春のチューリップを始めとする花の栽培で世界的に有名なオランダには、世界で一番歴史のある植物園があります。それがライデンの市内にあるライデン大学植物園(Hortus botanicus、ホルタス・ボタニクス)です。
歴史ある植物研究のメッカ
ライデン大学植物園は1590年に造られた植物園で、16世紀の植物学者カルロス・クルシウス(Carolus Clusius)が設立に携わっています。クルシウスは、ヨーロッパでのチューリップ・バブルを生み出すことになるチューリップの品種改良で有名になり、ライデン大学で行った植物の研究でも知られている植物学界の有名人だそうです。そのような植物学の祖が造った庭園は、好奇心をくすぐるような多種多様の珍しい花木で溢れています。
園内には、国内外から集められた珍しい植物が所狭しと並んでいます。それぞれがよく手入れされ、良い状態で育てられているのを見ると、多くの人の手がかかって今の植物園の姿があることが伝わってきます。園内にはケヤキなどの大木も多く、木陰で一休みする場所には事欠きません。
オランダでジャングルの空気を体験!
運河沿いにあるライデン大学の門から入ると、植物園のチケットセンターが右手に現れます。チケットは大人7.5ユーロで、子どもは3ユーロです。ミュージアムカードがあれば無料です。
橋を渡ってまっすぐ西の方角に進むと、左手に「熱帯植物園(Hoge Kas)」の入口があります。ここが一番見ごたえがあるパビリオンだと思うので、まず最初に入ってみてください。
建物に入るとすぐに、オランダの乾いた冷たい空気とは180度異なる、熱帯ジャングルのような湿った暖かい空気が肌で感じられます。巨大な葉を茂らせたバナナなどの熱帯植物が生い茂っていて、高い天井まで届くような大きな植物やツタで、視界が緑の葉で覆われて、圧倒されました。調べると、この熱帯植物園は1938年に造られたもので、そのさらに150年前に植えられたイチョウの木を囲むようにして築かれたのだとか。植物の間を潜り抜けるようにして通ると、顔のすぐそばに不思議な形をした花か葉っぱか分からないような植物がぶら下がっていたり、大きな葉が揺れていたりします。熱帯特有のピンクや黄色の鮮やかな花も見られて、ジャングルに迷い込んだような、冒険気分に浸れます。
熱帯植物園の脇の建物は、「ヴィクトリアハウス(Victorikas)」という大きな温室です。鉄製の狭い階段を上ると、サボテンやアロエなどの多肉植物の寄せ植えが目に飛び込んできます。さらにその上の階には、ウツボカズラやハエトリソウなどの食虫植物の鉢植えがずらりと廊下に並べられていました。モウセンゴケのようなものなど、多種多様な食虫植物が育てられているので、間近で観察することができます。小さい虫が植物の罠にはまっている様子をみると、物言わぬだけに、植物というものがミステリアスな存在に感じられるのは気のせいでしょうか……。なお、ここの階段はヒールの細い靴だと登れないような穴の空いたものなので、訪問する際はぜひ歩きやすい靴を履いてきてください。
多種多様な植物に囲まれる
食虫植物の館でちょっと怖い気分に浸った後は、手前にあるバラの庭園を歩いてみてください。初夏のバラのメインシーズンが過ぎていても、品種によっては小さな花をつけているかもしれません。どこからともなく良い香りが漂ってくる、どこかロマンチックな庭園です。
さらに植物園の奥に入っていくと、シダ植物の庭や野菜畑も広がっています。面白いのは、ここには日本庭園さえあることです。そのわけには、日本とゆかりの深い、出島に滞在していたフランツ・シーボルトという医師で学者だったオランダ人の存在があります。医者でありながら自然科学にも関心を寄せていたシーボルトは、ヨーロッパにおける日本の植物の研究し、のちに「日本植物誌」という植物学の書籍をてがけました。そのシーボルトを記念した庭園なのです。ツツジやケヤキなど、日本で見慣れた植物が植え込まれています。さらに砂利の庭に囲まれた小さな庵があって、日本の雰囲気が漂う素敵な休憩スポットなので、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。シーボルト博士の銅像もひっそりと立っています。
また、庭園の奥には、Sterrewacht Observatoryというライデン大学所属の天文台があります。ドームやテレスコープといったこの天文台の施設や歴史、ライデン大学での天文学研究の今が学べるツアーも用意されているそうなので、問い合わせの上、今度ぜひ参加してみたいと思いました。
詳しくは下記のサイトに情報が掲載されています。
◆ライデン天文台→ https://www.strw.leidenuniv.nl/index.php)
ピクニックにもうってつけ
植物園は公園のように広々としていて、ベンチが結構多くあちこちに配置されているので、好きな場所を選んでゆっくり休憩することができます。芝生もあるので、ちょっと趣向を変えたピクニックにもいいかもしれません。7・8月は特別に、水曜日の夜間21時まで開園しているそうなので、また違った雰囲気の「夜の植物園」を体験できます。
筆者の訪問時、植物園の中のレストラン「Oranjerie」では、結婚パーティが行われていました。色とりどりの花や珍しい植物に囲まれて、緑いっぱいの空間でお祝いができるなんて、考えただけで幸せなパーティになりそうですよね。素敵です。
ライデン大学植物園は、いろいろな植物を鑑賞して、生態を学んで好奇心を満たすために訪れてもよし、公園でのんびりするような気分のときにリフレッシュに訪れてもよしのライデンの町で一番の癒し系スポットです。緑に囲まれたいとき、季節の花を眺めたいときにもぜひ訪れてみてください。
インフォメーション
名称:ライデン大学植物園(もしくはホルタス・ボタニクス(Hortus botanicus))
開園時間:月曜から日曜 10:00~18:00
7・8月の水曜 10:00~21:00
住所:Rapenburg 73, 2311 GJ, Leiden
公式サイト:https://www.hortusleiden.nl/
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