かれたとか。開催期間は、どこを見回してもレインボーカラーの旗がはためき、街全体がマドリッド・プライド一色になりました。

地下鉄チュエカ駅の構内もレインボーに染まり、歩行者用の信号は一般的な1人のマークから2人の女性や男性が手をつなぐマークに衣替え。期間前からテレビでも300万人の参加者が見込まれると連日報道され、観光効果への期待が感じられました。

そんな期待が膨らんだワールド・プライドは、あまりにたくさんのイベントがあって全て回ることはできませんでしたが、気になったイベントを見に行ってきました。

子供達の理解を深めるチュエカ・キッズ

数あるイベントでも私の目を引いたのがチュエカ・キッズ

広い公園にイベント会場を設けて、子供向けにコンサートやワークショップが開かれるとか。早くから子供の理解を深める試みなのでしょうか。イベント最後の週末にイベントが開かれるというので、土曜日の昼前に見に行きました。

行った時はちょうどコンサートをやっていて、小さな子供が踊れるようなポップミュージックを歌っていました。見ると、観客にはレインボーの旗をマントのように羽織った子供たちがいたり、大人や子供がステージの前で踊ったり芝生に座ったり、思い思いに過ごしています。歌の内容が同性愛に関係するのかもしれませんが、一見したところはよくある小さなコンサートでした。

考えると、いくら同性婚の養子縁組が認められているとはいえ、学校や地域での受け止め方はそれぞれ。

自然の摂理に反すると頭ごなしに言ってくる人もいるかもしれません。特に意識して同性愛をアピールしなくても、世間の目を気にせず、あくまで自然体にコンサートを親子で楽しめる場がもっとあって良いのかもしれないと思いながら、その場を離れました。

 

イベントのハイライト!パレード

ハイライトは7月1日午後から夜に予定されたパレードアトーチャ駅から大通りを通ってコロン広場まで、2階建てバスや大型トラックの山車に乗った参加者のパレードがゆっくりと進みます。

バスで19時過ぎに駅に向かいましたが、駅に着く700m位手前で交通規制のためにバスを降ろされ、歩いていくと車の代わりに人、人、人!アトーチャ駅の周りは交通止めになっていて、徒歩以外に近づく方法はないようです。

開始地点であるロータリーで待機すること1時間強。20時すぎになってロータリーの奥から最初の山車が見えてきました。

進む時はゆっくり、止まっている時間の方が長いと思うほどノロノロと進みます。山車には鈴なりに人が乗っていて、周りにいる私たちに手を振ったり踊ったり。政党が出す山車もあり、実際、何の祭典なのかわからなくなってきます。何台か進んだ後に、ゲイバーなどの山車が登場。ようやく雰囲気も出てきました。山車がなかなか進まないと思っていると、華やかに仮装したドラァグクイーンが横を通って私たちを楽しませてくれます。彼らは、時には人に頼まれて一緒に写真を撮っています。なかなか皆さんフレンドリーです。

52台のパレードが予定されていたようでしたが、21時前後の日が沈む前は、観光業者や政党などの山車が目立ちました。

パレードの間に行われる予定の同性婚の挙式にも興味があったのですが、日が翳ってきた21時半過ぎにギブアップ。このままパレードだけを見ていたら夜中になりそうだったので、移動することにしました。

 

イベントの中心、チュエカ地区へ

パレードの人ごみから離れ、チュエカ地区向かいます。

途中、パレードの周りはレストランやバルも繁盛しているようで、店の前にはもちろんレインボーカラーの旗が。反対に、少しパレードから離れると通常の週末よりもしんと静まり返っているようです。

驚いたことに、大通りのみならず、プエルタ・デ・ソル周辺全体で歩行者天国。こんなことは、私がスペインに来てから初めてのようです。マドリッド出身の友人も、記憶にないほどの交通規制だと言います。地下鉄も電車もソル駅は閉鎖。テロ対策が多大に影響しているのかもしれません。

グラン・ビアというチュエカ地区近くの大通りも歩行者天国になっていましたが、救急車や警察の車が通れるように中央に柵を設けていました。

さて、チュエカ地区の入り口に到着。ペドロ・セロロ広場というコンサート会場に行こうとすると、通り入り口で警察官から他の通りに回るように言われました。こちらでも警備は厳重です。コンサート会場の手前は特に警備が厳重で、リュックサックや水のボトルを持っている人は荷物検査がありました。

時間は22時過ぎ。コンサート会場を出ると、いつもの週末よりは人が多いですが、思ったより人で埋まっていません。レインボーの旗が至る所に見える以外は、お酒を飲む人たちが道に広がっているだけで、見た感じはマドリッドの夏によくあるお祭りです。まだパレードの最中なので、パレードが終わる頃に増え始め、夜中に盛り上がるのでしょう。

 

イベント中は地下鉄24時間運行、でもスト決行

イベント中は、大規模な交通規制が行われていて車での移動ができないため、地下鉄や電車に人があふれました。

中心のソル駅などは、警備のためか期間中夕方以降は閉鎖されましたが、地下鉄は24時間運行。徹底していると思ったら、マドリッド・プライドの期間を狙って地下鉄運転手のストが決行されました。

夏や冬の休暇時期になると交通機関のストが行われるのは毎年のことですが、まさかこのイベントにぶつけてくるとは。

期間中に乗った地下鉄では、通常約5分おきのところ、10分15分待たされることもあり、プラットホームにも電車にも人があふれていました。

私は幸い一番人の多いパレードの日に地下鉄に乗ることはありませんでしたが、多くの人が被害を受けたようです。

 

これまでと今年と

期間中は、連日有名人も呼んで華やかにイベントやコンサートが開かれました。開会式は、アカデミー外国語映画賞受賞経験のあるアメナーバル監督が登場。コンサートでも、人気の歌手ブラジル人カルリーニョス・ブラウンがトリを務めたといいます。

予測を下回ったものの、期間中イベントに参加したのは220万人経済効果のある観光イベントとしても期待が高かっただけに、盛大に行われた今回のマドリッド・プライドは、数年前、チュエカ地区周辺だけで開催していた頃とは別のイベントのようでした。

最近は、安全上の理由もあってかパレードもアトーチャ駅からコロン広場までの大通りで行われていますが、数年前まではチュエカ地区からすぐのグラン・ビアを練り歩くものでした。

グラン・ビアを練り歩いた頃は、パレードに参加する山車の数は少なくても、それぞれにドラァグクイーンが乗っていたり、バスやトラックの間を歩く列に参加できたり、自分も参加できた気分になったのを覚えています。

暑い日などは、暑さ対策のために消防車から水が撒かれてびしょびしょになるなどハプニングもありましたが、それも楽しい思い出です。

イベントとして大きくなっても、チュエカ地区の独特だけれど楽しい雰囲気が、外から来る人にも伝わるお祭りのままでいてほしいと思うのは、きっと私だけではないはずです。

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