北海道でも有数の極寒の地・旭川市にある「雪の美術館」。2014年に社会現象ともなった映画「アナと雪の女王」の影響で、一躍、全国的に知られることになりました。実は筆者は、今回が初の来館。その氷と雪の芸術は一体、どのようなものなのか、旭川に足を運んでみました!
ビザンチン様式の中世ヨーロッパ風美術館
旭川市は札幌市から北へ約120㎞、JR特急で約80分、高速バスで約2時間20分ほどの街です。さらにそこから、路線バスで15分の高台に雪の美術館があります。すぐそばには市民に古くから親しまれている高砂台温泉があり、鑑賞後に寄ってみるのも良いと思います。
同美術館は赤レンガの塀に囲まれた「北海道伝統美術工芸村」内にあり、少し歩くと白い教会のような建物が姿を現します。それが雪の美術館です。
この建物自体が、非常に興味深いもので、ヨーロッパのビザンチン様式を用い平成3年(1991年)5月に建築されています。ドームやアーチなどの曲線美を用いた同美術館は総工費約45億円、調度品なども含めると約60億円という贅沢な建物。しかし、この中世ヨーロッパ風の風情が北海道の景色とはマッチしていると思います。
エントランスに入ると受付がありますが、まず神殿のような大理石やアーチ状の屋根、豪華なシャンデリアなどに目が奪われます。正面には優佳良(ユーカラ)織のタペストリー「雪の紋章」が飾られています。まさに雪と同じ白い世界に期待は高まります。入館料は大人700円です。
エントランスから螺旋階段を下りて、展示ブースに向かいます。螺旋階段を見下ろすと、雪の結晶をモチーフにした6角形のループが見事です。
下から眺めても見事な機能美を感じます。62段の階段を下りると、噴水とオブジェがあり、噴水にコインを投げると、願いがかなうと言われるようになりました。世界各国のコインが投げ入れられていて、それが模様のようになっています。
「氷の回廊」はアナ雪の世界!
螺旋階段を下りると、そこは何と地下18mの展示場です!最初は、皆さんが一番楽しみにしている「氷の回廊」です。白い大理石の廊下にアーチ式の飾り窓の向こうは複雑で芸術的な氷の壁が続いています。
氷は特殊な形状のノズルで地下水を霧吹き状にして造ります。高さ6m、全長62mの氷柱や氷の壁の造形は息を呑む美しさと迫力を感じます。まさに、そこは雪のお城の中にいるようです。
2014年、ディズニー映画「アナと雪の女王」が大ヒットしてから、口コミやネット上で、その世界観と雪の美術館が似ている、と評判になり全国的にその名を知られることに。結果、入場者が倍増するということになったそうです。現在は勢いは下火になっていますが、根強い人気を誇り、筆者が訪れた時もカップルの入場者が結構、いましたよ。
氷の部屋の中はマイナス15℃で1年中鑑賞できます。通路は10℃。それも階段を下りるにつれて気温を下げていくという工夫もされています。
美しい雪の結晶の写真が一面に!
「氷の回廊」を出ると、「雪の結晶美術館」に。こちらは雪の結晶の研究に生涯を支えた北海道大学教授の小林禎作氏(1925‐1987)の学術資料を基にした展示物や映像、画像で、雪の結晶を学ぶことができます。大雪山連邦の旭岳中腹に天女ヶ原という場所があり、そこで降る雪が日本一美しい結晶ができると言われています。
資料室のほか、モニターやシアタールームなど充実しています。その中でもとりわけ目を引くのが、「スノークリスタルミュージアム」です。
顕微鏡撮影した雪の結晶写真が約200枚、円形の壁と天井のステンドグラスに展示されています。
すべて北大の小林禎作教授と古川良純助教授が20年かけて大雪山に通い撮影されたものです。寒い時はマイナス30℃にもなる大雪山や旭川は結晶がそのまま降り積もることもあります。形状は温度によって異なり、展示写真は、右から左へとみると気温が低くなった時の結晶となっています。おとぎ話や童話の世界に入ったような世界観。ブライダルでここで写真を撮影したりもしているようです。
雪の結晶美術館を出ると、地下のメインフロアに。白で統一した広い音楽ホールが目に入ります。
大空の下、残雪の残る丘に雪解け水が流れる光景がコンセプト。実際に中央のステージ周りは人口の小川が流れていました。
ステージ上の白いピアノは国内に2台しかない名門ベーゼンドルファー社(オーストリア)製の名品だとか。
音楽堂の世界観を作る天井の大きな絵画は7人の作家による作品「北の空」。約280畳分の大きさだとか。200席の木製椅子も背もたれや座面に優佳良織を施した、旭川家具です。旭川は木製家具の街として北海道では有名です。
同美術館は結婚プロデュース会社が運営しており、1日1組ですが結婚式を行うこともできます。また、自ら“アナ雪”の主役になれるよう、ドレスを選んで、館内で撮影するサービスも行っていました。
もちろん、グルメやショッピングも楽しめます。
ヨーロッパのアンティークで統一され、高級感を感じながら楽しめるカフェレストラン「スノーナ」が音楽堂に隣接。北海道の食材にこだわったメニューを提供しています。筆者も入ろうと思いましたが、クリスマスパーティーの団体で貸切でした。残念です。
美術館開設に貢献した優佳良織の木内綾子
同伝統工芸美術村、そして雪の美術館の創業者は、旭川出身の織物作家・木内綾子(2008年没)さんでした。「北海道の自然」を表現し作り上げた「優佳良織」はすべて手仕事で、ひとつの作品に200~300色の糸を使い長時間をかけて作り上げます。
雪の美術館は、前述の小林教授が優佳良織を気に入り木内さんの「優佳良織工芸館」を訪ねたことから交流が始まり、小林教授の逝去後も受け継がれ、雪の美術館の構想が練られていったとのことです。
北海道伝統工芸美術村は倒産も美術館は営業
しかし、同美術村は同美術館のほか、「優佳良織工芸館」「国際染織美術館」の3施設で構成されていましたが、美術館以外は何と、破産申請されていました!
こちらは優佳良織工芸館です。雪の美術館向かいにあり、工芸村の創設者である優佳良織の織元・木内綾さん作品などが展示されていた施設です。ぜひ見たいと思い向かった入り口にはこんな張り紙が…。
館長である織元の息子さんの木内和博さんが11月18日に死去。それに伴い。12月1日から長期休養をしていたそうです。しかし、近年の経営難と受け継ぐ方が不在なため、運営本体の「株式会社北海道伝統美術工芸村」は12月12日に正式には破産を申請。筆者が訪れたわずか6日前の出来事でした。>雪の美術館はというと、平成26年(2014年)に木内綾さんと交流のあった方の会社が運営を譲渡されているため、引き続き営業を続けているのでご安心を。とはいえ、非常に残念な出来事でした。逼迫する地方財政の悲哀を垣間見た気がします。
まとめ
雪の美術館自体は今も人気があるのですが、その裏で工芸村が破産という事態が起きていたのは驚きでした。しかし、これも旅のハプニング。北海道にふさわしい、氷と雪の結晶が幻想的な美術館は特に雪に馴染みがない地方の方には特にオススメ。また、ブライダルなら幻想的で印象的な思い出を作れるでしょう。
<スポット情報>
住所:北海道旭川市南が丘3丁目1-1
電話:0166-73-7017
入館料:大人700円、高校・大学生500円、小中学生400円
URL:http://yukibi.marryblossom.com/
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